Foovo(佐藤あゆみ)撮影
今月23日~25日に東京で開催された「SKS JAPAN 2025」では、食の未来を体感できる多彩な展示が並んだ。
発酵、香り、植物性タンパク質など、日本と海外の先端技術が集結し、未利用バイオマスを活用した新素材から、匂いを数値化して再構成する装置、葉から抽出したルビスコタンパク質まで、食の多様な可能性を映し出していた。
未利用バイオマス×発酵の素材開発

ゆずの皮やコーヒーかすを活用したアルコールフレーバー。ゆず、コーヒーの香りを感じられた。 Foovo(佐藤あゆみ)撮影
ファーメンステーション(Fermenstation)は、さまざまな未利用バイオマスを発酵原料に活用し、独自の複合微生物発酵プロセスで新素材を開発している。
同社は、コーヒーかす、米ぬか、繊維質など約50種類の未利用バイオマスに酵素を作用させ、発酵に適した状態にバイオマスを分解。そのうえで、食経験をもつ複数の微生物を単独または複数組み合わせて培養し、新たな素材を生み出している。
この掛け合わせから生まれる新素材の可能性は無限大だ。企業で生じるバイオマスを利用して、新たな食品素材やバイオ原料へと変換できるうえ、成分分析や初期製造まで一貫して行える点が強みとなっている。
特定成分を開発する精密発酵や、菌体そのものを食用とするバイオマス発酵とは異なり、同社のアプローチは未利用バイオマスに「眠る」成分を発酵によって引き出し、香料などで再現の難しい味わいの奥行きや立体感を演出できる点に特徴がある。

Foovo(佐藤あゆみ)撮影
SKS JAPAN 2025の会場では、ゆずの皮やコーヒーかすを活用したアルコールフレーバー、米ぬかを複数の微生物で発酵させた風味パウダーを添加したクッキーの試飲・試食が行われた。米ぬか発酵パウダー入りのクッキーは、コントロールで感じた独特の匂いが抑えられ、よりまろやかな味わいに仕上がっていた。
伝統発酵による新しい甘味料

Foovo(佐藤あゆみ)撮影
日本の伝統発酵技術を用いて社会課題の解決を目指すオリゼ(Oryzae)は、米麹由来の代替甘味料「オリゼ甘味料」を開発。
オリゼ甘味料を使用した砂糖不使用の商品として、米麹、オートミール、米、こめ油だけを使った「米麹グラノーラ」を展開しており、今年3月からスーパーマーケット成城石井の一部店舗で取り扱いが始まった。
同社は「フードコスメ」ブランドとして、醤油に米麹を加えて発酵させてうま味を引き出した「オリゼ -SOY-」、甘麹にココアパウダーを加えた砂糖不使用の「オリゼ -CHOCO-」、カロリーが砂糖より低い甘麹ソースの「オリゼ -SWEET-」などもオンラインで販売している。

Foovo(佐藤あゆみ)撮影
昨年9月には豆乳と米麹を原料とした植物性マヨネーズ「麹マヨ」を発売。さらに先月には、アメリカ・ロサンゼルスで米麹を使用した「フルーツ甘酒」のポップアップイベントを初開催するなど、砂糖不使用の新しい甘味料を海外市場にも提案している。
香りの数値化が描く未来

Foovo(佐藤あゆみ)撮影
香味醗酵とNTTデータのブースでは、大阪・関西万博でも展示された「匂い再構成ディフーザー」が紹介された。大阪大学発ベンチャーの香味醗酵は、音声を伝送するように、匂いをデータとして届ける未来を構想している。
同社は、匂いをデータベース化することで、あらゆる匂いを再構成する仕組みを開発している。カラープリンターが色の3原色により、あらゆる色を作り出せるイメージに近い。
香味醗酵代表の久保賢治氏は、将来的に香りのデータベースを5000~8000種類へ拡張したいと語る。実用化の例としては、桜の映像とともに桜の香りが出てくるテレビや、ECサイトの商品ページから商品の香りを感じられる仕組みなどが想定されている。
テレビが「音のない白黒テレビ」から「音のあるカラーテレビ」へと進化したように、未来の世代では、「映像とともに香りを感じられるテレビ」が当たり前になるかもしれない。展示では、メープルシロップや花の映像とともに、それに対応した香りがディフーザーから出てくるのを体験できた。
北米で拡大する植物性サーモン

Foovo(佐藤あゆみ)撮影
カナダ企業New School Foodsは、ジャガイモタンパク質、海藻エキス、DHA・EPA藻類油などを使用した植物性サーモンの展示・試食を実施した。
見た目は本物そっくりで、食感も本物に近い繊維感を再現していた。

Foovo(佐藤あゆみ)撮影
同社は今年5月、カナダ国内で流通契約を締結し、レストラン向け提供を拡大。5月時点の13箇所から、現在はカナダのほか、シカゴやニューヨークなどアメリカを含む計46箇所に展開を拡大している。

2025年10月29日時点で46箇所で提供中。出典:New School Foods
6月には新たにNS/TX Industriesを設立し、New School Foods独自の指向性凍結技術を用いてステーキや植物性骨付きリブなど、ホールカットの代替赤身肉を開発することを発表した。会場では植物性サーモンのほか、白身魚や厚みのある骨付き肉の代替品も展示された。

Foovo(佐藤あゆみ)撮影
葉由来ルビスコの可能性

右側がルビスコ配合のクッキー Foovo(佐藤あゆみ)撮影
ニュージーランドのLeaft Foodsは、葉由来のルビスコを開発している。ルビスコはすべての緑色の葉にみられる光合成関連タンパク質で、地球上で最も豊富なタンパク質とされる。
同社のタンパク質はニュートラルな味・色を呈しており、会場で試食したルビスコを配合したクッキー(写真右側)からもその特性がうかがえ、可能性を感じた。
同社は今年8月にルビスコを配合した消費者向け飲料を発売し、先月には乳製品・食品原料サプライヤーのラクト・ジャパンと戦略的パートナーシップを締結し、日本での商用化を進めている。
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アイキャッチ画像はFoovo(佐藤あゆみ)撮影





















































