代替プロテイン

植物性チキンナゲットのNowadaysが事業を停止

 

植物性チキンナゲットを製造販売する米Nowadaysが事業を停止したことが明らかになった。AgFunderが報じた

事業停止の理由として共同創業者のMax Elder氏は、資金を調達できなかったこと、直販や小売では高いリピート率を誇り、好調に推移しているものの、冷凍食品を販売するユニットエコノミクス(顧客1人あたりの収益性)は、大きな規模を持たないスタートアップ企業には困難であることをAgFunderのインタビューで述べている。

Nowadaysは、Dominik Grabinski氏Elder氏によって2020年に設立された。

添加物を加えずにシンプルな7つの原料で、栄養価が優れた植物性チキンナゲットを開発するNowadaysは投資家の注目を集め、昨年5月には700万ドル(当時約9億円)を調達し、累計調達額は1050万ドル(約15億円)となった。出資者には、健康や持続可能な食の分野へ投資をするベンチャーキャピタルであるStray Dog Capitalのほか、テキサス州の食肉加工業者Standard Meat Companyが含まれていた。

Nowadaysは独自の低水分押出成形プロセスにより、使用する材料を少なく、安価で量産できる生産体制を構築し、昨年には西海岸のホールフーズなどで販売を開始した。

Elder氏は保有する技術は差別化できるものだと考えており、この3年で構築した価値を維持する機会を積極的に探していきたいと述べている。

アメリカ代替肉市場の苦戦

出典:Nowadays

AgFunderによると、アメリカの植物肉の小売売上は2023年7月2日までの5週間で12.6%減の1億680万ドルとなり、数量は前年比で19.8%減少した。2023年7月2日までの1年間では、売上高は前年比7.3%減の11億ドルとなり、販売数は15.6%減少した。

特に冷蔵植物肉と青果部門が最も減少しており、小売業者は品揃えを削減しているという。従来の冷蔵肉の売上が前年比2.7%と減少が穏やかであるのに対し、冷蔵植物肉は前年比21.9%の減少となり、特に厳しい状況となる。

こうした状況においてもElder氏は、次のように代替肉市場に対して前向きな見方をしている。

「長期的に従来のタンパク質に対する逆風は強まる一方だと今でも感じています。資金調達に苦戦する企業があるのも確かですが、代替タンパク質製品の可能性や必要性については根本的に何も変わっていないと考えています」(Max Elder氏)

単独戦略vs複数戦略

出典:インポッシブルフーズ

植物性ナゲットに参入する企業は多い。

ジャックフルーツを原料に使用するJack & Annie’s、当時18歳だった若き起業家が立ち上げたSimulate、独自の自動化技術でコスト削減を実現したRebellyousなどが登場している。

代替肉で有名なビヨンド・ミートインポッシブルフーズもナゲットを展開している。

さらに、タイソンの植物肉ブランドRaised & Rootedはバーガー、ソーセージなどに加えてナゲットも販売している。スーパー大手のターゲットも自社の植物食品ブランドGood & Gatherとしてミートボール、ナゲット、チーズなど多様な製品を展開している。

これらの企業はナゲットだけでなくバーガーなど他の製品も展開している。特に食品大手やビヨンド、インポッシブルなどは知名度、流通チャネルを有している点で優位性がある。

一方、Nowadaysはナゲット単独で代替肉市場に挑む戦略をとった。これが事業停止にいたった要因の1つになったかもしれない。D2Cでは消費者から高い評価を一貫して得ていたが、単独戦略はスーパーなど小売に導入するうえで複数製品を持つ他社より不利になった可能性はある。

 

参考記事

BREAKING: Plant-based chicken startup Nowadays ceases operations, in ‘active conversations’ over selling IP

Vegan Chicken Nugget Startup Nowadays Ceases Operations Amid US Plant-Based Meat Decline

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Nowadays

 

関連記事

  1. ダノンとBrightseedが提携を拡大、AIを活用して植物の隠…
  2. Believer Meats、培養鶏肉の連続生産が高い費用対効果…
  3. モサミートが培養肉の工業生産に向けて生産施設を拡大
  4. 微生物発酵で脂肪を開発するNourish Ingredients…
  5. ビヨンドミート、菌糸体由来ステーキ肉の発売計画を発表
  6. 発酵技術で代替シーフードに挑むAqua Cultured Foo…
  7. 代替母乳のTurtleTree、カリフォルニアに研究施設開設を発…
  8. イスラエルのImagindairy、アニマルフリーな精密発酵乳タ…

おすすめ記事

イスラエルのYO-Eggが黄身と白身に分かれた代替卵を開発

代替卵に新たなトレンドが生まれつつある。アメリカのJUST Eggに代表…

培養フォアグラを開発する仏Gourmey、EUで初めて培養肉の承認申請を提出

2024/8/2追記・修正フランスの培養肉企業Gourmeyが今月、EU…

二酸化炭素から動物飼料用のタンパク質を作るDeep Branchが約10億円を調達

二酸化炭素から代替タンパク質を開発するDeep BranchがシリーズAで800…

CulNet Systemからイネ、微細藻類を活用した低コストで持続可能な培養液開発の今|第5回細胞農業会議レポート

培養肉の生産コストの大部分を占めるといわれるのが、細胞を育てるために必要な培養液…

お多福醸造・オタフクソースがマイコプロテイン事業に参入

お好みソースで知られるお多福醸造・オタフクソースがマイコプロテイン事業に参入する…

ニュージーランド政府、培養シーフード開発に約8.6億円を出資

2024年9月24日更新:記事公開当初、後半で記載のシンポジウムの開催時期を2024年としておりまし…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/21 14:06時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/20 23:44時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/21 03:26時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/20 20:01時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/21 12:17時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(11/20 23:02時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP