イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズは先月、タイに培養肉工場を建設することを発表した。これはタイに建設される最初の培養肉工場となる。
工場建設にあたり、アレフ・ファームズはバイオ由来製品製造を専門とするBBGI、Fermbox Bioと提携した。二社との提携では、コストの最適化・運営のスケールアップなど生産の強化に焦点を置く。
AgFunderの報道によると、この工場は2024年後半に着工し、完成まで18-24ヵ月かかる見込みとなる。年産1,000トンで、2,000-5,000Lのバイオリアクターが設置される予定だという。
慎重なスケールアップ戦略
アレフ・ファームズはプレスリリースの中で、二社との提携は、アセットライト戦略に基づくことに言及。アセットライトとは、資産の保有を抑え、財務を軽くする経営手法をいう。
大規模なバイオ製造の設計・運営で豊富な経験を持つBBGI、Fermbox Bioとの提携というバリューチェーンパートナーとの協力は、アセットライト戦略において「極めて重要な要素だ」と同社は強調。
共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のDidier Toubia氏は、「慎重で資本効率の高いスケールアップにより、インフラ投資を慎重に進めることができ、これにより主要地域への持続可能な進出が可能になります」と述べている。
「この戦略は、急激で大規模な設備投資を回避し、責任を持ってスケールアップするという当社の取り組みと一致しています」(Didier Toubia氏)
培養肉大手の方針転換、アレフのアセットライト戦略
アレフ・ファームズは近年、多額のインフラ投資を回避して事業拡大するアセットライト戦略をとってきた。
2023年3月にはバイオテック企業VBL Therapeuticsからイスラエル、モディインにある同社の製造施設と関連資産を買収したことを発表。VBL Therapeutics資産の買収には、イスラエルでの生産量を増やす狙いがあった。
アレフ・ファームズはまた、2025年のシンガポールでの生産開始に向けて、シンガポールの培養肉受託製造施設ESCO Asterとも提携している。
こうした動きは、自社で大規模な培養肉工場の建設を進めるBELIEVER Meatsとは対照的だ。
最近では、昨年9月にイリノイ州グレンビューに商用規模の培養肉工場の建設を発表したUpside Foodsが、同工場の計画を一時停止し、カルフォルニア州にある既存工場の拡張に方針転換したことが報じられた。
Big Idear Ventures創業者のAndrew Ive氏は、設備投資の効率性の向上に慎重を期し、培養肉の生産量を増やすために既存施設の拡張を優先させたUpside Foodsの決定は賢明だと述べている。
業界最多の多額の資金調達を実現した培養肉大手のUpside Foodsの方針転換をふまえると、アレフの慎重なスケールアップ戦略は、新興市場への過度の期待を回避し、着実に培養肉を社会実装する狙いがあるといえる。
タイ政府が指定する新Sカーブ産業の1つはFuture Food
アレフ・ファームズは今年1月、イスラエルで培養肉の承認を取得した世界初の企業となった。
シンガポール、イスラエルでの販売が期待されるが、今回のプレスリリースによると、同社は昨年バンコクで開催されたイベントでタイの食品当局と協議を開始している。
タイ政府は新たな育成の対象となる産業を「新Sカーブ産業」とし、5分野を指定している。その1つがFuture Food(未来の食)だ。タイは2027年までにASEANの食品生産ハブとなり、食品輸出で世界10位にランクインすることを目指している。
BBGIのCEOであるKittiphong Limsuwannarot氏は、今回の3社の提携は新Sカーブに焦点を当てており、タイ政府からの支援を期待できると述べている。
参考記事
Aleph Farms Partners with BBGI and Fermbox Bio to Increase Production Capabilities in Southeast Asia
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アイキャッチ画像の出典:Aleph Farms