植物を活用して動物由来と同等のタンパク質を開発するイギリスの分子農業スタートアップMoolec Scienceは15日、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて上場することを発表した。
同社は2020年に設立したLightJump Acquisition Corpと正式な企業結合契約を締結した。合併取引は2022年後半に完了する予定で、完了次第、「MLEC」としてナスダック上場する。プロフォーマ株式価値は5億400万ドル(約680億円)となり、合併後の新会社は1億3800万ドル(約185億円)を調達する見込みとなる。
これにより、Moolec Scienceが分子農業のスタートアップ企業でナスダック上場する最初の企業となる可能性がある。
植物を「ミニ工場」としてタンパク質を開発
Bioceres Crop Solutions からスピンアウトしたMoolec Scienceは、植物を活用して動物タンパク質を生産する分子農業のパイオニアとされる。
分子農業は植物を「ミニ工場」として、太陽エネルギーの力で植物に有用物質を作らせる手法であり、これまでにワクチンなどの医薬品から、生分解性プラスチック、近年ではタンパク質の開発へと研究対象が拡大している。
同社によると、分子農業は「動物タンパク質のDNAをあらゆる種子植物で合成することを可能」にする。それぞれのタンパク質は、凝固、味、食感、栄養価など対象となる機能性において付加価値をもたらすように慎重に選択されている。
植物をリアクターとして生成されるタンパク質は「よりおいしく、より機能的で、手頃な非動物由来の代替タンパク質」として消費者向け食品の原料として使用できるという。
Moolec Scienceはベニバナを「ミニ工場」として活用し、これまでにチーズの製造で必要な酵素牛キモシンとγリノレン酸(GLA)で規制当局の認可を取得している。
現在は、実際の肉タンパク質を開発するために、代替タンパク質として広く活用されている大豆とえんどう豆を使った商品開発も進めているという。具体的には、牛タンパク質を含む大豆タンパク質単離物や、豚タンパク質を含む黄えんどう豆タンパク質を成果物としてイメージしているという。
Moolec Scienceの共同創業者兼CEOであるGastón Paladini氏は「コーノ・スール(南米南端部を指す)で最大の食肉プレーヤーの1つである家族経営の第4世代として、私は業界が直面している課題について直に知っています。Moolecの目標は、食品に科学を活用して現在の世界的な食料安全保障という問題を克服し、より持続可能で、順応性のある公平な食料システムを構築することです」とコメントしている。
分子農業が精密発酵に優るポイント
植物に目的タンパク質のDNAを挿入する分子農業は、微生物に目的タンパク質のDNAを挿入する精密発酵と技術的に類似している。二者の違いはどこにあるのか。
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アイキャッチ画像の出典:Moolec Science