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Magic Valley、オーストラリア政府から約940万円の助成金|培養肉の商用化を加速

 

オーストラリアの培養肉企業Magic Valleyは先月、オーストラリア政府による自国の製造業強化を目的とした「産業成長プログラム(Industry Growth Program)」を通じ、10万豪ドル(約940万円)の助成金を獲得したと発表した

この助成金は、培養肉の生産拡大に向けたバイオリアクターの最適化プロジェクトに対するもの

Foovoへのメールで同社は、調達した資金でオーストラリアでの商用化に向けて、バイオプロセスのスケールアップ、培地配合の最適化、さらなるコスト削減を図ると述べた。

Magic Valleyがオーストラリア政府の助成金を獲得

培養羊肉バーガー 出典:Magic Valley

Magic Valleyは、昨年シンガポール香港で培養肉の認可を取得したVowと共に、オーストラリアで確認されている数少ない培養肉企業の1社となる。

Paul Bevan氏により2020年に設立された同社は、早期からオーストラリアで需要の高い羊肉の開発に取り組んできた。2022年にはウシ胎児血清(FBS)を使用せずに、培養羊肉のプロトタイプ開発に成功。2023年3月にはFBSを使用せずに培養豚肉の開発にも成功した

さらに過去数ヵ月で、同社は培養羊肉のミートボールを改良。たんぱく質含有量の向上や食感の改善など、栄養面を最適化することで、味やサステナビリティに妥協することなく、より美味しく、満足感のある製品を目指しているとFoovoへのメールで述べた。

これまでに培養羊肉を使用したミートボール、バーガー、タコスを試作している。2023年春には試食会を開催し、培養羊肉・培養豚肉について、試食した人から本物と区別できないという感想が寄せられた

Magic Valleyは2023年11月、CoLabsの最先端のパイロット施設への拡張を発表し、生産能力を3,000Lに拡大し、年間最大150トン(日産で410kg)の製品を製造する見込みだと発表した

製造業強化に向けた政府助成金、海藻テック企業も

創業者・CEOのPaul Bevan氏 出典:Magic Valley

今回の産業成長プログラムは、オーストラリア政府が将来の製造業強化を目的として実施するもので、国家再建基金National Reconstruction Fund:NRF)の優先分野において、商用化・成長プロジェクトに取り組むスタートアップや中小企業を対象としている

助成金は、アーリーステージの商用化プロジェクトに対する5万〜25万豪ドル(約470万~2300万円)の支援と、それ以上の規模の商用化・成長プロジェクトに対する10万〜500万豪ドル(約940万~4億7,000万円)の支援が用意されている。

支援対象は、付加価値のある資源、農業、漁業、再生可能エネルギー、医療科学、防衛技術など、政府が優先する分野に限定されており、既存製品・サービスの小規模な改良など、通常の事業成長に該当する取り組みは対象外とされる。

Magic Valleyはアーリーステージの商用化プロジェクトで助成金を獲得した。ほかにも、牛のメタン産生を削減することで知られるブロモホルムを含む紅藻Asparagopsis Taxiformisを栽培するSeaStockが選ばれた。

より大規模な商用化・成長プロジェクトでは、Cauldronが精密発酵のハイパー発酵施設の拡張に向けて選抜企業としては最大の427万豪ドル(4億3,000万円)を獲得している。

 

参考

Magic ValleyからのメールとLinkedIn

産業成長プログラム(Industry Growth Program)対象企業一覧

産業成長プログラム(Industry Growth Program)概要

 

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アイキャッチ画像の出典:Magic Valley

 

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