代替プロテイン

イスラエル政府が培養肉コンソーシアムに約23億円の助成金を提供

 

イスラエル経済産業省傘下イスラエル・イノベーション庁(Israel Innovation Authority 、IIA)は、世界有数の培養肉企業で構成される培養肉コンソーシアムに1800万ドル(約23億円)の助成金を提供した。

このコンソーシアムはアレフ・ファームズ、スーパーミートなど14社の培養肉企業と、ヘブライ大学、テルアビブ大学、テクニオンなど10のアカデミック研究所から構成される。3年間のプロジェクトに対する助成となる。

コンソーシアム設立は、Good Food Institute Israel(GFI)から助成を受けたGaya Savion氏(プロジェクトの開始と調整を担当)と、イスラエル最大の食品メーカーであるTnuva Groupが主導した。

「培養肉における世界でも前例のない政府の取り組み」

出典:Future Meat

このコンソーシアムは、培養肉のより効率的で、コスト競争力のある生産方法の開発、スケールアップを目的としている。研究開発活動の進展を目指すIIAの「マグネット・コンソーシアム・プログラム」の一部として運営される。

GFIイスラエルのAlla Voldman-Rantzer氏は「今、これまで以上に政府は、国の食料安全保障を確保する方法を見つける必要がある。代替タンパク質技術、とりわけ培養肉は、持続可能で適切なタンパク質供給を実現するために不可欠なものだ」とコメントしている。

Tnuva Groupのチーフ・イノベーション・オフィサーでありコンソーシアムの議長を務めるShai Cohen氏は、「これは細胞農業コンソーシアム、特に培養肉における世界でも前例のない政府の取り組みだ。これにより、フードテックで最も重要な分野の1つでイスラエルがリーダーシップを維持できるようになる」と述べている。

培養肉投資の36%がイスラエル企業に集中

出典:MeaTech

イスラエルの培養肉産業は、企業数ではアメリカに劣るものの、世界の他の地域を上回る勢いで発展している。

GFIの最新のレポートによると、2021年には世界の培養肉企業に投じられた資金の36%以上がイスラエル企業に向けられた。アメリカに続き、培養タンパク質企業に5億700万ドル(約630億円)が投じられている。

これまでに培養肉販売を認めた国はシンガポールに限られるが、今、多くの培養肉企業や国がこれに続こうと奮闘している。

Voldman-Rantzer氏は「食品技術のイノベーションと規制の足並みを揃えることは、これらの技術に市場への明確な道筋を提供し、技術がもたらす利点に投資するために重要だ」と述べ、技術と規制の足並みを揃える重要性を強調している。

求められる大手・スタートアップ・アカデミアの協力

出典:アレフ・ファームズ

「大手培養肉企業、培養肉技術を大規模に実装するノウハウを持つ大手食品メーカー、およびアカデミアの研究者が協力することは、この分野のブレイクスルーを生み出し、一般の人々に製品を届けるために不可欠だ」とCohen氏が述べるように、イスラエルではスタートアップと大手が協業する事例が増えている。

スーパーミートは欧州最大の養鶏企業PHWグループと欧州への培養肉導入で先月協業を発表した。フューチャーミートは食品大手のCPフーズやネスレと培養肉製品の開発で提携している。

昨年設立された培養魚のWand Fishは、タフツ大学と知的財産の独占的使用権で契約している。

アジアを舞台に培養肉企業11社から構成されるコンソーシアムも発足しており、市場・業界の発展を目指して、地域・組織の垣根を超えたコラボレーションが始まっている。

 

参考記事

Cultivated meat consortium receives $18 million grant from Israel Innovation Authority

Israel Innovation Authority Grants $18M to Cultured Meat Consortium

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:スーパーミート

 

関連記事

  1. 韓国が培養肉特区を創設、商用化の鍵となる細胞供給で特例を設ける
  2. 発酵タンパク質投資が復調:欧州での上半期投資額が前年超え
  3. ビヨンドミートとペプシコの合弁会社Planet Partners…
  4. バイオテック企業が培養ペットフードを開発するGood Dog F…
  5. Wilk、細胞培養乳脂肪を使った「世界初」のヨーグルトを開発する…
  6. 中国の培養肉スタートアップ南京周子未来食品が約3億円を資金調達
  7. 牛を使わずに乳タンパク質を開発するイスラエルのRemilkが約1…
  8. 大豆ミートを食べてみた感想【意外とおいしい】

おすすめ記事

ビーガンペットフードのWild Earthが約25億円を調達、来年に細胞培養ペットフード発売へ

ビーガンペットフードを販売する米Wild Earthが、シリーズAで2300万ド…

ピザ自販機のBasil Streetが操業停止

ピザ自販機を開発するアメリカのBasil Streetが操業を停止したことが明ら…

韓国LOUNGE’LABがロボットアイスクリームショップBrown Banaをソウルにオープン

AI、ロボット、ブロックチェーンを活用する韓国のスタートアップLOUNGE'LA…

イート・ジャストの代替卵JUST Eggが欧州の安全性承認を取得

米イート・ジャストの代替卵JUST Egg(ジャスト・エッグ)の主要成分が、欧州…

フードロス削減に取り組むオランダ企業OneThirdが約1億9000万円を調達

フードロス削減に取り組むオランダ企業OneThirdが150万ユーロ(約1億90…

フルーツジュースの砂糖を減らすイスラエルのBetter Juiceが約8.8億円を調達

天然ジュースの砂糖を減らす技術を開発するイスラエル企業Better Juiceが…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

リアルセミナー@東京のお知らせ【2025/6/18】

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(05/20 15:09時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(05/21 01:01時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(05/21 05:01時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(05/20 21:10時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(05/20 13:15時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(05/21 00:16時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP