代替乳製品の食感を改善するために酵母由来の脂肪成分を開発するスイス企業Cultivated Biosciencesは今月、シードラウンドで500万ドル(約7億3300万円)の調達に成功した。
これは2022年のプレシードでの調達に続くもので、今回のラウンドは、持続可能な食品・エネルギーシステムを促進するオランダのベンチャーキャピタルNavus Venturesが主導した。
15名のチームから構成されるCultivated Biosciencesは現在、2025年までに自社原料を市場に導入するために、スケールアップ、食品業界との提携に焦点をあてている。
同社は調達した資金で、食品業界と協力して酵母由来クリームの開発を加速させる。また、認可を取れ次第、2025年にアメリカ市場、2026年に欧州市場への自社クリーム導入を計画している。
スイスのCultivated Biosciences、米国進出に向けて資金調達
2021年に設立されたCultivated Biosciencesは、これまでの乳製品クリームのクリーミーさ、機能性、色を模倣するうえで重要な成分となる酵母由来のクリームを開発している。持続可能で健康的な同社クリームは、乳製品を含まない製品の食感と安定性を改善し、添加物の代わりに使用され、味には影響しないという。
Cultivated Biosciencesのプロセスでは、非遺伝子組換え酵母を使用。公式サイトによると、糖を油脂に変換して細胞内に油脂を蓄えることのできる油脂酵母(oleaginous yeast)を使用しているが、具体的な種類は公表されていない。
同社は酵母を使用して乳製品クリームを分子レベルで再現するのではなく、乳製品クリームと同等の機能性、感覚特性を再現した。そのため、自社の生産プロセスは精密発酵とは異なると述べている。
同社の酵母クリームには脂肪、タンパク質、食物繊維が含まれており、牛乳に存在する脂肪滴に似た微細構造を特徴としている。昨年12月には、サンフランシスコで開催されたMISTAのイベントで、酵母クリームのプロトタイプを発表した。
Cultivated Biosciencesは酵母クリームの用途として、コーヒークリーマー、ミルク、アイスクリームなどを想定しており、クライアント企業とこれら製品への使用をすでに検証済みだという。
1年で5L→1500Lへスケールアップを実現
Cultivated Biosciencesは1年前、5Lのバイオリアクターを使用していたが、現在は1,500Lのバイオリアクターまでスケールアップに成功したことを最近リンクトインで発表した。1,500Lで生産できる酵母クリームは、牛2頭分に相当するという。
Cultivated Biosciencesのように酵母を使用して、効率的に油脂を生産する取り組みは国内外でみられる。
代表的な例が、新潟薬科大学だ。同大学は、油脂酵母を利用して、日本独自の油脂生産システムの基盤を構築し、自給率向上を目指している。2年前、日清食品ホールディングスは新潟薬科大学と協力して、食用代替パーム油を使用した油揚げ面の作製に世界で初めて成功した。
海外では、英Clean Food Group、C16 Biosciences、NoPalm Ingredientsなどが確認されている。
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アイキャッチ画像の出典:Cultivated Biosciences