イスラエルの培養肉企業MeaTechは、子会社のPeace of Meatが新たに培養肉用の実証プラントをベルギーに建設することを発表した。
工場は2000平方メートル(21,530平方フィート)の広さで、年内に建設を開始し、2023年に稼働を開始する。
培養肉企業の相次ぐ生産施設建設
新施設の建設は、培養肉技術と研究開発能力の強化になるほか、MeaTechが市場参入に向けてさらに前進したことを意味する。
2021年にMeaTechに買収されたPeace of Meatは昨年、1回の生産で700グラムの鶏脂の生産に成功した。同社は1回の生産でこれだけの量のクリーンな鶏脂を生産できることは、工業規模の培養油脂製造に通じるブレイクスルーだとみている。
今回の発表は、世界で初めて培養肉工場を開設したフューチャーミートをはじめ、Upside Foods、WildTypeなど培養肉用生産施設発表に続くものとなる。
MeaTech CEOのArik Kaufman氏は「Peace of Meatの新しい実証施設によって、当社の植物肉・培養製品市場への参入が加速する。培養油脂はこれまでの畜産肉ならではの風味、香り、食感を代替肉製品にもたらすことを可能とする」とコメントしている。
アメリカ市場参入に向けた布石
MeaTechは今月、アメリカ、カリフォルニア州にオフィスを開設することも発表した。新オフィスでは、調査・開発、事業展開や投資家との交渉を行う。
これはイスラエル発のMeaTechが昨年3月のナスダック上場に続き、アメリカを含めた海外展開を視野にいれていることの表れといえる。
同社は昨年、イスラエルのチームを1.5倍に拡大し、イスラエルのフードテックの中心地であるレホボトに位置するより広い拠点へと本社を移転したばかり。アメリカに設立される施設では、培養肉や3Dプリンティング技術の強化を図るほか、試食用のキッチンスペースも設けられるという。
転換点となった2021年
MeaTechにとって2021年は培養肉業界のリーダーとしての地位を確立するうえで転換点ともいえる1年だった。
2021年2月、ベルギーの培養油脂スタートアップPeaceofMeatを買収。3月には世界に先駆けてナスダック上場を実現し、イスラエル、アメリカにおいて最初に上場した培養肉企業となった。
4月には欧州子会社となるMeaTech Europeを設立し、ヨーロッパでの開発活動を開始。10月には市場参入を加速するためにBlueSoundWavesグループとの提携を発表。
12月にはバイオ3Dプリンティングによる、史上最大規模となる104グラムのステーキ肉の生産に成功した。
アジア×培養肉コンソーシアムAPAC-SCAの発足
これまでに培養肉の販売を認めたのはシンガポールに限られる。
2021年、培養肉企業には前年比3倍以上の14億ドルの資金が投入され、各社、培養肉提供先のパートナーシップや生産施設の建設など上市に向けて取り組んでいるものの、培養肉を規制する枠組みの整備は完了していない。
「培養肉を販売する」という共通の目的のために今月、培養肉スタートアップ企業11社から構成されるコンソーシアム「APAC Society for Cellular Agriculture(APAC-SCA)」が発足した。
APAC-SCAは、規制に関する政策立案者とつながりを持つこと、細胞農業の利点と安全性に関する消費者の認識・理解を深めることを優先事項としている。
創業メンバーの11社にはMeaTechのほか、シンガポールのShiokMeatsとGaiaFoods、イスラエルのアレフ・ファームズ、SuperMeat、香港のAvant Meats、中国のCellXとJoes Future Food、韓国のDaNAgreenとSeaWith、日本のインテグリカルチャーが含まれる。
コンソーシアム設立の背景には、培養肉が市販化され、消費者に受容してもらうためには、競合相手と協力し、まず市場を形成していくことが優先されるべきだと各社が認識していることがある。
参考記事
MeaTech’s Subsidiary to Open 21,530 Square Foot Pilot Plant in Belgium in 2023
MeaTech 3D expands cultivated meat operation into the US to accelerate go-to-market strategy
MeaTech 3D Reports 2021 Financial Results and Provides Business Update
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アイキャッチ画像の出典:MeaTech