ドイツのフードテック企業Formoが麹菌由来のビーガンチーズを発売した。
ドイツ、オーストリアのスーパーマーケットREWE、Billa、METROの2,000を超える店舗でビーガンクリームチーズ「Frischhain」、ビーガンソフトチーズ「Camembritz」を発売した。
「Frischhain」は従来の乳製品クリームチーズと比べ、排出量が65%少なく、土地利用・水使用量はそれぞれ83%、96%削減されているという。
Formoは以前から精密発酵カゼインを開発している企業として知られていたが、今回、麹菌を使用したビーガンチーズを先行上市した。この製品は新規食品規制に該当しない。Green queenの報道によると、精密発酵カゼインの開発も続けており、アメリカで2025年に精密発酵で生成したチーズの発売を目指している。
また来年には、麹菌由来の新たなビーガンチーズ製品「Frankoforte」「Hellasdorf」の発売も計画しているという。Formoは今回の発表と同時に、シリーズBラウンドで6,100万ドル(約86億円)の大型調達に成功した。
Formo、麹菌由来のビーガンチーズを発売
Formoはビーガンチーズの開発に麹菌(Aspergillus oryzae)を使用している。麹はしょうゆ、味噌、甘酒など日本で古くから食品の旨味を引き出すために使用されてきた。
Formoは麹菌のうま味を高める働きではなく、培養によりニュートラルな風味のあるタンパク質を生成できる力に着目。
FormoでProtein Ownerを務めるMara Reifenrath氏は、エンドウ豆などの植物由来食品は違和感を感じさせる風味(オフフレーバー)が強いことが多く、目的の風味を添加する前に、マスキングや前処理が必要だと言及。反対に麹の風味はニュートラルで、風味開発において柔軟性が高いと述べている。
同社は、栄養豊富な培地をいれたタンクの中で麹菌を培養し、麹菌の成長により生成されたバイオマスを噴霧乾燥してタンパク質粉末としている。Formoは麹菌由来のタンパク質の製法について、「マイクロ発酵」と呼んでいる。
来年スケールアップへ
今回発売された「Frischhain」は150gで2.89ユーロ(約450円)となる。商品には、「Koji-Protein」と表記され、全体に占める麴タンパク質は6.7%。原料には水、植物油脂(シア、ヒマワリ)、麹タンパク質、可溶性トウモロコシ繊維、デキストリン、砂糖、増粘剤、食塩、乳化剤、熟成培養物(Reifekulturen)を使用。
「Camembritz」は125gで3.99ユーロ(約620円)となり、同じく「Koji-Protein」と表記。麴タンパク質は5.8%で、「糸状菌培養物」を意味する「Schimmelkulturen」の表示がある。
いずれの製品でも、REWEの商品ページにはAspergillus oryzaeを使用していることが明記されている。
TechCrunchの報道によると、Formoは麹菌由来のビーガンチーズを月100トン製造できるという。今回調達した資金で、来年中には月産1,000トンにスケールアップできると見込んでいるようだ。
菌類由来のチーズ企業と販売状況
Formoは麹タンパク質を使用してアニマルフリーチーズを作る世界で唯一の企業だと述べている。
麹菌は糸状の菌糸を伸ばして成長する糸状菌に分類される。糸状菌を使用して代替チーズを開発する企業をまとめると次のようになり、一部企業が水面下で開発を進めていることがわかる。
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アイキャッチ画像の出典:Formo/REWE