お好みソースで知られるお多福醸造・オタフクソースがマイコプロテイン事業に参入する。
今月6日、2社はGreen Earth Institute、Agro Ludens、XPJPの3社とマイコプロテインの製造開発・販路開拓で契約を締結したことを発表した。
お多福醸造、オタフクソースがマイコプロテイン事業に参入
世界人口の増加に伴う食料需要から、動物タンパク質に代わる代替タンパク質の開発が盛んだ。
この中でも菌類を培養して作られるマイコプロテインは、製造期間の短さ、低脂肪でありながら高タンパクで食物繊維を多く含み、肉らしい繊維状構造を有するなどの利点から、参入する企業が増えている分野となる。
プレスリリースによると、5社は米から抽出されたタンパク質で麹菌を固体培養してできるマイコプロテインの事業化を目指す。
各社が共同で事業開発するマイコプロテインは、Agro Ludensが開発した米を原料として麹菌による発酵プロセスで生成されるもの。日本の醸造産業で使われている固体培養という発酵技術を使った新しい食材となる。
提携では、お多福醸造がAgro Ludensの技術指導のもと、商用生産に向けた製法開発と試作品製造を行う。マイコプロテインの自社商品への展開や販路開拓等の推進はオタフクソースが担当する。新規開発設備は今年7月にお多福醸造の大和工場に設置される予定だという。
Green Earth InstituteはAgro Ludensからマイコプロテイン製造のライセンスを受け、XPJPと協力して販路開拓など、事業化を目指す。
Green Earth InstituteとAgro Ludensの2社は昨年1月、マイコプロテインの事業化に向けた製造プロセスの改良や商品開発などで提携を発表した。今回5社の契約が実現したことで、より多くのプレーヤーが日本発のマイコプロテイン商品化に向けて取り組むことになる。
筑波大学でも麹菌マイコプロテインを開発
麹菌を活用したマイコプロテイン開発では、筑波大学の萩原大祐准教授が2021年より研究開発に着手している。
同じ麹菌を使うが製法は異なる。萩原准教授は麹菌を培養して増やした菌類バイオマスを食品利用、つまり麹菌由来の菌体を利用する。
一方、Agro Ludensは米タンパク質に麹菌を加え、固体培養した穀物タンパク質と麹菌が一体となった食品を開発している。同社製法では副産物として生じる米糖化液をバイオエタノール製造に活用する狙いもあるようだ(*)。
国内のマイコプロテイン開発
上記以外にも国内でマイコプロテイン開発に取り組む事例は複数確認されている。
ヤヱガキ醗酵技研は昨年5月、オランダのNIZO Food Researchと菌糸体由来の代替肉開発で協業したことを発表した。
今年4月には日本甜菜製糖が、ノルウェーのマイコプロテイン企業Norwegian Myceliumの日本法人であるNoMy Japanと戦略的パートナーシップを発表した。
日本甜菜製糖の石栗秀代表取締役は「砂糖の製造過程で発生する副産物を利用し、糸状菌タンパク質を食品資源として生産するNoMyの技術は、動物性タンパク質の代替となる飼料や食品を生産する大きな可能性を秘めています」と述べている。
参考記事
「マイコプロテイン」の事業化を目指し バイオベンチャーらと開発契約を締結 米を原料に、米麹の力でつくる次世代タンパク質の製法開発にチャレンジ
米由来のマイコプロテインの事業化を目指した開発契約を締結 ~ お米を原料に麹の力で作る次世代タンパク質マイコプロテインの共同事業を開始 ~
(*) 代替タンパク質の技術と市場(シーエムシー)2024年5月9日発行
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アイキャッチ画像は各社ロゴをもとにFoovo作成