フランスの培養肉企業Vital Meatは、シンプルなペースト状の培養鶏肉を活用し、市場への迅速な投入を目指している。これまでにシンガポール・イギリスで培養肉の承認申請を行い、先月にはシンガポールで同社初の試食会を開催した。
同社はB2Bモデルに特化し、大量生産とコスト削減を見据えたシンプルなアプローチで、多くの人々に新しい選択肢を提供することを目指している。
オランダ、アムステルダムで先月開催されたThe Future Production of Proteinで、同社COO(最高執行責任者)のOlivia de Talancé氏は、「シンガポールでは年内の承認を期待しています」とFoovoに述べた。
「ペースト状の100%培養鶏肉」
シンガポールで開催された試食会では、Vital Meatの培養鶏肉を使った鶏皮、ラビオリ、チキンライスが提供された。
Talancé氏によると、同社の培養鶏肉はペースト状で、100%鶏細胞で構成される。製品自体に味と栄養はあるが、食感はない。
「私たちはB2B企業ですので、消費者に製品の直接販売は行いません。当社の製品は、食品企業が他の植物性原料と組み合わせて食感を出し、ラビオリや点心などの製品を作るためのものです」とTalancé氏は述べる。
今回の試食会ではシェフのJun Hao氏が培養鶏肉を使用して、食感をもたらすレシピを編み出した。Talancé氏によると、チキンライスに添えられた肉は、ホタテと同社の培養鶏肉をミックスしたものだという。
早期の市場投入を目指すVital Meatの戦略
シンガポールで培養肉の販売認可を得た企業はGOOD MeatとVowの2社。
GOOD Meatは植物タンパク質と培養鶏肉をブレンドした製品を開発しており、現在シンガポールで販売中の製品は3%の培養肉を使用している。Vowの場合、シェフがペースト状の培養ウズラ肉を使用したさまざまな料理を提供しており、現時点ではシンガポールの3箇所のレストラン(Tippling Club、Fura、Fiz)で提供している。
Vital Meatがペースト状にした経緯について、Talancé氏はシンプルなプロセスで迅速に市場投入するためだと説明した。
「私たちは、できるだけシンプルなプロセスで大量生産し、できるだけ早くお客様に届けるという無駄のないシンプルなアプローチを目指しています。私たちの目的は、一部の裕福な人だけでなく、多くの人にこの製品を提供することです。
そのためには、シンプルなプロセスであればあるほど、スケールアップしやすく、量産することでコストも下がります。そこで、最初からペースト状の製品で十分だと判断しました。食品業界のパートナーや業界プレイヤーからも高い評価をいただいています」。
最初はペースト状から上市するが、その後は他の製品にも取り組む予定だという。
年内のシンガポール認可取得に期待
シンガポールではGOOD MeatとVow以外にも、複数の企業が承認申請を完了している。
Vital Meatもその1社であり、同社は2023年12月にシンガポールで承認申請を行った。シンガポールでは承認までに約1年かかる。当局との質疑応答も完了しており、年末までに認可がおりることをTalancé氏は期待している。一方、イギリスでは申請まで約2年かかるため、認可が下りるのは2026年半ばになるだろうと述べた。
インタビュー実施時期:2024年10月23日
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アイキャッチ画像の出典:Vital Meat