ホワイトチョコレート(イメージ画像)
気候変動や病害の影響でカカオ豆の価格高騰が深刻化し、チョコレート製品の値上がりが相次ぐなか、さまざまな代替品が市場に登場している。
現在市場に出回る代替品は、ひまわりの種やゴボウ、キャロブなどの植物原料を使用したものが中心だ。一方で、より本物に近いチョコレートを目指し、世界で植物細胞培養による開発に挑むスタートアップも現れている。
その1社であるイスラエル企業Celleste Bioは今月、新たな成果を発表した。
ベルギーのブリュッセルで開催されたEIT Foodのイベントで、植物細胞培養によりココアバターを生産したことを発表した。
Foovoの認識では、植物細胞培養によるチョコレートグレードのココアバター生産の発表はこれが初めて。この発表は、今年2月に米Yali Bioが発表した精密発酵によるココアバター試作品を発表した流れに続き、別アプローチである植物細胞培養での成果発表となり、植物由来の代替品開発が先行するチョコレート業界において、より本物に近い代替チョコレート研究の前進を示すものとなった。

出典:Celleste Bio
Celleste Bioは2022年創業。気候変動や病害の影響を受けず、森林伐採を伴わない持続可能なチョコレートの提供を目指して設立された。
ココアバターはカカオニブ(カカオ豆から種皮などを取り除いた部分)の半分以上を占め、チョコレートの口どけや固まる性質に重要な役割をもつ。わかりやすい例では、ココアバターに砂糖や乳製品などを加えたホワイトチョコレートが挙げられる。
Celleste Bioによると、従来の方法では年間2トンのココアバターを生産するために、4トンのカカオポッド、1万㎡の土地、約1700本のカカオの木が必要になる。一方、同社の技術では、わずか1~2個の豆と1.5㎡のスペース、そしてバイオリアクター1基で同じ量のココアバターを生産できるという。
プレスリリースによれば、今回発表したココアバターは、豆由来の従来のココアバターと生物学的に同一のもの。脂肪酸プロファイルのほか、融点、質感、割れ感といった感覚特性も同等であり、プロセス全体で廃棄物ゼロを実現しているという。
同社は昨年12月、オレオなどの著名ブランドを展開する大手食品メーカー、モンデリーズ・インターナショナルから2回目の出資を受けた。
Green queenの報道によれば、現在、1,000リットルのパイロット工場を建設中で、2027年の市場投入を見込んでいる。Celleste Bioはアメリカ、EU、イギリス、イスラエルで規制プロセスを進めていると同メディアに語っている。

ホワイトチョコレート(イメージ画像)
カカオの生産と供給が、気候変動や病害などにより不安定化するなか、工場内で細胞培養によって製造されるカカオやココアバターは、混乱するサプライチェーンにおける“保険”になると、Marsの元最高農業責任者であるHoward Yano Shapiro氏は評価している。
イスラエルのKokomodoも現在の細胞性カカオに続き、ココアバターの開発も視野にいれている。明治ホールディングスから2回出資を受けている米California Culturedは今年8月、細胞性カカオおよびココアバターに関する特許を出願し、ココアバター開発も進めていることが明らかになった。
Foovoの認識では、現時点で細胞性カカオやココアバターはいずれも市場で認可事例はまだない。
ココアバターはホワイトチョコレートのみならず、ダークやミルクチョコレートにも欠かせない成分だ。市販の代替チョコは完成度が高いものの、実際に試してみると若干のコク不足を感じる部分もある。そのため、細胞培養によるココアバターは、植物性カカオを含めた幅広い代替チョコレート製品に配合できる可能性を秘めている。
現状、ココアバターの代替では精密発酵を採用する企業が多い一方、植物細胞培養のアプローチはまだ少数派だ。2050年までにアフリカのカカオ栽培地の約半分が消滅する可能性が指摘されるなか、精密発酵と植物細胞培養のどちらが先に市場投入を実現するのか、今後の動向が注目される。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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