ミツバチを使わずに代替ハチミツを開発するMeliBioが、世界初となる代替ハチミツ商品を発表した。外食産業からの注文受付をすでにスタートしており、年末から2022年初頭にかけて商品を発送する。
カリフォルニアを拠点とするMeliBioは精密発酵により、ミツバチを使うことなく分子的に本物と同等なハチミツを開発している。
先日、100名以上の投資家・フードテック企業が参加する試食会がカリフォルニア州バークレーで実施された。試食会ではMeliBioの代替ハチミツを使って作られたバクラヴァ(パイ生地を複数重ねて濃いシロップで味付けするトルコ料理)が提供された。
試食会の参加者の1人は「ミツバチから作られたハチミツと全く同じ味わい、滴り、広がり」だと表現した。
「地球上からミツバチが消えたら、人間は4年しか生存できない」とアインシュタインが述べたように、受粉を担うミツバチは作物の栽培、成長に不可欠な存在とされる。しかし、生息地の破壊、農薬の使用、気候変動によってミツバチは減少の一途をたどっている。
最近の研究によると、世界には2万種の野生・在来のミツバチがいるが、2006年から2015年にかけて数が特に急速に減少し、4分の3しか存在を確認されていない。
世界の作物の3/4がミツバチの受粉に依存しており、ミツバチの減少、不在は、世界の食料生産に深刻な影響をもたらす。
畜産業による環境負荷を軽減するために国内外で数多くのフードテック企業が登場しているが、ハチミツに焦点をあてる企業は少ない。Darko Mandich氏とAaron M. Schaller氏は、地球上の動植物に不可欠なミツバチを代替ハチミツで救出することを目指し、2020年にMeliBioを設立した。
市場にはビーガンハチミツが販売されているが、ハチミツ本来の特性、風味を完全に再現するのは難しい。合成生物学を駆使したMeliBioの代替ハチミツは分子的に同等なハチミツとなり、本物のハチミツに含まれる主要成分をすべて含む。
今回の試食会でMeliBioのハチミツを試食した参加者は「(植物ベースのビーガンハチミツである)Vegan Un-Honeyはかなりよいけど、もう戻れない」とコメントしている。
同社は外食産業向けにB2Bでの注文受付をスタートしており、早ければ今年年末までに発送を開始する。
先月にはプレシードでCult Food Scienceから追加の27万5000ドル(約3000万円)の出資を受けた。プレシードの調達総額は150万ドル(約1億6600万円)となる。
MeliBioのように、精密発酵技術を活用して分子的に同等な代替食品を開発する流れが加速している。
精密発酵で代替タンパク質を開発する事例は、パーフェクトデイ、Formo、Change Foodsなど、乳製品が主流だったが、開発の対象は多様化してきている。
最近の事例では、ドイツのQOAは精密発酵によりカカオを使わないチョコレートを開発。着色料を開発するデンマークのChromologics、コラーゲンを開発するアメリカのGeltor、代替母乳を開発するHelainaなど、乳製品以外にもアプリケーションが広がっていることは注目に値する。
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アイキャッチ画像の出典:MeliBio