精密発酵でチーズを開発する米New Cultureは今月、韓国のCJ第一製糖から出資を受けたことを発表した。この出資は、2023年にピザレストランでアニマルフリーチーズの発売を目指すNew Cultureの商品開発、スケールアップにあてられるという。
精密発酵チーズのNew CultureがCJ第一製糖と提携
CJ第一製糖は発酵技術で60年以上の経験を有する大手食品・バイオテック企業であり、飼料・食品用の独自のアミノ酸、フレーバー、調味料、植物由来タンパク質成分などを手掛ける。
2019年にはアメリカで2番目に大きい冷凍食品企業Schwan’s Companyを買収。Schwan’s Companyは冷凍ピザを含むさまざまな加工食品ブランドを持つが、CJ第一製糖による買収でアジア市場への影響力も拡大している。
CJ第一製糖のCEO、Yunil Hwang氏は、「New Cultureとの提携は、当社の代替タンパク質への出資戦略を強化するとともに、業界全体でアニマルフリー成分に対する圧倒的な需要があることを強調しています。New Cultureのアニマルフリーなモッツァレラチーズは、バイオベースイノベーションを乳製品分野で実現するうえで新時代の先駆けとなるでしょう」とコメントしている。
CJ第一製糖はこれまでに培養シーフードのShiok Meats、培養肉のアレフ・ファームズ、植物タンパク質のB2B企業Plantible Foodsに出資しているが、精密発酵スタートアップへ出資するのはこれが初となる。
ADMに続く新たな提携
New Cultureは精密発酵と伝統的なチーズの製造方法を組み合わせることで、従来の乳製品チーズのように溶け、伸び、泡立つアニマルフリーなチーズを製造開発している。
同社は8月、ADMと商品開発やスケールアップで提携した。CJ第一製糖のほかにも、ADMのベンチャーキャピタルADM Ventures、Kraft HeinzのベンチャーキャピタルEvolv Venturesや、Mayfield Fund、CPT Capital、Ahren Innovation Capitalなどから出資を受けている。
微生物を使って特定成分を生成する精密発酵食品の上市や、資金投入は依然として続いている。
今年8月には、パーフェクトデイの乳タンパク質を使ったアイスクリームがシンガポールに上陸した。6月にはイスラエルのRemilkが乳タンパク質ではパーフェクトデイに続き、アメリカFDAよりGRAS自己認証を取得した。
精密発酵により生成された食品の上市はアメリカ、シンガポール、香港に限定されているが、Change FoodsによるUAEへの精密発酵工場建設、Remilkによるデンマークへの工場建設のほか、精密発酵のスケールアップを目的とした専用施設の開設が来年予定されるなど、さらなる市場拡大に向けた動きが複数確認されている。
アメリカの冷凍ピザ市場25%のシェアを誇るCJ第一製糖との提携により、New Cultureの市場投入も一層弾みがつくだろう。
参考記事
New Culture Receives Funding from CJ CheilJedang to Continue Scaling Efforts
関連記事
アイキャッチ画像の出典:New Culture