精密発酵によりアニマルフリーな乳製品を開発するイスラエル企業RemilkがシリーズBラウンドを1億2000万ドル(約139億円)の調達額で完了した。
ニューヨークとテルアビブを拠点とするベンチャーキャピタルHanaco Venturesが主導し、Rage Capital、CPT Capital、Precision Capitalの新しい出資者に加え、イスラエルの食品大手Tnuva、ドイツの乳製品企業Hochland、アーリーステージへ出資するfresh.fund、イスラエルのベンチャーキャピタルOurCrowdが新たに参加した。
同社は2020年にもシリーズAで約11億円を調達していたが、今回はその10倍以上となる。
これによりRemilkの評価額は3億2500万ドルとなった。
牛を使うことなく本物の乳タンパク質を開発するRemilk
2019年に設立されたRemilkは、精密発酵により牛を1頭も使うことなく「本物の」乳タンパク質を開発している。
共同創業者のAviv Wolff氏とOri Cohavi氏は、牛乳の化学組成を精密に区分し、液体中の脂肪、乳糖、糖質を評価して、牛乳を作るための重要な成分はタンパク質であると判断した。
同社はこれらの乳タンパク質をコードする遺伝子を酵母に挿入し、効率的かつスケーラブルな方法でタンパク質を発現するよう微生物を遺伝子操作した。これにより、微生物を乳タンパク質の生産工場とすることに成功した。
発酵槽の中で酵母は牛が生産するものと同等な乳タンパク質を生成する。生成された乳タンパク質を乾燥させ、粉末としたものが最終産物となる。これに水や脂肪などを加えチーズ、ヨーグルト、アイスクリームなどを作ることができる。
この乳タンパク質を使用して作られるミルク製品は、乳糖、コレステロール、成長ホルモン、抗生物質は含まれていない。
Remilkは牛乳を生産するメカニズム全体を単細胞性の酵母に移行させた。これにより、牛の残りの部分は不要となり、牛を成長させるために大量の資源を投入する必要がなくなる。
このように、微生物を作り手として目的のタンパク質を生成する手法を精密発酵という。1980年代の合成インスリンのブレイクスルーから始まった精密発酵は近年、乳酸品を中心に食品へも開発対象を拡大しており、開発熱・投資熱が高い。
Remilkの代替乳製品は畜産と比較して、必要となる土地はわずか1%、原料は4%、水は10%ですむ。牛から牛乳を生産するのに2,3年かかるのに比べて、生産期間は短い。
1回の投資額は増大傾向
Remilkはアメリカとヨーロッパに生産施設を設置しており、世界中の乳業メーカーや大手食品メーカーと協業しているという。2023年中に商品の商用化を目指している。
イスラエルにはRemilkのほかにも精密発酵によりアニマルフリーな乳製品を開発する企業がいる。
ホエイとカゼインの開発に取り組むImagindairyは昨年11月に約14億円のシード資金を調達した。同社もすでに大手乳業メーカー数社と協業している。
精密発酵の開発アプリケーションは乳製品が特に多い。単回の投資額は増加傾向にあり、代表格のパーフェクトデイは昨年に約390億円を調達、代替卵白の開発を手掛けるThe EVERY Company(旧称クララフーズ)も先月に約198億円を調達した。
アメリカのスターバックスが一部店舗でパーフェクトデイの精密発酵ミルクを導入するなど、大手による導入も進み、海外では身近な代替乳製品となりつつある。
参考記事
Israeli food tech startup Remilk raises $120m investment for cow-free milk
Animal-free dairy startup Remilk raises $120 million Series B at $325 million valuation
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