代替プロテイン

Umami BioworksとShiok Meatsが合併計画を発表

 

シンガポールの培養シーフード企業Umami BioworksShiok Meatsの合併計画が報じられた。

Green queenの報道によると、二社の合併が完了すると、合併後の会社名はUmami Bioworksとなり、Umami BioworksのCEOであるMihir Pershad氏が事業を指揮し、Shiok MeatsのCEOであるSandhya Sriram氏は退任することになる。

二社は、互いの知見を組み合わせることで、市場投入の効率を高め、商用化の機会を拡大し、当局からの承認を加速できると考えている。Shiok Meatsの従業員は、Umami Bioworksのチームに加わり、甲殻類の細胞株、培地の開発作業をサポートする。

Umami BioworksとShiok Meatsが合併計画を発表

Mihir Pershad氏 出典:Umami Bioworks

2020年設立のUmami Bioworksは、ウナギ、マグロ、ハタ、マダイなどの培養魚開発に取り組んでいる。一方、Shiok Meatsは、ロブスター、エビ、カニという甲殻類を細胞培養で開発する企業として2018年に設立された

二社の開発魚種は異なるものの、絶滅の恐れがあり、養殖が難しい種を開発している点で共通している。

ウナギ、ハタ、マグロなどは絶滅の危機に瀕し、養殖が難しい。ロブスター、エビ、カニも養殖が難しく、エビ、カニは複数の種が絶滅危惧種に指定されている。昨年には、ズワイガニの大量死の原因が海水温の上昇によるとの報告も確認されている

Pershad氏は、「UMAMIが常に優先しているのは、大規模な商用養殖に適さず、需要の増大に直面している ETP (絶滅危惧種・保護種) の種です。ロブスターやカニなどの甲殻類は、明らかに私たちの戦略的使命と一致しています」とGreen queenに述べている。

アジアを代表する培養シーフード企業2社の合併は、培養シーフードの開発、商用化における促進剤になると思われる。

Pershad氏AgFunderのインタビューで、資金調達環境が厳しい中、この取引は初期の培養肉・培養シーフード分野における多くの取引のなかで最初のものになる可能性があると述べ、今後も業界で多くの統合がみられるとの予想に言及している。

培養甲殻類の道を開いたShiok Meats

Sandhya Sriram氏 出典:Shiok Meats

甲殻類の培養シーフード開発に取り組む企業は複数確認されている。その代表格となるShiok Meatsは、欧米でもごくわずかのスタートアップ企業しか登場していない2018年という業界の初期に誕生し、培養甲殻類の先駆者となった。

当時、魚介類、特に甲殻類の幹細胞に関する研究や情報はほとんどなかったとSriram氏リンクトインの記事で述べている。

Shiok Meatsは培養ロブスター、培養カニの試作品の発表や、培養エビのコスト削減など、さまざまな成果を出してきた

日本企業インテグリカルチャーと培養エビの共同研究を行うほか、韓国のCJ第一製糖、ベトナムの水産業者Vinh Hoan、日本の東洋製罐グループホールディングスリアルテックホールディングスから出資を受けてきた。

ある程度の規模に達した後、甲殻類幹細胞のスケールアップが難しいという課題に直面したことをSriram氏は昨年明かしていた。しかし、知見がなかった状況からスタートし、さまざまな実績をだし、他社に道を開いた点で、Shiok Meatsは世界における培養甲殻類開発の先駆者といえるだろう。

 

参考記事

Cultivated meat consolidation begins as UMAMI Bioworks to merge with Shiok Meats

Singaporean Cultivated Seafood Startups Umami Bioworks and Shiok Meats Announce Merger

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Shiok Meats

 

関連記事

  1. ユニリーバ傘下の代替肉ブランドThe Vegetarian Bu…
  2. 世界の精密発酵タンパク質の認可状況まとめ【2024年11月】|F…
  3. 培養油脂のMission Barnsが食肉加工企業と提携、培養ソ…
  4. Motif FoodWorksが約249億円を調達、植物肉をアッ…
  5. ナイジェリア初の植物肉企業VeggieVictoryに世界の投資…
  6. QuornとPrime Rootsが菌糸体由来肉の市場拡大に向け…
  7. シンガポール企業Mycosortia、おからをアップサイクルした…
  8. 動物肉と同等価格の植物肉が生産可能な自動化技術をシアトルの企業が…

おすすめ記事

機能性成分としての培養タンパク質粉末を開発する韓国のSimple Planet、年内に北米支店を設立

韓国の培養肉企業Simple Planetは今年後半に北米に支店を設立し、商品化…

イスラエルのピザハットがドローンによる試験配達を6月から開始

イスラエルのピザハットは今年6月からドローンによる試験配達を開始する。ピ…

2020年の代替タンパク質投資額は31億ドルとGFIが報告、過去10年の投資額の半分が2020年に集中

GFIは、2020年は植物ベースの肉、卵、乳製品など動物性食品に代わる代替品を開…

ジャガイモで卵白タンパク質を開発するPoLoPo、2026年の上市に向けて米国農務省(USDA)に申請

イスラエルの植物分子農業スタートアップPoLoPoは先月、遺伝子組み換えジャガイ…

細胞培養でチョコレートを開発するCalifornia Culturedが約4億5000万円を調達

細胞培養によりチョコレートを開発するCalifornia Culturedがシー…

米Nepra Foods、製パン用の代替卵白粉末の商用生産を開始

コロラドを拠点とするNepra Foodsは、製パン卸売業者向けの独自の代替卵白…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoセミナー開催のお知らせ

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/17 14:27時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/18 00:10時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/18 03:58時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(01/17 20:26時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/18 12:39時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(01/17 23:23時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP