代替プロテイン

エンドウ豆由来の代替ミルクを展開する米Ripple Foodsが約72億円を調達

 

黄エンドウ豆由来の代替ミルクを開発・販売する米Ripple Foodsが4,920万ドル(約72億円)を調達した。これは2021年9月のシリーズEラウンドでの6,000万ドル(約88億円)に続くものとなり、調達総額は2億7,400万ドル(約402億円)を超えた。

Ripple Foodsは、Amyrisの共同創業者であり元CTO(最高技術責任者)であるNeil Renninger博士Adam Lowry氏により2014年に設立された。同社は植物性ミルク、キッズミルク、プロテインシェイク、非乳製品のハーフ&ハーフなど用途別にさまざまな製品を展開している。

Ripple Foodsの代替ミルクは、市販のアーモンドミルクよりタンパク質を8倍多く含有し、重要な栄養素であるカルシウムを440mg(キッズミルクでは455mg)配合、プロテインシェイクは1本あたり20gのプロテインを含有するほか、無糖タイプも展開するなど、栄養面に配慮したレシピであるのが特徴だ。

Ripple Foodsはエンドウ豆を使う利点として、灌漑が必要なアーモンド、森林破壊や温室効果ガス排出の原因となる牛よりもよりも環境負荷が小さいこと、雨が多い地域でも生育するため、灌漑や肥料がほとんど必要ないことを挙げている

同社は独自手法でえんどう豆からタンパク質を収穫し、不純物を取り除いて、クリーンでニュートラルな味わいを再現している

「爆発的な成長を遂げた」キッズミルク

出典:Ripple Foods

代替タンパク質の普及を推進するGood Food InstituteGFI)によると、アメリカにおける植物性ミルクの売上は、ミルク全体の15%を占める大きなカテゴリーとなるが、2021年から2022年にかけて売上高は横ばいとなった

植物ミルクの原材料別動向では、1位がアーモンド、2位がオーツ麦、3位が大豆、4位がココナッツとエンドウ豆は上位6位には入っていない

GFIはまた、子供がいる家庭では、植物ミルクに支出する可能性が高くなる傾向にあると指摘している

こうしたことから、業界では主流でないエンドウ豆で代替ミルクを開発しているRipple Foodsが、再び大型資金調達に成功した背景には、キッズミルクの成功が関係しているかもしれない。

今年7月のプレスリリースによると、Ripple Foodsは2021年にキッズミルクを発売以来、「爆発的な成長を遂げ、過去1年間、冷蔵植物性ミルクカテゴリーの小売チャネルで最も急成長している製品の1つとなっている」と発表している

保護者からの肯定的なフィードバックをもとに、7月には無糖タイプのキッズミルクを発売した。無糖タイプは48オンス(約1.4L)販売で、240mLあたりタンパク質を8g、カルシウムを445mg含み、砂糖は含んでいない。

出典:Ripple Foods

栄養やミネラルで成長をサポートしつつも、カロリーを抑えた安心できる代替ミルクの選択肢として、Ripple Foodsは子供のいる家庭の幅広い支持を得ている可能性がある。

オーツ麦を原料とした世界的な植物ミルクブランドOatlyの製品は、240mlあたりタンパク質を3g、カルシウムを350mgを含んでいる。

Oatlyはクリーミーさで定評のあるブランドだが、成長サポートと栄養をより強化したRipple Foodsは、「サステナビリティの面だけでなく、子供に飲ませたい栄養のある代替ミルクを作ってほしい」という保護者のインサイトをつかんだのかもしれない。

GFIは、植物性ミルクは植物性食品の中でも最も高いリピート率を誇ると述べている。子供が気に入れば、家庭でリピートする可能性は高まる。大型資金調達を経たRipple Foodsの今後に注目だ。

 

参考記事

Plant-based milk maker Ripple Foods raises $49m on back of ‘explosive growth’ in kids’ products

Female-Led Ripple Foods Raises $49M Amid Soaring Pea Milk Category

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Ripple Foods

 

関連記事

  1. インポッシブルフーズがオーストラリア・ニュージーランド進出へ向け…
  2. 米イート・ジャスト、新しい培養鶏肉製品で再びシンガポール当局の販…
  3. 中国ファーストフード大手DicosがStarfieldと提携、植…
  4. アレフ・ファームズ、イギリスで培養肉の申請書類を提出
  5. インドEvo Foodsが代替卵を年内に販売開始、2021年4月…
  6. ビーガンペットフードのWild Earthが約25億円を調達、来…
  7. 精密発酵でカカオバターを開発する米Seminal Bioscie…
  8. 培養肉アレフ・ファームズ、安価でオープンな増殖培地の開発でWAC…

おすすめ記事

ブラジルのマイコプロテイン企業Typcal、ブラジル州政府から助成金を獲得

ブラジルのマイコプロテイン企業Typcalはブラジル・パラナ州政府のプログラムP…

Steakholder Foodsが台湾進出に向け、台湾の工業技術研究院と提携

独自の3Dプリンターで植物由来や細胞由来の代替肉・代替魚を開発するイスラエル企業…

3Dプリンターを活用した培養肉の自動生産を目指して大阪大学・島津製作所が協業

大阪大学、島津製作所、シグマクシスは「3Dバイオプリント技術の社会実装」に向けた…

アイスランドORF Geneticsが大麦由来の低コスト成長因子を開発、培養肉の生産コスト削減を目指す

アイスランド・ORF Geneticsの技術によって、今後数年のうちに培養肉の商…

オランダ政府が細胞農業に約82億円の出資を発表、国の成長計画として培養肉産業を支援

オランダ政府は、国家成長基金(National Growth Fund)の一環と…

韓国企業Zikooinは廃棄される穀物を使って代替肉Unlimeatを開発

韓国のスタートアップ企業Zikooinは、ユニークな方法で代替牛肉Unlimea…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/21 14:06時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/20 23:44時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/21 03:26時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/20 20:01時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/21 12:17時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(11/20 23:02時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP