精密発酵で乳タンパク質を開発するイスラエルのRemilkは今月5日、カナダ保健省から「異議なし」のレターを受け取り、カナダでβ-ラクトグロブリンの使用・販売が可能になったことを発表した。
乳タンパク質は大きくホエイタンパク質とカゼインタンパク質に分類される。ホエイタンパク質には、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、ラクトフェリンなど多くのタンパク質が含まれている。この中で、食品用途で精密発酵によるタンパク質開発が最も先行しているのがβ-ラクトグロブリンだ。
β-ラクトグロブリンを開発する精密発酵企業が増えるなか、カナダで精密発酵による乳タンパク質の販売認可を取得したのはRemilkが世界初、タンパク質ではインポッシブルフーズに続き2社目になる。
Remilkがカナダで精密発酵乳タンパク質の認可を取得
Remilkのアニマルフリーなβ-ラクトグロブリン(Komagataella phaffii yRMK-66由来)は、牛由来と同等だが、牛に頼らず、精密発酵により生産されている。
Remilkは昨年2月、アメリカ食品医薬品局(FDA)から「異議なし」のレターを受け取り、シンガポール食品庁(SFA)の認可を取得した。昨年4月、イスラエル保健省からも認可を取得し、イスラエルで最初に認可を取得した企業となった。カナダ保健省の認可により、4ヶ国で販売認可を取得したこととなる。
「FDAからの青信号に続き、私たちは規制戦略においてカナダを優先しました」とRemilkの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のAviv Wolff氏は述べている。
Wolff氏はさらに、「カナダは当社にとって重要な市場であり、カナダ国民に比類のない乳製品体験を提供する機会を得て、最初に参入できることを大変嬉しく思います。当社は現在、カナダの大手食品会社と提携し、消費者に罪悪感なく味わうという全く新しい体験を提供する準備ができています」と述べ、カナダで上市するためにパートナー企業を探していることに言及している。
4ヵ国で認可を取得
4つの地域で販売認可を取得したRemilkだが、これまで発売が確認されているのはアメリカのみ。
昨年1月、General MillsがRemilkの乳タンパク質を使用したクリームチーズ「Bold Cultr」の発売を発表したものの、General MillsのコーポレートベンチャースタジオG-Worksが「Bold Cultr」に対する資金提供の優先度を下げる決定を下したため、「Bold Cultr」は昨年2月でクローズした。これに伴い、Remilkの最初の製品もわずか1ヶ月で販売終了となった。
昨年4月の時点で、イスラエル食品最大手Central Bottling Company(CBCグループ)との提携を通じて、イスラエル国内での販売間近だと公表されていたが、販売は確認されていない。CBCグループは乳業メーカーTara Dairyを所有しているため、Tara Dairyを通じてイスラエル国内にRemilkの乳タンパク質が流通していくのだろう。
世界の精密発酵タンパク質認可の現状
精密発酵タンパク質で認可を取得した企業を地域別にまとめると次のようになる。
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Remilk