代替プロテイン

プラントベース×精密発酵を手掛けるAll G Foodsにオーストラリアの大手スーパーチェーンが出資

 

オーストラリア企業All G Foodsは、植物原料を使った代替肉と精密発酵による代替乳製品を開発している。

世界的なプラントベース需要の高まりとともに、遺伝子組換えした微生物を「生産工場」として、動物由来と同じタンパク質を生産する精密発酵が急速に成長しているが、どちらも手掛ける企業は珍しい。

同社は今月、資金調達を実施した。調達額は非公開だが、オーストラリアの大手スーパーチェーンWoolworths(ウールワース)がW23を通じて出資した

プラントベース×精密発酵を手掛けるAll G Foods

出典:All G Foods

All G Foodsは2020年にJan Pacas氏がオーストラリア、シドニーに設立したスタートアップ企業。

同社はLove Budsブランドで知られる大豆を使ったバーガー用パテを、昨年9月、オーストラリアの300箇所を超える小売店で発売した。公式サイトによると、同社の代替肉はプラントベース専用の肉ラインで生産されている。今後数ヵ月以内に、ひき肉、ソーセージ、ナゲット、ベーコンもリリースする予定だ。

All G Foodsは代替肉だけでなく、代替乳製品カテゴリーにも焦点をあてる。といっても、植物成分を使うのではなく、近年注目されている精密発酵技術を使う。

Foovo

目的のタンパク質の遺伝子を酵母などの微生物に挿入し、発酵によって、アルコールではなく目的のタンパク質を作る手法を精密発酵という。ヒトインスリンのブレイクスルーから始まった精密発酵は、牛に依存することなく、牛由来と同じ乳タンパク質の生産を可能にする技術だ。

急激なコスト削減により、現在、食品の領域にも浸透しており、アメリカではパーフェクトデイの製品が市販化されている。

インポッシブルフーズの植物肉バーガーを「血の滴る」代替肉に変えているのも、精密発酵だ。同社は遺伝子組換え酵母を使い、「ヘム」(厳密には大豆レグヘモグロビン)を大豆を使うことなく生産している

All G Foodsは、精密発酵を使用して乳製品に使用する乳タンパク質を開発するオーストラリアで数少ない企業となる。

乳製品開発の詳細は明らかにされていないが、「この技術(精密発酵)を使うことで、Love Budsブランドの植物性タンパク質の範囲を拡大していく」とコメントしていることから、植物肉に組み込むヘムや動物油脂を精密発酵で開発する可能性も考えられる。

年内に中国市場へ

左から創業者Jan Pacas氏、W23マネージャーのIngrid Maes氏 出典:Dallas Kilponen氏/Woolworths

同社は今月、オーストラリア大手スーパーチェーンウールワースのベンチャーキャピタル・グロースファンドであるW23から出資を受けた。これは昨年9月のシードラウンドに続くものとなる。

9月の資金調達には、政府が支援するClean Energy Finance Corporation(CEFC)、シドニーを拠点とするEllerston Capital、シンガポールを拠点とする投資会社TripleStar Capitalなどが参加した。

「All G Foodsに対するW23の投資は、オーストラリアの小売業界で最も著名なリーダーと提携する素晴らしい機会を提供してくれます。私たちの目標は、高まる消費者のニーズを満たす、おいしくて栄養価の高い製品を作ることです。

急速なスケールアップには、流通、資産、生産能力に抜群にアクセスできるVCと提携することが重要です。W23は、オーストラリアの主要な戦略的VCとしての地位を確立しており、パートナーと呼べることを嬉しく思います」

(All G Foods創業者のJan Pacas氏)。

海外メディアの報道によると、All G Foodsは今年の夏を目標に中国に子会社を設立することを計画している。また、3月からシンガポール、タイへ商品を出荷するという。同社は主要なターゲット市場として、アメリカよりも中国を重視する考えを明らかにしている

1年以内に中国に工場を設立、または現地で製造業者と提携し、先行して中国進出を実現したネスレ、ユニリーバ、ビヨンドミートに遅れを取りたくないと考えている。

All G Foodsの競合になると考えられるオーストラリアの代替肉企業v2foodは昨年、中国本土で3つのパートナーシップを締結した。v2foodの植物肉バーガーは日本のバーガーキングでも採用されており、昨年8月に約58億円を調達している。

 

参考記事

Australian alternative protein start-up, All G Foods, secures investment from Woolworths Group’s W23 to build on $16m seed raise

All G Foods adds Woolworths to start-up’s plant-based investment roster

Aussie plant-based meat firm All G Foods plans China foray

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:All G Foods

 

関連記事

  1. Enifer、北欧マイコプロテイン企業で初の新規食品申請
  2. 米Lypid、独自のビーガン脂肪を使用した代替豚バラ肉Lypid…
  3. 農水省がマイコプロテイン、料理ロボット、代替肉、廃棄野菜活用など…
  4. Nowadaysが約9億円を調達、健康的な植物性チキンナゲットの…
  5. 培養牛肉バーガーで早期の米国上市を目指すSCiFi Foodsが…
  6. 培養油脂のPeace of Meatと英ENOUGH、マイコプロ…
  7. 米製粉大手Ardent Mills、小麦由来の代替カカオ原料「C…
  8. イスラエルのChickPがひよこ豆由来のビーガンマヨネーズを開発…

おすすめ記事

3Dプリンターを活用する上海企業CellXが培養豚肉のサンプルを発表

3Dプリンターを活用して培養肉を開発する中国の培養肉企業CellXが培養豚肉のサ…

インドの代替卵企業Evo Foodsが約8900万円を調達

植物ベースの代替卵を開発するインド企業Evo Foodsがプレシードで6200万…

培養魚のB2B製造ソリューションの提供を目指すUmami Bioworks、年内にシンガポールで申請へ【創業者インタビュー】

世界のシーフード消費が増えるなか、絶滅の危機に瀕している魚種を細胞培養により開発…

アレフ・ファームズ、シンガポール・イスラエルでの合意で培養肉の生産を強化

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズ(Aleph Farms)は今月、シンガ…

カンガルーの培養肉を開発するオーストラリア企業Vow、食の変革に挑む

培養肉といえば、牛、豚、鶏、魚を思い浮かべることが多いが、オーストラリアのフード…

中国代替肉企業Hey MaetがプレシリーズAで数百万ドルを資金調達

コロナ後に誕生した中国発の代替肉スタートアップ企業Hey Maetが再び資金調達…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(12/25 16:26時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/26 03:08時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/25 06:43時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/25 22:27時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(12/25 14:27時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(12/26 01:50時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP