代替プロテイン

EFISHient Proteinが目指す持続可能な魚生産:培養ティラピアの切り身開発に成功

 

細胞培養によるティラピアを開発するイスラエル企業EFISHient Proteinが、最初のプロトタイプとなる培養ティラピアの切り身開発に成功したことを発表した。

プレスリリースによると、このプロトタイプは、ティラピアの切り身の食感、構造を模したものになる。EFISHientはこの成果について、持続可能なさまざまな白身魚生産に向けた重要な一歩になると述べている。

EFISHient Proteinが培養ティラピアの切り身開発に成功

培養ティラピアのプロトタイプ 出典:EFISHient Protein

EFISHientは、イスラエル農務省傘下の政府機関Volcani Instituteとイスラエルの投資ファンドBioMeat Foodtech共同で2020年に設立した培養魚企業。

同社は拡張可能で手頃な価格の製造ソリューションを通じて、持続可能な白身魚の提供を目指すB2B企業となる。

EFISHientは、人口増加と、容易に入手できるタンパク質源の必要性により、今日の魚消費は、魚の個体数を減少させ、生態系のバランスを崩す乱獲と、淡水と海洋環境を犠牲にして大量供給を行う水産養殖という2つの問題を抱えていると指摘している

同社は細胞培養技術を応用して、より健康で、美味しく、持続可能な培養魚の生産を目指している。その成果として、今回最初のプロトタイプが発表された。

EFISHientでCEO(最高経営責任者)を務めるDana Levin氏は、「この成果は、手頃な価格が最重要視されるこの業界において、ゲームチェンジャーとなる可能性を秘めています」と述べている。

さらに、「これにより私たちは、健康や持続可能性の問題を無視できない環境的に有害な場所から調達されることの多い従来の白身魚に匹敵する、競争力のある価格で製品を提供できます。B2B企業として、世界規模での幅広い販売を達成するために第三者との協業の見込みがあることを嬉しく思います」と述べ、協業の交渉が順調に進んでいることに言及している。

ウナギからキャビアまで開発が多様化する培養シーフード

出典:Wildtype

2020年12月にシンガポールで培養肉の販売が認められてから、今年7月にはUSDAのGoサインを経て、アメリカ企業2社が培養鶏肉の販売を実現するなど、畜産肉分野では徐々に培養肉の市場投入が進んでいる。

一方、ティラピアを始めとする魚の細胞培養では、販売認可を取得した事例はまだない。

畜産肉と比べて、シーフードは地域毎に食される魚種が多様なため、開発対象も多様なのが特徴だ。

特に注目される企業は、培養サーモンを開発する米WildTypeだろう。昨年2月に1億ドル(当時約114億円)の大型資金調達に成功し、サンフランシスコという都市部にパイロット工場を構える

ウナギ、マグロ、ハタなどの複数の魚種に取り組み、夏にマルハニチロと提携したシンガポールのUmami Bioworksは年内にシンガポールで申請を予定している。

マグロの開発に特化する企業は比較的多く、米BlueNalu、イスラエルのWanda Fishなどがある。

培養エビ、ロブスターを開発するシンガポールのShiok Meats、キャビアを開発する米Marinas Bioから、日本で人気のウナギを開発するイスラエル企業Forsea foodsなどさまざまな企業が確認されている。Forseaには日本で細胞農業の普及促進活動を行ってきた杉崎麻友氏が研究者として従事している

 

参考記事

EFISHient Protein Unveils First Prototype of Tilapia Fish Fillet Suitable for Sustainable Commercial Production

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:EFISHient Protein

 

関連記事

  1. 代替油脂のパイオニアCUBIQ Foodsが約7.8億円を調達、…
  2. Marsapet、Calystaの単細胞タンパク質「FeedKi…
  3. Future Fieldsが約15億円を調達、ショウジョウバエで…
  4. ソーラーフーズ、微生物タンパク質を使用したアイスクリームをシンガ…
  5. 中国企業HaoFoodのピーナッツを原料とする代替肉が上海レスト…
  6. チリのNotCoが米国進出、全米のホールフーズで代替ミルクの販売…
  7. 米Nepra Foods、製パン用の代替卵白粉末の商用生産を開始…
  8. シンガポール企業Mycosortia、おからをアップサイクルした…

おすすめ記事

家庭用調理ロボットのNymbleが予約注文を受付中

家庭用調理ロボットを開発するインド企業Nymbleが、予約注文を受け付けている。…

細胞農業(細胞培養・精密発酵)で代替母乳を開発するスタートアップ企業9社

健康上の理由、仕事による必要性、母乳が出ないなどの理由により授乳できない母親とそ…

英Tropic、「12時間変色しないバナナ」をゲノム編集で開発|今月市場投入、賞味期限延長バナナも年内上市へ

ゲノム編集技術を活用し、5億人以上の生活を支えるバナナ、コーヒー、米といった主要…

ドイツのFormo、欧州投資銀行から約56億円を調達-麹菌由来チーズと精密発酵カゼインの強化へ

微生物発酵による代替チーズを開発するドイツ企業Formoは、欧州投資銀行(Eur…

米Lypid、独自のビーガン脂肪を使用した代替豚バラ肉Lypid Pork Bellyを米・アジアで発売

植物肉向けの代替脂肪を開発する米Lypidは4月、独自の代替脂肪を使用した植物性…

Chipotleがトルティーヤチップス製造ロボット「Chippy」を発表

米国、カナダ、英国、フランス、ドイツで2,950を超えるレストランを経営している…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

リアルセミナー@東京のお知らせ【2025/6/18】

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(05/29 15:12時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(05/30 01:07時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,940円(05/30 05:05時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(05/29 21:13時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(05/30 13:17時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(05/30 00:19時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP