DICは、藻類由来製品の事業拡大のために米Back of the Yards Algae Sciences(BYAS)へ出資したことを発表した。
BYASは、藻類や菌類などから有効成分を高効率で抽出する独自技術を有するバイオベンチャー。同社が独自に開発したスピルリナ由来ヘムは、遺伝子組換え微生物を使用せず植物性代替肉の味や香りを本物に近づけることが出来るものとして関心が寄せられている。
DICグループは、1970年代にスピルリナの商業生産に世界で初めて成功してから、スピルリナ研究のパイオニアとして活動してきた。同社のスピルリナ由来食用色素「リナブルー」は米国、欧州でも安全性と使用が認められた希少な天然系青色色素とされ、健康食品、食品素材、飼料などにグローバルに展開されている。
二社の提携でDICは、スピルリナ事業で培った藻類の大量培養技術や機能成分の抽出技術をBYASと共有し、新製品を開発する。また、欧米地域を統括するDICグループの米Sun Chemical Corporationと連携し、海外での製品販売とともに、新規アプリケーションの開発も行う。
DICとBYASの提携は、国内の植物肉に新たな展開をもたらす可能性がある。
国際的にも代表的な米植物肉企業インポッシブルフーズも、植物肉の味や香りを本物に近づけるヘムを使用している。同社ヘムは動物肉のような外観、風味、食感をもたらすコア成分とされるが、遺伝子組み換え酵母によって生成されているため、中国や欧州など規制の厳しい地域への参入障壁にもなっている。
一方、競合とされるビヨンドミートはヘムを使用しておらず、インポッシブルフーズよりも先行して欧州、中国市場に進出している。
BYASが開発したヘムはスピルリナ由来で生産プロセスに遺伝子組み換え微生物を使用していない。この点で、インポッシブルフーズが直面したような規制障壁を受けにくいヘムとして、国内メーカーによる採用が進む可能性がある。
BYASは代替肉に限らず、植物性の魚、エビ、シーフードに組み込んで使用することで、植物性シーフードの味と風味を本物のシーフードに近づける旨味成分AHA502も開発している。
植物由来の代替肉・代替魚を改良させるヘム成分の開発は活発化している。
BYASのほかにも、米Motif Foodworks、ベルギーのPaleoは精密発酵によるヘムを開発している。Paleoは最近、同技術により6種のヘム開発を発表しており、その中にはマンモスタンパク質も含まれている。
イスラエルのYemojaは赤い微細藻類由来のヘムを開発しており、今後は植物肉をアップデートさせる成分開発の競争も激しくなっていくだろう。
参考記事
関連記事
アイキャッチ画像の出典:BYAS