代替プロテイン

培養牛肉を開発する米SCiFi Foodsが資金調達難で事業を停止

 

培養牛肉を開発する米SCiFi Foodsが今月、資金調達難から事業を停止したことを発表した。SCiFi Foodsは知的財産と資産を売却する手続きを顧問会社にすでに依頼している。

同社は発表の中で、「この決定を軽々しく下したわけではありませんが、資金繰りが限界に達した今、これが最善の選択でした。残念ながらこのような資金調達環境では、SCiFiバーガーを商品化するための必要な資金を調達できず、SCiFi Foodsは時間切れとなりました」と述べている。

SCiFi Foodsが資金調達難で事業を停止

出典:SCiFi Foods

SCiFi Foodsは、培養肉と植物肉をブレンドするハイブリッド戦略を採用することでコスト高という大きな課題を解決できると考え、過去5年間で培養牛肉バーガーのコストを2万ドルから15ドル以下に削減することに成功。

単細胞懸濁液、100%無血清かつ5ドル/Lの培地で24時間で倍加する牛細胞株を開発し、フェドバッチプロセス(培養中に栄養などを加えて培養期間を伸ばす方法)で10 g/Lの力価を達成、つまり培養液1Lあたり10gの成分濃度を達成した。

今後数年間で60 g/Lを達成し、従来の牛肉と同等価格を実現するための明確な道筋も見えていた。

今年2月には商用工場で試運転を完了。500Lバイオリアクターによる1回の運転で数キログラムの培養牛肉を生成でき、培養牛ひき肉を10%、植物成分を90%使用した培養バーガー製品を月数千個製造できる見込みだと発表していた

しかし昨今、代替肉を巡る状況は好況から不況へと移行し、ハイブリッド製品の実現可能性には疑問が投げかけられた。

さらに、培養肉の販売を禁止するフロリダ州、アラバマ州などの規制強化も合わさり、SCiFi Foodsが小規模な商用化に必要な数千ドル、ましてや完全な商用化に必要な数億ドルを調達することは不可能になったと同社は述べている。

「挑戦したことは正しかった」

出典:SCiFi Foods

AgFunderのデータによると、培養肉企業への出資は2021年に9億8,900万ドルでピークをむかえた後、2022年には8億700万ドルにわずかに低下、2023年には1億7,700万ドルに大幅に減少した。

出典:AgFunder

苦しい資金環境下、New Age Eatsもまた昨年、資金調達難で閉鎖を発表した。Finless Foodsは昨年スタッフを多数解雇し、Omeatも多数のスタッフが解雇され、創業者がCEOを退任している

一方、MeatableUncommonBlueNaluモサミートのように2023年以降、大型の資金調達に成功した企業もある。

「幸いなことに培養肉企業の中には、今後数年間を生き残れるだけの資金をすでに持っている会社もあります」とSCiFi Foodsは言及。

「彼らがその資金でこの時期を乗り越え、ブレンド製品に対する消費者の本当の需要を証明してくれることを願います。私たちの細胞株、知的財産、すでにあるパイロット施設がその旅の一部になれば光栄です」と述べ、自分たちの貢献を培養肉業界の成功にいかしてほしい願いに言及している。

「SCiFiの最終目標は、苦しみのない豊かで、誰もが持続的に好きな肉を食べられるより良い未来を築くことでした。私たちは目標を達成できませんでしたが、挑戦したことは正しかったと確信しています」

 

参考記事

SCiFi Foods, Signing Off

BREAKING: Cultivated meat co SCiFi Foods closes up shop, appoints firm to run sales process

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:SCiFi Foods

 

関連記事

  1. ソーラーフーズがフィンランドのNasdaq First Nort…
  2. The Every Company、世界初の精密発酵タンパク質を…
  3. ネスレが精密発酵ホエイを使用したプロテインパウダー製品を発売|2…
  4. 二酸化炭素からタンパク質を作る英ディープ・ブランチ、アイスランド…
  5. 日本のプラントベース市場は“選択肢”になれるか─展示会から見えた…
  6. ユニリーバのBen & Jerry’s、アニマルフリー…
  7. CulNet Systemからイネ、微細藻類を活用した低コストで…
  8. 英Meatly、イギリスで世界初の培養ペットフードを発売

おすすめ記事

カクテルに3DプリントするPrint a Drink、企業向けの小型3Dプリンターを開発

フード3Dプリンターという言葉を聞いたことある人は少なくないだろう。工業…

ドイツのFormo、麹菌由来のビーガンチーズを発売|約86億円の調達にも成功

ドイツのフードテック企業Formoが麹菌由来のビーガンチーズを発売した。…

米Meati Foodsが菌糸体由来の代替肉を製造する生産工場「メガランチ」を開設

菌糸体からブロックタイプの代替肉を開発する米Meati Foodsは今月、コロラ…

細胞性食品セミナー動画・資料【2025年11月開催】

2025年11月に開催した第19回Foovoセミナーの動画です。使用した…

米ビヨンドミート、初の菌糸体ステーキ「Beyond Steak Filet」をレストラン限定で提供開始

ビヨンドミートが菌糸体ステーキ肉の発売計画を発表してから約10ヵ月。販売動向の行…

機械学習でタンパク質収量を増やす英Eden Bioが約1.6億円を調達、精密発酵の課題解決へ

機械学習を使用してタンパク質収量を増加させるイギリスのバイオテック企業Eden …

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/27 16:17時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/27 02:58時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/27 06:32時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/26 22:20時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/27 14:19時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(11/27 01:37時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP