アップサイクル

シンガポールのPreferが代替チョコレートの試作品を発表、年内に市販化へ

 

カカオ価格の高騰が続く中、カカオフリーチョコレートを開発する企業がシンガポールでも登場した。

スタートアップ企業Preferはこれまで豆なしコーヒーを開発してきたが、今月、代替チョコレートの試作品をリンクトインで発表。共同創業者Jake Berber氏によると、2025年中の市販化を目指している。

Prefer、コーヒーに続き代替チョコレートを開発

Preferの開発した代替コーヒー 出典:Prefer

2022年設立のPreferはおから、ビール粕、廃棄パンを使用した代替コーヒーを開発してきた。

同社の代替コーヒーは、シンガポールのGoogleオフィスCoexist Coffee Co.Pacto by Parchmenなどのカフェ、Citadines Rochor Singaporeなどのホテル、White Shadesなどのレストラン、North London Collegiate Schoolなどのインターナショナルスクールと、シンガポール国内で広く提供されている

Foovoも実際に同社のカフェオレを試した経験があり、その独特の風味が印象に残っている。

シンガポール国内での供給状況(2025年1月上旬時点) 出典:Prefer

Berber氏はカカオ価格が高騰する中、チョコレート好きな人に向けて、より手頃で持続可能なオプションを提供したいと考えている。

チョコレートは、森林伐採を引き起こす食品、ならびに温室効果ガスを排出する食品ランキングで共に5位にランクインし、環境負荷が指摘されている。

昨年、西アフリカでは干ばつや病害の影響でカカオ豆の収穫量が大幅に減少、世界的なカカオショックが発生した。この結果、深刻なカカオ不足により、大手各社が値上げを余儀なくされた

カカオは赤道付近の高温多湿の限られた地域で栽培され、気候変動による影響を受けやすい。この状況を受け、世界では複数のスタートアップがカカオに頼らないチョコレート開発に乗り出している。

カカオショックがもたらす新たな可能性

Preferの代替チョコレート試作品 出典:Prefer

カカオショックが引き起こした価格高騰と供給不安は、単に消費者や業界に危機感を与えるだけでなく、持続可能な代替品の重要性を認識させる契機となりうる。こうした状況は、代替カカオを開発するスタートアップ企業にとっては追い風となり、市場拡大の機会となるとともに、投資家や企業からの資金提供を加速させる可能性がある。

実際に先月には、ドイツのPlanet A Foods3000万ドル(約47億円)を、培養カカオを開発するイスラエルのCelleste Bioは450万ドル(約6億8,000万円)を調達した。

カカオショックによる供給不安は、代替カカオの必要性を認識させるだけでなく、コーヒーなど、十分に認識されているとは言い難い環境負荷の高い嗜好品に対しても、持続可能な代替品の必要性を訴えるきっかけにもなりうる。

チョコレートと並び、コーヒーもまた森林伐採を引き起こす食品リストで6位温室効果ガスを排出する食品・飲料の中で6位とされる。代替コーヒーを開発するオランダのNorthern Wonder共同創業者のOnno Franse氏は、チョコレート、コーヒーがもたらす環境負荷については消費者の認識は十分でないと指摘する

Prefer、Voyage FoodsCalifornia Culturedなどのスタートアップ企業がコーヒー・チョコレートの両分野で代替品の開発を進めていることは、環境負荷の共通点から理にかなっており、持続可能な取り組みを強化したい食品メーカーにも環境と経済の両面でメリットを生む可能性がある。

 

参考記事(リンクトイン)

Jake Berber氏Linkedin

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Prefer

 

関連記事

  1. Yali Bioが精密発酵ココアバターの試作品を発表|参入を目指…
  2. イスラエルのFabumin、アクアファバから代替卵白を開発|今年…
  3. デンマークのMATR Foods、欧州投資銀行から約31億円の融…
  4. イスラエル企業Ansāが開発した電波を利用したコーヒー焙煎機e2…
  5. カナダのBurcon NutraScienceはヒマワリの圧搾粕…
  6. 細胞農業で脱カカオを進めるフィンランドのチョコレートメーカーFa…
  7. 多様な植物から葉タンパク質を抽出するThe Leaf Prote…
  8. 米Optimized Foods、食品廃棄物と菌糸体を活用した持…

おすすめ記事

植物分子農業のKinish、年内に米由来の植物性アイスクリームの発売へ|第6回細胞農業会議レポート

第6回細胞農業会議で講演するKinish創業者兼CEOの橋詰寛也氏植物分子農業スタートアップのK…

DICがスピルリナ由来ヘムを開発する米BYASに出資を発表

DICは、藻類由来製品の事業拡大のために米Back of the Yards A…

米Apeel Sciencesがアボカドの熟度を即座に把握する新たなスキャンサービスを開始

野菜や果物の鮮度を延長する植物スプレーを開発した米Apeel Sciencesは…

DAIZが海外進出を本格化、タイの植物肉企業へミラクルミートの提供を開始

熊本を拠点とする植物肉スタートアップのDAIZが海外進出を本格化する。D…

米ビール大手のモルソン・クアーズが植物性ミルク市場へ進出

アメリカ大手のビール会社であるモルソン・クアーズ(Molson Coors)は、…

アメリカで広がるスムージー自販機Bleni Blends|サラダからピザまで:次世代自販機の成功と撤退

国内でオレンジを搾ってジュースにしてくれる自動販売機が登場する中、アメリカではス…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(10/12 16:05時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(10/12 02:31時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(10/12 06:09時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(10/12 22:05時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(10/12 14:06時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(10/12 01:24時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP