2024年10月18日追記
これまでの動きから、YEEAプロジェクトは高い可能性で精密発酵に関するものだと思われますが、過去の資料を読み返した結果、まだ断定できないと判断し、記事後半を一部修正しました。
ルクセンブルクに拠点を置く植物分子農業企業Moolec Scienceは今月、米国農務省(USDA)・動植物検疫課(APHIS)から同社が開発した遺伝子組み換え大豆「Piggy Sooy」について承認を得たことを発表した。
Moolecは昨年6月、「Piggy Sooy」の開発を発表した。この大豆は種子中に豚タンパク質を最大26.6%と高レベルで発現したものとなる。
USDAからの承認は、豚タンパク質を生成する「Piggy Sooy」の輸入などに許可が必要ないことを意味し、現時点で「Piggy Sooy」を原料としてアメリカで販売できるわけではない。販売には、アメリカ食品医薬品局(FDA)からの承認が必要となり、現在、FDAと協議を進めていることにMoolecはプレスリリースで言及している。
プレスリリースによると、植物由来の動物タンパク質について、USDAから承認を取得したのは植物分子農業企業ではMoolecが初になるという。
「Piggy Sooy」がUSDAから承認を取得
USDA-APHISによる規制ステータス評価(Regulatory Status Review、RSR)は、豚タンパク質を蓄積する遺伝子組み換え大豆「Piggy Sooy」は、非遺伝子組み換え大豆と比較して、植物の害虫リスクを増加させるような経路を特定できず、害虫リスクを増大させる可能性は低いと結論づけた。
この結論は、同社大豆が7 CFR part 340の対象外となったことを意味する。つまり、遺伝子工学により改変または生産された生物の移動を管理するAPHISの規制対象にならず、輸入、アメリカ国内での州を超えた移動などに許可が不要になることが確定した。
Green queenの報道によると、Moolecは動物タンパク質を種子から抽出・精製するのではなく、大豆やえんどう豆のタンパク質に埋め込んだ形で販売する考えのようだ。これにより、精製コストを抑えることができ、成分中のタンパク質量も増やすことができる。
分子農業から発酵まで複数のプロジェクトを進行
Moolecはこれまでにベニバナを利用したキモシン、γ-リノレン酸(GLA)を開発している。大豆のほかには、えんどう豆を利用した動物タンパク質開発にも着手している。γ-リノレン酸生産用のベニバナについては、2023年3月の時点でAPHISから規制の対象外になることが認められている。
これまでの報道から、キモシン、γ-リノレン酸については一部当局の認可は取得済み(ステップは残されている)であり、今回、新たに大豆でマイルストーンを達成したことになる。
同社によると、第3世代の「Piggy Sooy」には安定した数の豚ミオグロビンタンパク質遺伝子が含まれている。大豆と並行して進めているえんどう豆プロジェクト(PEEA1)では、えんどう豆の種子に牛のミオグロビン遺伝子が存在することが確認されており、遺伝子が世代を超えて継承されることもわかっているという。
新規酵母株を使用して食品原料を開発するプロジェクト(YEEA)も進めており、すでにFDAと市販前協議を開始している。
MoolecはこのプロジェクトでGrupo Insudと協力しており、二社は2021年8月に合弁事業の立ち上げを発表している。昨年3月の発表資料によると、同プロジェクトでは肉タンパク質を開発しており、インドのプラットフォームは、3Lのラボスケールから300Lのセミパイロットスケールまで成長しているようだ。
さまざまなプロジェクトが進行中だが、最初に上市するのはγ-リノレン酸(GLASO)になる見込みで、2025年の上市を目指しているという。
参考記事
Piggy Sooy: Moolec Gains USDA Approval for Pork Proteins Grown in Soybeans
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アイキャッチ画像の出典:Moolec Science