「UMAMI EGG FLAVOR」 Foovo(佐藤)撮影(2025年4月)
植物性代替卵を開発する日本発のスタートアップUMAMI UNITED JAPANは今月27日、プレシリーズAラウンドで3億1,000万円を調達したと発表した。
調達資金は、大規模生産技術の確立や独自技術の研究開発強化にあて、欧米での事業拡大に向けて人員採用を進める。また、量産化に向けた製造拠点の立ち上げも計画している。
CEO(最高経営責任者)の山﨑寛斗氏はプレスリリースで、「植物性卵の機能開発・事業開発・海外パートナーシップをさらに強化し、北米地域をはじめ、世界各国から寄せられる期待と需要に応えていきます」と述べている。
卵の“機能”に焦点を当てた代替技術

CEOの山﨑寛斗氏 出典:UMAMI UNITED JAPAN
UMAMI UNITED JAPANは2022年設立。アレルギーや価値観、文化を超えて、誰もが同じ食卓を囲める社会の実現を目指し、山﨑氏とCTO(最高技術責任者)の大場國弘氏が創業した。主原料にこんにゃくやきくらげを用い、日本の原材料と独自技術で卵の機能を再現した。
鳥インフルエンザによる供給変動や価格高騰、卵アレルギー、インバウンド消費増加に伴うビーガン対応など、消費者および生産者にとって「卵」には複数の課題や細分化されたニーズがある。
今年は2024年の鳥インフルの影響による卵の供給不足から、鶏卵の基準価格が300円を超えるなど「エッグショック」と呼ばれる事態が発生し、北海道では今月、今季初の鳥インフルエンザが確認され、約45万羽の殺処分が行われている。
UMAMI UNITED JAPANが目指すのは、卵を主体としたオムレツやスクランブルエッグなど“見える商品”ではなく、熱凝固性・結着性・保水性・乳化性など見えない“機能”として使われる卵の代替だ。
製菓・製パンなどの加工食品に欠かせない卵の要素を再現し、全卵代替粉末「UMAMI EGG」やコクを高める調味粉末「UMAMI EGG FLAVOR」、プリン用粉末「らくぷりん」を展開。すべて100%植物性で、業務用・家庭用いずれにも対応している(UMAMI EGG FLAVORは業務用のみ)。
導入実績はアメリカの大学をはじめ、国内では大手カフェチェーン、コンビニ、ジェラート専門店などに広がっている。今年2月には、110年以上の歴史を持つ和菓子店「新正堂」で同社代替卵を使用した卵アレルギー対応どら焼きが期間限定で販売された。
UMAMI UNITED JAPANに追加出資したジェネシア・ベンチャーズの曽我部崇氏はプレスリリースで、同社が卵の機能を用途ごとに編成できる「機能モジュール」という設計思想をもとに、レシピの自由度と開発速度を同時に高めている点を評価している。
さらに、卵を単一素材ではなく目的別の設計単位として分解し、風味の立ち上がりや口溶けといった時間軸まで制御できることで、ベーカリーや製麺など日常的に大量の卵を扱う現場において、供給や価格の変動に左右されない選択肢となることへの期待感を示している。
海外でも見られる卵代替の動き

出典:UMAMI UNITED JAPAN
UMAMI UNITED JAPANのように卵の見えない部分を代替する動きは海外でもみられる。
イスラエルのMeala Foodtechはエンドウ豆を原料としたクリーンラベルの代替卵粉末「Groundbaker」を展開。今月、パートナー企業のLASENORが同素材を正式採用し、自社ブランド「LASENOR VP-100」として市場投入することを発表した。
オランダのRevyveは、ベーカリー、ソース、代替肉、植物乳製品などにおいて卵の代替として利用できる酵母由来タンパク質を開発しており、自社原料について「卵の代替または削減を可能にし、手頃な価格でクリーンラベルを実現するソリューションだ」と述べている。
同社は欧米、オセアニアに供給しており、昨年にはオランダで初の生産施設を稼働している。先月、約2400万ユーロ(当時約41億円)のシリーズB資金を調達した。
同じくオランダのFabuminは、排水として処理されるアクアファバを活用したB2B用の代替卵白粉末を開発している。
ウキクサからルビスコを抽出する米Plantibleは、ルビスコをベースにベーキング用卵の代替を想定した「Rubi Whisk」を開発。現在、GRAS通知に対するFDAの回答を待つ状態にある。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像はFoovo(佐藤)撮影(2025年4月)




















































