出典:Re:meat
スウェーデンのバイオテック企業Re:meatは先月、Biotech Heightsと提携し、スウェーデン・ルンド大学にパイロット施設「Re:meatery」を設置する計画を発表した。
今年初頭の100万ユーロ(約1億7,000万円)の資金調達に続くもので、Re:meatは年末までに「Re:meatery」を設置し、来年春にはパートナー・顧客企業との検証を計画している。
細胞性食品・精密発酵のスケールアップを支援

出典:Re:meat
2022年に設立されたRe:meatは、細胞性食肉(培養肉)生産のための基盤となる技術を開発している。
公式サイトによれば、まず細胞性牛ひき肉に焦点を当て、食品メーカーが製品に加工する原料の生産技術の提供を目指している。スウェーデン産の放牧牛から提供された筋肉細胞を使用し、従来の牛肉よりも生産コスト、環境負荷を抑えた食肉生産の実現を目指している。
Re:meatは細胞性食品だけでなく、酵母、細菌などの微生物を活用した精密発酵プラットフォームにも対応している。
来月には、Re:meatが開発した食品グレードのモジュール型バイオリアクターがBiotech Heightsに設置される予定だ。このバイオリアクターは、医薬品グレードと食品グレードのバイオリアクターのギャップを埋めるよう設計されたもので、同社は現在、酵母、細菌、真菌を活用し、140-300リットルへスケールアップする段階のスタートアップ企業を募集している。
同社CTO(最高技術責任者)を務めるMarten Schmidt氏は、「私たちは長年の醸造業界での経験に加え、細胞生物学における研究開発の知見を活かして、感受性の高い哺乳類細胞の培養に求められる高い基準を満たす食品グレードのバイオリアクターを開発しました。重要な点として、Re:meateryは培養肉だけでなく、精密発酵のような酵母や細菌ベースのプロセスにも対応しており、その可能性は培養肉に留まりません」とプレスリリースで述べている。
Biotech Heightsは、ルンド大学プレパイロットプラントがあるKemicentrumに拠点を置き、1,400㎡のラボとクリエイティブスペースを有している。「2035年までに、誰もが毎日“新しい発酵食品”を食べる社会」の実現をミッションに掲げる、学術・行政・産業をつなぐイノベーションハブだ。
Re:meatは昨日、EUの出資を受けたAPROVALSプロジェクトの運用フェーズに参画したと発表した。
このプロジェクトは、EU市場参入に向けて規制プロセスを進めている欧州の細胞農業(細胞培養、精密発酵、バイオマス発酵)スタートアップを対象としたもので、採択された企業はEUの規制当局や政策立案者と対話する機会や、政策提言する機会などが得られる。
なお、採択企業は現時点で公表されておらず、Re:meatの位置づけは運用フェーズでの参画とされる。
北欧では細胞性食品の社会実装を推進する取り組みが他にも確認されている。
細胞性食肉用の成長因子「MESOkine」を開発するアイスランドのORF Geneticsは先月、500万ユーロを調達した。
ノルウェー食品・漁業・水産養殖研究所(Nofima)は2023年より細胞農業技術のプロジェクトを展開。Nofimaは現在、欧州の独立系研究機関SINTEFと連携して、昆布、海藻、植物残渣などから食用かつ生分解性のマイクロキャリアの開発や、卵殻や鶏の皮など食品副産物を活用した代替血清の開発を進めている。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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