マルハニチロとシンガポールの培養シーフード企業UMAMI Bioworksは今月9日、培養クロマグロ(細胞性クロマグロ)の開発・商業化に向けた共同開発契約を締結した。
Foovoに送付されたプレスリリース(英語)によると、二社は本格的な事業化に向けた準備として、培養クロマグロの試験販売の開始を目指している。
日本発の培養マグロ開発が始動

出典:UMAMI Bioworks/マルハニチロ
二社は、培養シーフードの事業化に向けて2023年8月に協業を開始。
今回の契約では①安定的な細胞株の樹立、②生産能力の拡大、③承認取得、④市場投入をみすえた試験販売─というマイルストーンの目標を設定した点で、2023年の協業から一歩進んだものとなる。
これにより、協力関係が事業化フェーズへ移行し、開発種も「クロマグロ」と具体化した。
マルハニチロは2010年に民間企業では初めて、クロマグロの完全養殖に成功。
今回の提携では、同社の完全養殖クロマグロから採取した細胞をUMAMI Bioworksに提供し、UMAMI Bioworksの細胞培養プラットフォームを活用して、細胞培養技術の確立を目指す。
マルハニチロは2021年にインテグリカルチャー、2022年には一正蒲鉾と共同研究で提携するなど、早期から培養シーフードに照準を置いてきた。
一方、UMAMI Bioworksは世界で最初に培養肉の販売が認められたシンガポールに本社を構えるB2Bプラットフォームプロバイダー。昨年、Shiok Meatsと合併し、韓国に生産施設の設置も進める。
マグロのほか、ウナギ、キャビア、ロブスター、白身魚など幅広い魚種を開発しており、今年2月にはシンガポールで培養ウナギ・キャビアの試食会を開催。成長因子の生産では日本企業Kanadevia(旧称日立造船)とも提携している。

出典:Umami Bioworks
世界的にマグロ需要が急増する一方で、乱獲やサプライチェーンの混乱、環境負荷といった課題が深刻化している。二社は、細胞培養技術を活用することで、より持続可能かつ手頃・倫理的なマグロの提供を目指す。
日本では、細胞性食品の安全性項目に関する調査部会が始動しており、今年夏頃までに業界向けにガイドライン案の中間案が公表される予定(USDAリンクはこちら)で、万博会場では培養肉の実物展示も行われている。
一方、海外では米BlueNaluやイスラエルのWanda Fishなどが培養マグロの開発を進めている。BlueNaluはイギリスの規制サンドボックスプログラムに培養シーフードで唯一採択された。
培養シーフードで認可を取得した事例は世界でもなく、市販には至っていない。その状況下でマルハニチロとUMAMI Bioworksの協業が一歩前進したことは、出遅れ気味だった日本にとって前向きな動きと言える。
※本記事は、下記プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
~完全養殖クロマグロの細胞を初提供~UMAMI Bioworksと細胞性クロマグロの開発に着手
Maruha Nichiro Corporation Enters Agreement with UMAMI Bioworks to Develop and Commercialize Cell-Cultivated Tuna(Foovoに送付された英語版プレスリリース)
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アイキャッチ画像はUMAMI Bioworksとマルハニチロのロゴ画像をもとにFoovo作成