植物を使って乳タンパクを開発するニュージーランドのMirukuは、シードラウンドで応募を超える240万ドル(約3億2000万円)の資金を調達した。
ニュージーランドのベンチャーキャピタルMovacが今回のラウンドをリードし、アジア太平洋地区のBetter Bite Ventures、コロラドを拠点とするAhimsa Foundation、NZ Growth apital PartnersがAspire Fundを通じて出資している。
植物を活用してアニマルフリーな乳製品を開発
ニュージーランドは乳製品の世界最大の輸出国で、食品生産では過去から積み上げた強みのある国とされる。Mirukuは、この伝統から方向転換して作物の開発や乳製品の組成に革新的な技術を適用することにより、将来の農家や食品システムの持続性を高めていくことを目指している。
Mirukuは自社ラボや温室、有力な農家・企業・共同研究のパートナーを通じてアニマルフリーのタンパク開発を進めている。彼らが権利化している独特な分子農業プラットフォームは、地域横断的に量産化や実装することを目指して計画されている。
Mirukuが使用するのは分子農業だ。
植物細胞を小さな工場として、これまで動物からしか得ることのできないタンパクや脂肪、糖類を生産しようとしている。チーズやヨーグルトといった非常に愛されている伝統的な乳製品、そして新しい食製品もMirukuの技術で開発できる可能性がある。
「Mirukuの革新的技術を用いるとアニマルフリーの乳タンパクを実用的な価格で生産できる可能性があります。植物は食物連鎖の底辺に位置しており、そのエネルギーである糖類をウシが仲介してタンパクに変換していますが、Miruku(の技術)は植物に直接タンパクを生産させます。
エネルギーや生産効率面からこれは洗練された手法で、土壌や水、大気にとっても効率の良いものと言えます。この植物由来の食システムと向上したタンパク機能性により人類と環境の調和を物質的に叶えることができるのです」(共同創業者のOded Shoseyov教授)
Michal Klar氏はBetter Bite Venturesで、大きな成功を収めているいくつかのタンパク関係のスタートアップに出資しているが、Mirukuについても「彼らの創業チームは科学的な専門性と企業家意欲を併せ持っており、Mirukuが食品システムに素晴らしい影響を与えることを期待しています」とコメントしている。
増える分子農業スタートアップ
分子農業の手法を特徴とするその他のスタートアップとしては、培養肉の成長因子を生産することを目的としたBioBetter、Core Biogenesisのほか、大豆を使ってチーズを開発するNobell Foodsなどがある。
2020年設立のMirukuがこれらのリストに加わった。Mirukuは、乳業メーカー出身のAmos Palfreyman氏、ライフサイエンス分野の投資家Ira Bing氏、乳タンパク技術の専門家Harjinder Singh教授、そして分子農業学で著名なヘブライ大学の研究者であるOded Shoseyov教授が立ち上げた。
興味深いことに、共同創業者の1人であるShoseyov教授はイスラエルで分子農業により成長因子を開発するBioBetterの共同創業者でもある。
日本のプロジェクトとしては経済産業省の主導によるスマートセルインダストリーが分子農業の手法と似通ったものとして挙げられる。
このプロジェクトのなかでも植物細胞に医薬品などを生産させることを検討しているが、Mirukuを始めとした代替乳製品スタートアップは、身近な食のなかのタンパク質をターゲットとしている点で独自性があるように思われる。
参考記事
Miruku, a New Zealand animal-free dairy start-up emerges from stealth on Foodtech VC investment.
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アイキャッチ画像の出典:Miruku