出典:NoMy Japan、カゴメ
カゴメがマイコプロテイン活用の共同検証を開始した。
マイコプロテインを開発するNoMy Japanは10日、カゴメと共同で、マイコプロテイン原料を活用した製品開発の可能性について検証を開始したと発表した。
同社は昨年4月、砂糖製造の副産物の活用を目指して日本甜菜製糖との戦略的提携を発表しており、国内食品メーカーとの協業が発表されるのはこれが2例目。
NoMy Japanは、ノルウェーで設立されたNorwegian Mycelium(NoMy)が2024年1月に設立した日本法人。今年5月には日本甜菜製糖などからNorwegian Myceliumを通じて125万ユーロ(当時約2億円)を調達した。
麹菌などの糸状菌を栄養を含む培地で増殖させると、繊維構造のあるバイオマスが生成される。これがマイコプロテインだ。有名な事例ではイギリスのQuornが知られる。
菌類を培養して得られるマイコプロテインは、タンパク質・食物繊維が高く、低脂肪で、肉のような食感を持つことで注目される。

出典:NoMy Japan、カゴメ
NoMyは廃棄物と菌糸体を活用したマイコプロテインを開発している。
カゴメとの協業では、試作品に関する技術的な実現可能性、官能特性、事業化の可能性を検証する。日本企業との連携を優先させ、2026年にはパイロットプロジェクトに注力するという。
カゴメは、トマトジュースや野菜ジュースなどの飲料製品の製造で生じる植物性残渣を再生エネルギーとして本格利用する取り組みを、2023年より富士見工場で行っている。
二社の具体的な協業内容は公表されていないが、カゴメの製造で生じるトマトポマス(トマトの搾りかす)等の植物性残渣を、糸状菌発酵の基質として評価する可能性も考えられる(海外メディアによればNomyは糸状菌を使用している)。
Sumarriva-Bustinzaら(2025)は、トマトポマスやサトウキビバガス、小麦ふすまといった農業副産物を糸状菌発酵でマイコプロテイン化する手法が、資源効率・排出削減の観点から持続可能な食料システム、食料安全保障の課題解決に有望だと論じている。

出典:NoMy Japan
国内では昨今、マイコプロテイン開発が活発化している。
筑波大学発ベンチャーの麹ラボは、麹菌を活用したマイコプロテイン開発を進めている。今年6月にはクラウドファンディング支援者や一般の人に向けた試食会を開催した。
アグロルーデンスは昨年6月、お多福醸造やオタフクソースなどとの提携を発表。米タンパク質と麹菌を活用したマイコプロテイン「Comeat」を使用した消費者向け商品を公式オンラインショップ「Haccome」で複数展開している。今月1日からは、消費者向け商品を扱うスタートアップが期間限定で出店できる「TIB SHOP」で来月末まで一部商品を販売している。
2023年よりオランダのNIZOと提携するヤヱガキ醗酵技研は今年7月、オランダのジャン・ルメニー大臣らが同社を視察した際、マイコプロテインを用いた代替肉の発表、試食の提供を行ったと発表した。
日本ハムも2023年6月、麹そのものを食材とした商品開発を進めることを発表した。
海外でもカーギルと英ENOUGH、zur Mühlen Group(ZMG)と独Nosh.bio、南米の大手食肉企業(社名非公開)と米The Better Meat Coなど、大手企業がマイコプロテイン企業と連携する動きが見られている。
国内のマイコプロテイン開発は活発化しているが、Foovoの調査(2024年6月時点)では世界には50社以上のマイコプロテイン企業が登場しており、国内プレーヤーはまだ少ない。
副産物の高付加価値化・環境負荷の低さ・栄養面の高さでマイコプロテインは注目を集めており、副産物や発酵インフラ、食品加工の知見といった各社の強みを生かせる余地が大きい。
今後は副産物を有する企業や醸造系企業を中心に裾野が広がる可能性が高く、国内でさらなる参画が期待される。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:NoMy Japan