Foovo Deep

乳業大手フリースランド・カンピーナ、精密発酵投資を中止|二極化する大手の動き

出典:FrieslandCampina

2025年9月29日更新

オランダの多国籍酪農協同組合FrieslandCampina(フリースランド・カンピーナ)は今年7月、精密発酵投資を中止することを発表した。

オランダメディアのNieuweOogst第一報を伝えた。

精密発酵投資を中止したフリースランド・カンピーナ

出典:FrieslandCampina

同社傘下のFrieslandCampina Ingredientsが精密発酵事業に参入したのは2016年で、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)の製造を精密発酵技術で開始した。

2023年にはバイオテック企業Triplebar Bioとの戦略的パートナーシップを締結し、精密発酵による「細胞由来タンパク質」の開発・スケールアップを目指すと発表。二社はその後、精密発酵ラクトフェリン開発でも協業を進めてきた

精密発酵導入の狙いは、土地、水、エネルギーの使用を削減しながら、幼児から高齢者までの健康と栄養をサポートする生理活性タンパク質を持続可能かつ手頃な価格で生産することにあった

しかし今年7月、同社は「市場環境の変化と、よりコスト効率の高い競合他社からの圧力により、精密発酵への投資を中止する」ことを決定した。NieuweOogstの報道によれば、この判断は2023年に発表された「Expedition 2030」に基づく広範な戦略的見直しの一環となる。

報道担当者のJan-Willem ter Avest氏は、「この見直しでは、コスト削減、効率改善、乳製品への注力に重点が置かれています。この方針転換の中で、高品質なタンパク質や牛乳由来のガラクトオリゴ糖といった成分の生産により注目が集まっています。これは牛乳の価値向上を促進するもので、フリースランド・カンピーナの将来にとって極めて重要です」とコメントしている

さらに同社CEO(最高経営責任者)のJan Derck van Karnebeek氏は決算発表会で、「精密発酵を中止するのは、持続可能性の観点から、乳製品のカーボンフットプリント改善の方がより大きな成果が得られると考えるからです。酪農家のみなさんとの協力により、大きな進展を遂げつつあります」と述べ、酪農家との関係性を重視する姿勢を示した。

ただし、精密発酵の中止が、乳製品と植物由来原料を組み合わせたハイブリッド製品の中止を意味するものではないとも補足した。

中止と強化:二極化する大手の動き

出典:Nestle/Perfect Day

ここから先は有料会員限定となります。

読まれたい方はこちらのページから会員登録をお願いします。

すでに登録されている方はこちらのページからログインしてください。

 

※本記事は、海外メディアの第一報をもとに、Foovoが収集した情報に基づいて、独自の整理と分析を加えて執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:FrieslandCampina

 

関連記事

  1. マクドナルドがアメリカでマックプラントの試験販売を終了
  2. 韓国のINTAKEが約13億円を調達、精密発酵と海藻由来の代替タ…
  3. イスラエルのWanda Fish、初となる培養マグロの試作品を発…
  4. Steakholder Foodsが3Dプリンティングによる培養…
  5. 米イート・ジャスト、新しい培養鶏肉製品で再びシンガポール当局の販…
  6. 乳業大手フォンテラとDSMが精密発酵スタートアップ設立を発表
  7. パーフェクトデイが約390億円を調達、今秋にアニマルフリーなクリ…
  8. 米Thrilling Foods、層状の脂肪を含んだビーガンベー…

おすすめ記事

魚の培養脂肪を開発するインパクファット|日本人研究者がシンガポールで挑戦【創業者インタビュー】

畜産による環境負荷を軽減するため、植物由来や菌類由来の代替肉の普及が世界的に加速…

培養羊肉のMagic Valleyがパイロット施設へ拡張、年産150トンへ生産能力を拡大

オーストラリアの培養肉企業Magic Valleyは、CoLabsの最先端のパイ…

VowとORF Genetics、アイスランドで欧州初の培養肉試食会を開催

オーストラリアの培養肉企業Vowと、大麦由来の成長因子を開発するアイスランドのO…

ウキクサから2つのタンパク質|Aspyre Foodsが植物分子農業でカゼイン・ルビスコを開発

出典:Aspyre Foods多くの植物分子農業スタートアップが登場する中、ウキクサからルビスコ…

植物性チーズを開発するスウェーデン企業Stockeld Dreamery、今年前半に初商品の発売へ

植物性チーズのシェアは大きくないが、代替チーズに取り組む企業は増えつつある。…

代替マグロ開発中の米フードテックKuleana、年内に全米へ代替マグロ寿司の提供を目指す

サンフランシスコのフードテック企業Kuleanaは、クロマグロを使わない「リアルな寿司」を開発中だ。…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(12/17 16:24時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/18 03:05時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/18 06:40時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/17 22:25時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(12/17 14:24時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(12/18 01:47時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP