菌糸体由来のブロック肉を開発するアメリカ企業Meati Foodsは14日、自社ECサイトを通じて予約注文の受付を開始した。
メールマガジン読者に限定したアナウンスにも関わらず、菌糸体由来の代替肉製品は24時間で完売となった。
24時間で完売した菌糸体由来カツレツ
Meati Foods公式サイトで販売されたのは「サクサクカツレツ」と「チキンカツレツ」の2製品。いずれもキノコの根に相当する菌糸体に栄養を与え、成長させた栄養価の高いタンパク質を使っている。
販売開始から1時間で1100個の予約注文があり、24時間以内に完売した。3つ目の製品「ステーキフィレ肉」は近日販売される。
Meati Foodsは菌株を独自プロセスで成長させて、自然な繊維質の食感を持つブロック肉を開発する企業として2019年に設立された。
同社が開発する代替肉は、植物肉、培養肉に次ぐ、代替肉の第3の柱として注目される「微生物発酵」に分類される。微生物発酵には精密発酵とバイオマス発酵があるが、Meati Foodsは後者に属する。
菌糸体由来の代替肉は、菌糸体がもつ天然の繊維構造、成長の早さ、土地利用率の点で、大豆などの植物原料を使う植物肉よりも将来性が見込める。
2022年初頭に市場に投入するとの計画通り、アメリカ在住者は今月より、オンラインストアを通じてMeati Foodsの代替肉を注文できるようになった。同社は今後1年間で小売店で販売する。
現在、公式サイトで販売される製品は、コロラド州ボルダーにある小規模生産施設で製造されたもの。量産を実現するまでは、公式サイトを通じて毎月、小ロットを販売するという。
今年後半には同社が「Urban Ranch(都市型大農場)」と呼ぶ80,000平方フィート(約7432㎡)の生産施設が稼働する予定。この施設はサッカーコートほどの広さに相当し、稼働すると、1日に4500頭の牛に相当する量の代替肉を生産できるようになる。
現在の生産施設は、地元の外食サービスや小売での販売量を生産するが、「都市型大農場」が稼働すると、大量生産が可能となり、同社が目指す全国展開が実現する。
深部発酵による幅広いバリエーション
Meati Foodsのようにバイオマス発酵で代替肉を開発する企業には、Nature’s Fynd、MyForest Foods(旧称Atlast Food)がいる。
これら2社が固体発酵(固体の表面や内部で微生物を増殖させる方法)により菌類を成長させ代替肉を製造するのに対し、Meati Foodsは深部発酵(submerged fermentation:液体中で菌糸体を培養する方法)を採用することで、「信じられないほど」速い成長を実現している。
共同創業者のTyler Huggins氏によると、収穫時に、繊維を異なる方向に再調整することで、鶏の胸肉から牛肉ステーキ、魚まであらゆるものを作ることができる。固体発酵では、このバリエーションの実現は難しいという。
Meati Foodsと同じく深部発酵を採用する企業もあるが、「本来の質感を持った品質を維持できる企業はいない」と同氏はFoodnavigator-USAのインタビューにコメントしている。
2025年までに売上10億ドルを達成
昨年12月、元ゼネラルミルズ社長のScott Tassani氏がMeati Foodsの新社長に任命された。Tassani氏は就任時のプレスリリースで、「2025年までに10億ドルの売上を達成する」と公言した。
新社長の野心的ともいえる目標について、Huggins氏は次のようにコメントし、自信を見せる。
「(今回の予約注文について)マーケティング施策は行わず、メールマガジン読者にだけアナウンスしたところ、1時間で1100個のカツレツが売れ、24時間経たずに完売しました。
小売店や外食企業に持ちかけたところ、話をした誰もが(Meati Foodsの製品を)欲しいと言いました。ですから、2025年に10億ドルのランレート(将来の予測値)は控え目といえるかもしれません」
(共同創業者のTyler Huggins氏)
使用成分は「菌糸体」と明記、透明性を重視
Meati Foodsは昨年7月にシリーズBラウンドで約55億円を調達、出資者には元ホールフーズCEOのWalter Robb氏、サラダ専門のレストランチェーンであるSweetgreenの共同創業者Nicolas Jammet氏、Jonathan Neman氏などが含まれていた。
公式サイトにあるMeati Foodsの成分リストには、「菌糸体」という表記がある。
バイオマス発酵で代替肉を開発する他社の例を見ると、Quornは成分に「マイコプロテイン」と表示、Nature’s Fyndは自社成分の「Fy Protein」と表示している。
「菌糸体(mycelium)」は一般の人には聞きなれない言葉だが、Meati Foodsは「菌糸体」を周知の言葉にしたいと考えている。消費者に対して開放性と透明性を重視する考えから、成分名に商標を使うことは考えていない。
参考記事
Meati Appoints Scott Tassani as President
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アイキャッチ画像の出典:Meati Foods