代替プロテイン

【現地レポ】フィンランド企業EniferのマイコプロテインPEKILOを試食@フィンランド

 

糸状菌という菌類を培地の中で増やしたマイコプロテイン開発に取り組む企業が増えている。

Foovoの調査ではマイコプロテイン・菌糸体由来成分の開発に取り組む企業は50社を超えており、最近ではThe Better Meat CoがアメリカでGRAS認証を取得した。

欧州においては、マイコプロテインを含むバイオマス発酵企業への投資額は今年上半期ですでに前年を超えるなど、注目も高い。

マイコプロテインブランドでは、イギリスで1985年に発売されたQuornが有名だ。

しかし、Quornよりも早い1971年にフィンランドで飼料用途に承認を取得、世界で最初に商用生産されたマイコプロテインがある。PEKILOだ。PEKILOは豚、鶏用の飼料として15年以上生産されていた

フィンランド企業Eniferは、オリジナルのPEKILO技術をさらに開発・商用化するために2020年にVTT(フィンランド技術研究センター)からスピンオフされて設立された。同社は水産飼料ペットフードヒト向け食品への適用を目指して開発を進めている。

このたび、フィンランドのヘルシンキで、ヒト用食品用途のPEKILOを試食することができたので感想をお伝えしたい。Eniferに勤務するフィンランド在住の林小百合氏がPEKILOを試食する機会を設けてくれた。

こちらがPEKILOの粉末。

PEKILO Foovo佐藤撮影 2024年8月下旬 フィンランドにて

PEKILO Foovo佐藤撮影 2024年8月下旬 フィンランドにて

匂いはなく、Eniferが公式サイトで述べているとおり、色も匂いもニュートラルだ。粉末を味わってみると、味もない。意識しながら味わうと、少しだけ香ばしい味がするように思えるが、微々たるもの。味もニュートラルで、食品にまず影響しないだろうことがわかる。

PEKILO Foovo佐藤撮影 2024年8月下旬 フィンランドにて

菌類由来のPEKILOは、グルテン、大豆などにアレルギーのある人でも摂取できる。PEKILOは最大55%のタンパク質を含み、最大35%食物繊維を含むため、これまでのタンパク質の代わりに使用することでタンパク質だけでなく食物繊維など他の栄養素もとれる成分となる。

出典:Enifer

PEKILOをヒト用食品に使用するには、新規食品規制をクリアする必要があるため、欧州で販売されるにはまだ数年かかるだろう。しかし、無味・無臭のマイコプロテイン粉末には可能性を感じた。Eniferではケーキ、クッキー、代替肉などさまざまな食品用途に向けたレシピの研究も行っているという。

出典:Enifer

エスポ―に拠点を置くEniferは今年になり3,600万ユーロ(約57億円)という大型調達に成功している。この資金は、フィンランドのキルッコヌンミに建設予定の食品グレードのマイコプロテイン工場建設にあてられる。この工場は2025年末までに完成予定で、完成すると年間最大3,000トンのPEKILOの生産を見込む。2026年に稼働開始予定で、本格稼働すると毎時500kgのマイコプロテインを生産する予定だ。

Eniferは人向け用途では、年内に新規食品の承認申請を行い、2026年の承認取得を目指している

 

関連記事

アイキャッチ画像はFoovo佐藤撮影 2024年8月下旬 フィンランドにて

 

関連記事

  1. 培養肉開発用の成長因子を低コストで量産するCore Biogen…
  2. Shiruと味の素、AIを活用した未発見の甘味タンパク質の発見・…
  3. ヘンプシードとかぼちゃの種から生まれた植物性チーズ: Seedu…
  4. VowとORF Genetics、アイスランドで欧州初の培養肉試…
  5. 中国の培養肉企業Joes Future Food、パイロット工場…
  6. 酵母由来の代替パーム油で2023年上市を目指す英Clean Fo…
  7. ビヨンドミートが代替鶏肉ビヨンドチキンテンダーを北米で発売
  8. エストニアで進むマイコプロテイン開発|ホールカット代替肉を開発す…

おすすめ記事

ソーラーフーズが約13億円を調達、来年前半に商用工場Factory 01を稼働

二酸化炭素と微生物を活用して代替タンパク質ソレインを開発するソーラーフーズ(So…

米New Cultureが精密発酵カゼインによるモッツァレラ試食会を実施

精密発酵でカゼインを開発する米New Cultureは今月8日、世界初となるアニ…

ポーランドのFresh Insetが開発した鮮度保持シール「Vidre+」: 葉物野菜の鮮度を24日間に延長

24日目のルッコラの比較。右がVidre+使用ほうれん草、ルッコラなど葉物野菜の鮮度を保持できる…

Pairwiseがゲノム編集野菜を上市するためConscious Foods立ち上げを発表

ゲノム編集技術を活用して農産物を開発するアメリカのPairwise(ペアワイズ)…

シンガポールの代替肉企業Next Genがシードで約10億円を調達、3月にシンガポールで発売へ

シンガポールを拠点に代替鶏肉を開発するNext Genはシードラウンドで1000…

再生医療学会・培養肉シンポジウムレポート|再生医療研究者が「培養肉」をテーマに集結

先月開催された第21回日本再生医療学会総会では初の試みとして、「培養肉開発の現状…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼運営者・佐藤あゆみ▼

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(09/15 13:37時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/14 23:06時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,940円(09/15 02:47時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(09/15 19:29時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(09/15 11:51時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(09/14 22:27時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP