シンガポール、アメリカに拠点を置くTurtleTreeは17日、精密発酵により世界で初めてウシラクトフェリン「LF+」を生産したことを発表した。
TurtleTreeは昨年、最初に商用化する製品がヒトラクトフェリン粉末になることを発表していた。同社は18ヵ月にわたる研究開発で開発した「LF+」の2023年上市を目指しているが、ウシラクトフェリンに続き、ヒトラクトフェリンの上市も考えていると思われる。
TurtleTree、精密発酵由来のラクトフェリン生産を発表
TurtleTreeの共同創業者兼CEOのFengru Lin氏は、「精密発酵による持続可能なラクトフェリン生産は、地球と人を養うという当社のミッションに完全に合致します。この優れた成分を長期にわたって環境的・経済的に実行可能な形で商用生産できることは、間違いなくゲームチェンジャーなことです」とコメントしている。
微生物を活用して、従来は動物に依存していた成分を動物に頼らずに生産する精密発酵は、昨今、開発と市場投入が急速に進む分野だ。身近な例では、乳タンパク質を固めてチーズを作るレンネットという酵素の生産に精密発酵技術が20年以上前から使用されている。
代表的なプレーヤーである米パーフェクトデイの発表したデータによると、従来の畜産と比較して、精密発酵由来の乳タンパク質は温室効果ガス排出量を85-97%、水消費量を96-99%、エネルギー消費量を最大60%削減できるという。
精密発酵由来の食品では限定販売も含め、乳タンパク質、卵白タンパク質、ハチミツがアメリカを中心に上市されている。TurtleTreeが来年、ラクトフェリン「LF+」の上市を実現すれば、乳児用調製粉乳市場では初の快挙となる。
※精密発酵ハチミツはまだ開発中であることをMeliBioに確認したため、修正させていただきます(2023年11月)。
同社CSOのAletta Schnitzler氏は、「ラクトフェリンはヒト母乳に独自の有益な特性を与える重要成分の1つです。免疫機能のサポートから腸の健康まで、ラクトフェリンは健康に関連したさまざまな利点を提供することがわかっています」とコメントしている。
精密発酵で乳児用調製粉乳市場を目指す企業
TurtleTreeは精密発酵、細胞培養いずれも手掛ける代替母乳企業だが、昨今、精密発酵に特化してこの領域に参入するプレーヤーが徐々に増えている。
アメリカのHelainaは最近の報道で、クリスパーというゲノム編集技術を使って酵母をプログラムし、精密発酵により母乳タンパク質を開発していることを明らかにしている。同社は昨年11月、シリーズAラウンドで約22億円を調達した。
オーストラリアのEclipseもTurtleTreeと同様に、母乳に含まれるラクトフェリンを開発している。アメリカのHarmonyは2023年までにFDAの認可を取得し、2024年の上市を目指している。
TurtleTree共同創業者のMax Rye氏は、今年アメリカで発生した粉ミルク不足、新型コロナによるサプライチェーンの混乱に触れたうえで、「これ以上、傍観者ではいられません。私たちの長期的な乳製品プロジェクトは進行中ですが、LF+によって、今すぐにより良い栄養に向けて貢献することができます」とコメントしている。
参考記事
TurtleTree Announces LF+, the First-Ever Sustainable Lactoferrin Made With Precision Fermentation
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アイキャッチ画像の出典:TurtleTree