代替プロテイン

イスラエルのBELIEVER Meats、アメリカで世界最大の培養肉工場を着工

 

イスラエルの培養肉企業BELIEVER Meats(旧称Future Meat Technologies)は7日、ノースカロライナ州ウィルソンで世界最大規模となる培養肉工場の着工を発表した

アメリカ初となる同社工場は広さ20万平方フィート(18580㎡)で、本格稼働すると年に最低約1万トンの培養肉を生産できるようになる。

畜産による気候変動や高まる食料需要の対応策として、環境負荷が低く、生産施設で必要量だけを生産できる生産効率の良い培養肉の開発が急速に進んでいる。世界最大の培養肉工場着工は、培養肉業界にとって重要な分岐点となる。

BELIEVER Meats、アメリカで世界最大の培養肉工場を着工

出典:BELIEVER Meats

BELIEVER Meatsは昨年12月、3億4700万ドル(当時約394億円)の大型資金調達に成功したときに、2022年にアメリカで工場を着工予定であることを発表していた。

当時、複数地域を候補地として検討していたが、優秀なタレントプールと、技術主導型のソリューションを統合することで住民の生活改善に成功した実績を持つノースカロライナ州ウィルソンを選定した。

BELIEVER Meatsはウィルソン郡に1億2,335万ドル(約167億円)の初期投資を計画しており、今後3年間で新たに100の雇用を創出する見込みだという。ウィルソンに設立される工場には、特許プロセスに基づいた、高い細胞密度と高収量を可能とするカスタムメイドのバイオリアクターが設置され、研究開発センター、試食会のためのキッチン、会議室なども併設される。

1万トンの生産能力を誇る培養肉工場

出典:BELIEVER Meats

ADM、タイソンなど大手食品企業から出資を受けるBELIEVER Meatsは、培養肉業界をリードする主力企業の1つとして注目されている。線維芽細胞、アニマルフリーな増殖培地、独自の培地リサイクルシステムを使用し、昨年には110グラムあたりの生産コストを1.7ドルまで削減することに成功した

昨年6月には世界初となる培養肉工場をイスラエルで開設。この工場は1日に500キログラムの培養肉を生産できる。

同社はタイのCPフーズ、ネスレと提携を締結し、規制当局の承認を待つ中、さまざまな市場におけるパートナーシップを拡大している。8月には世界に先駆けて、培養羊肉の生産を発表した

今回発表した工場が稼働すると、生産能力は年2200万ポンド(約9980トン/1日あたり27トン)となる(2023年3月追記)。

シンガポールでは精肉店が培養肉供給へ

出典:Eat Just/GOOD Meat

BELIEVER Meatsは1年前の段階で、「過去2年にわたってFDAと協議してきた」と述べていた

先月、米UPSIDE Foodsが培養肉の安全性についてFDAの承認を受け、USDAの承認を待つ状態となり、アメリカでの培養肉販売に向けて大きな前進を遂げた。こうした状況から、BELIEVER Meatsの培養肉が食卓に並ぶ日はそう遠くはないだろう。

シンガポールで培養肉が販売されてから2年。これまでに販売認可を取得した唯一の企業はアメリカのイート・ジャストとなる

今月にはイート・ジャストの培養肉GOOD Meatがシンガポールの精肉店Huber’s Butcheryで発売されることが発表された。今月7日から10日まで、招待されたゲストは来年1月にレストランで提供される鶏肉料理を早期に入手できる。供給は限定されているが、培養肉を供給する精肉店の登場は、シンガポールが未来のフードシステム実現にさらに近づいたことを意味する。

 

参考記事

BELIEVER Meats Breaks Ground on Largest Cultivated Meat Production Facility in The World

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:BELIEVER Meats

 

関連記事

  1. 【創業者インタビュー】精密発酵でヒト母乳タンパク質を開発するPF…
  2. えんどう豆由来の代替ミルクを開発するSproudが約6.8億円を…
  3. 【12/17】熊本発の植物肉スタートアップDAIZ社セミナー開催…
  4. スイスのPlanted、発酵技術を使用した植物性ステーキを欧州3…
  5. AIエンジンで代替タンパク質を開発するThe Live Gree…
  6. 黄身・白身・殻を再現した植物性代替卵を開発するNeggstが約6…
  7. Sophie’s BioNutrientsがクロレラ…
  8. 米培養肉Upside Foods、カリフォルニアに培養肉工場を開…

おすすめ記事

MEATOSYS、農家を中心とした培養肉生産システムを開発 – 2028年の市場投入を目指す|創業者インタビュー

試作した培養牛肉 出典:MEATOSYS GmbHドイツの培養肉企業MEATOSYSは、農家が自…

Apeel Sciences、鮮度を保てるプラスチックフリーなキュウリ、ウォルマートで販売開始|食品ロス問題の解決に

食品ロス問題に取り組む米スタートアップのApeel Sciencesは、Houwelingグループと…

「競争よりも共創」代替肉で環境問題に挑むネクストミーツが目指すものとは

メディアの注目を集め続けるフードテック企業がある。「地球を終わらせない」という理…

米Pairwise、アメリカ初のCRISPR編集食品を発売

ゲノム編集技術を活用して農産物を開発する米Pairwise(ペアワイズ)は、Co…

アレフ・ファームズがイスラエルで培養牛肉の承認を取得|牛肉では世界初

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズが、イスラエル保健省から培養牛ステーキ肉…

中国ファーストフード大手DicosがStarfieldと提携、植物肉バーガーを全国で一斉発売

中国のファーストフード大手Dicosが植物由来代替肉に取り組む中国企業Starf…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(06/19 15:20時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(06/20 01:16時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(06/19 05:15時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(06/19 21:22時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(06/19 13:25時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(06/20 00:28時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP