代替プロテイン

植物性の全卵を開発するYo Eggが米国進出を実現、ビーガン落とし卵をレストランで発売

 

イスラエルの代替卵企業Yo Eggが今月、アメリカ進出を実現した。

ひよこ豆と大豆から全卵を再現したYo Eggの代替卵は今月より、ロサンゼルスのレストラン6店舗で提供されている。

鳥インフルエンザの影響により鶏卵価格の高騰が続く中、感染拡大による価格変動の影響を受けにくい植物由来の代替卵が新たな選択肢として消費者に提示された。

全卵の代替品を開発するYo Eggがアメリカ進出を実現

出典:Yo Egg

2021年にイスラエルに設立されたYo Eggは、落とし卵、目玉焼きなど全卵の代替卵を開発している。

代替卵の領域では、緑豆を主成分とした米イート・ジャストのJUST Eggが世界的に有名だが、近年、Yo Eggのように動物成分を使用せずに全卵の再現に取り組む企業が増えている。

Yo EggはこれまでイスラエルのGoogle、Meta(旧称Facebook)の食堂や、ホテルで製品を提供してきた

今回、アメリカでの発売場所をロサンゼルスから開始したことについて、Yo Egg共同創業者兼CEOのEran Groner氏は、戦略的意図があったことをFAST Companyのインタビューで回答している。

同氏はロサンゼルスが、プラントベース食品においてアメリカで最も進んでいる市場だと指摘した上で、「ブランチと朝食をカバーして、その領域を手中に収めるには、ロサンゼルスから開始するのがベストだと思いました」と述べている。

鳥インフルエンザの影響を受けない植物卵

出典:Yo Egg

動物成分を使用しない代替卵の利点として、感染症のリスクがないこと、価格変動を受けにくいこと、環境負荷の軽減が挙げられる。

2023年1月以降、日本各地で採卵鶏の鳥インフルエンザ発生が確認されており、1シーズンの殺処分数は1000万羽を超え、過去最悪となっている。これに伴い、鶏卵卸売価格は前年同時期を100円以上上回っており、海外でも鶏卵価格の高騰が続いている

Groner氏は、「食料システムから動物を取り除くことは、私たちの利益になります。価格の高騰も起きませんし、使用する天然資源は大幅に減り、抗生物質の使用や動物を媒介する疾患の危険性も最小限に抑えることができます」と述べている。

1個の鶏卵には53ガロンの水が必要になるのに対し、Yo Eggの代替卵であれば水消費を90%減らせると推定しているという。

同社の代替卵はすでに高級鶏卵と同等価格を実現しており、今後数年以内に、従来の鶏卵と同等価格にまで価格を引き下げることを目指している。

イスラエルに続き、アメリカに工場を開設

出典:Yo Egg

FAST Companyの報道によると、Yo Eggはイスラエルの生産工場に続き、最近、「1日数千個の卵」を生産できる工場をロサンゼルスに開設した。

同社は昨年5月、Stray Dog CapitalNFXが主導するシードラウンドで500万ドル(約6億7000万円)を調達した。Yo Eggは調達した資金で2022年後半にアメリカのレストランで上市する計画を発表していた。

Yo Eggはこれまでに落とし卵、目玉焼きの2製品を開発しており、目玉焼きもアメリカに導入する計画を立てている。同社は両面焼き卵、ゆで卵、スクランブルエッグ、オムレツなどの製品開発にも取り組んでいる。

Yo Eggの製品は現在、レストランやホテルなどでの提供に限定されているが、長期的には小売での導入も目指しているようだ。具体的な時期は不明だが、設立から2年経たずに2つの市場に進出したスピード感から、今後のさらなるスケールアップ、市場拡大が期待される。

 

参考記事

This poached egg has a perfectly runny yolk—and it’s vegan

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Yo Egg

 

関連記事

  1. オーストラリアのAll G Foods、植物肉ブランドを切り離し…
  2. 代替卵「JUST Egg」の欧州導入に向け、イート・ジャストとV…
  3. 奇跡の植物肉「ミラクルミート」を開発したDAIZに国内外から引き…
  4. インテグリカルチャー、培養肉用資材のB2Bマーケットプレイス「勝…
  5. チェコの培養肉企業Mewery、チェコ政府から約3200万円の助…
  6. ScaleUp Bio 、食品用途の2つの精密発酵施設を来年シン…
  7. ユニリーバ、精密発酵アイスクリームをBreyersブランドで発売…
  8. Nature’s Fyndの微生物発酵によるタンパク質「Fy」が…

おすすめ記事

培養肉企業21社の生産工場・稼働状況まとめ-2022年11月時点-

2020年12月にシンガポールで培養肉が世界に先駆けて販売されてからもうすぐ2年…

フランスのVital Meat、初の培養肉試食会をシンガポールで開催|シンプルなアプローチで培養鶏肉の早期市場投入を目指す

フランスの培養肉企業Vital Meatは、シンプルなペースト状の培養鶏肉を活用…

天然には存在しない「新しい酵素」を開発するEnzymitが約6.3億円を調達

イスラエルを拠点とする合成生物プラットフォーマーのEnzymitは先月、シードラ…

代替肉はなぜ必要なのか?代替肉の必要性、分類、現状をわかりやすく解説

ベジタリアン、ヴィーガンでないなら代替肉は必要ないのでは? 日本は…

菌糸体由来チーズを開発するベルギー企業Bolder Foods、資金調達難で事業終了を発表

菌糸体由来チーズを開発するベルギーのBolder Foodsは今月、資金調達難に…

パーソナライズ化された次世代自販機のBolkが約5億円のシード資金を調達

次世代自販機を開発するBolkが、シードラウンドで400万ユーロ(約5億2000…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(08/22 15:42時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(08/22 01:51時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(08/22 05:38時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(08/21 21:44時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(08/22 13:40時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(08/22 00:55時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP