培養肉の製造に必要な成長因子を低コストで開発するBioBetterは今月、食品グレードのパイロット工場を開設した。BioBetterはタバコ植物を活用し、培養肉生産の主要ハードルである成長因子を開発している。
同社は成長因子の生産に酵母などの微生物、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣)、昆虫細胞を利用するのではなく、タバコ植物を使用して成長因子を生産する独自の技術を開発した。
このように、植物を「ミニ工場」「バイオリアクター」として特定成分を生成する方法は植物分子農業(または分子農業)と呼ばれる。
2025年末までに成長因子を年産5トンへ
このパイロット工場は、タバコ植物を1日に100kg処理できるという。BioBetterは、2025年までに1日に処理できる量を25トンへ引き上げ、成長因子の生産量を年間5トンに増産することを目指している。
現在、培養肉の生産プロセスはまだ高価であるため、生産をスケールアップして動物肉と同等価格を実現することが課題となっている。BioBetterは、成長因子の生産コストを現在の100分の1となる、1グラムあたり1ドルに下げることを目標としている。
新設された工場は、FGF2やインスリンなど、食品グレードの成長因子の製造に必要な要求事項を満たしており、現在、イスラエル保健省から食品製造ライセンスの承認を待っている状態だという。
タバコ農家にとって新たな産業となる可能性
BioBetterのタバコ植物は遺伝子組換え物質の漏出を防ぐために慎重に設計されており、化学的に誘導された場合にのみ、成長因子の発現が誘導される。
不注意による摂取や食用作物の相互汚染のリスクを回避するために、非食用、非飼料のタバコ植物のみを使用しているようだ。
同社はイスラエルのネットハウス4箇所でタバコ植物を栽培しており、2024年の商用化を予定している。
成長因子の生産にタバコ植物を活用する試みは、タバコ農家にとっては新たな収入源となる可能性がある。培養肉の社会普及に伴い、タバコ農家にとって培養肉が新たな産業になるかもしれない。
共同創業者のDana Yarden氏は、「過去1年間で、私たちの活動範囲と協業は大きく拡大しました。世界中の多くの培養肉企業や細胞培地メーカーへ成長因子のサンプルを提供したところ、いくつかの企業や研究機関から、FGF2とインスリンいずれについても有望な概念実証の成果報告を受けています」と述べている。
参考記事
BioBetter Pioneers Cultivated Meat Future with Molecular Farming
BioBetter Opens Pilot Facility to Pave Way for Cultivated Meat through Molecular Farming
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アイキャッチ画像の出典:BioBetter