出典:Fattastic Technologies
油脂構造化技術により植物油脂を用いた健康的な代替脂肪を開発するシンガポールのFattastic Technologiesは、タイ味の素社と探索的な協業を開始したと発表した。
協業の初期段階では、従来の脂肪に代わる持続可能な代替品の模索、機能性を最適化するために食品における代替脂肪「FattFlex」の配合試験を行うとしている。
細胞性食肉用の足場開発に従事していた創業者兼CEOのSatnam Singh氏は、研究を進める中で市場に脂肪の解決策が十分にないことに気づき、2022年にFattastic Technologiesを設立した。
同社は独自の油脂構造化技術により油脂と水を包み込み、所望の特性を備えた脂肪を開発している。さまざまな植物油脂を利用し、半固体・固体など異なる食感の脂肪製品や、酸化防止剤のビタミン、オメガ3,6,9脂肪酸など栄養成分をカプセル化することで、より健康的な代替脂肪を作ることができるとSingh氏は昨年Foovoに述べた。
Singh氏によれば、「FattFlex」は従来の脂肪の代替品として、飽和脂肪酸を減らしつつ同じ味を保持できる可能性が試験で確認されているという。
なぜ、いま代替脂肪なのか|供給集中・森林・健康の課題
「健康性」と「環境負荷の低減」を兼ね揃えた代替脂肪開発に取り組む企業はFattastic Technologiesのほかにも複数登場している。特に2025年は発表が相次いでいる。
背景には、パーム油がインドネシア(62%)とマレーシア(22%)の2か国で世界生産の約8割超占めるという供給集中、森林伐採の主要要因とされる点、そして飽和脂肪酸の含有量が相対的に高い(約50%)という栄養面の課題がある。さらに近年は気候の不安定さから、供給が逼迫して価格が上昇しており、2024年の世界輸出量は前年比5.83%減少するなど、供給リスクが顕在化している。
パーム油のほかにもココナッツオイルは飽和脂肪酸が約90%と極めて高い。パーム油・ココナッツオイルに代わる油脂の一例として、菜種油は約8%と低く、健康面では優れるが、融点が非常に低い(-12~0度)ため、固体脂としての機能性を持たない。
そのため、Fattastic Technologiesをはじめとする企業は、栄養面でより望ましく、かつ機能面でも動物性脂肪やパーム油を代替できる代替脂肪の開発を目指している。
2025年に加速:代替脂肪スタートアップの国内外の動き

出典:Fattastic Technologies
なお、すべての企業が「健康と機能性の両立」を主目的とするわけではなく、環境負荷や供給安定、脱パーム油、脱ココアバターを主眼とする例もあるが、下記に挙げた事例で共通するのは環境負荷の軽減を目指していることだ。
こうした領域では2025年だけでも下記のニュースが相次いだ。
※本記事は、Linkedinの発表をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Fattastic Technologies