アップサイクル

二酸化炭素から代替タンパク質を開発するJooulesが約1.5億円を調達

 

二酸化炭素を原料に代替タンパク質を開発するニュージーランド企業Jooulesは今月、ガス発酵技術の商用化に向けてSprout Agritech LPから100万ドル(約1億5500万円)を調達した

Jooulesは微生物・二酸化炭素・水素を活用したガス発酵により、資源効率の良いタンパク質を開発している。

二酸化炭素を活用してタンパク質を作る企業としてはこれまでに、Air ProteinソーラーフーズArkeon BiotechnologiesFarmlessディープ・ブランチNovoNutrientsなどが登場している。国内ではCO2資源化研究所が富士フイルムと量産化技術で共同研究を行うなど、近年取り組みが増えており、Jooulesはこの分野の最新企業となる。

Jooulesは初期のターゲット市場であるアジア太平洋進出に向けて、来年度に新規食品の認可取得を目指している。調達した資金で、技術チームを拡大し、ニュージーランドの研究機関SCIONと協力して製品開発を加速させる。

必須アミノ酸すべてを含むタンパク質

David McLellan氏 出典:Jooules

Jooulesは、二酸化炭素を原料にタンパク質を開発するニュージーランド初の企業であり、David McLellan氏により2021年に設立された。同社タンパク質は、従来のタンパク質と比較して、水使用量を約600分の1に抑え、土地利用を99%削減できる見込みだという。

Jooulesは当初、精密発酵による代替タンパク質で乳製品分野に参入することを考えていたが、より難易度が上がるものの潜在的な利益を生む可能性のある選択肢へと転換した

McLellan氏は、「私たちは研究室で、ガス発酵により古代の微生物の力を利用して、二酸化炭素から機能性かつ食品グレードのタンパク質を生成できることを証明しました」とプレスリリースで言及。初期の試験では、同社タンパク質は9種の必須アミノ酸をすべて含む完全なタンパク質に関する国連食糧農業機関(FAO)の基準を満たしていることが実証されているという。

「他の産業からの二酸化炭素を回収できることを考えれば、当社のタンパク質原料は栄養価が高く、柔軟性があり、倫理的にも大きなメリットがあります」とMcLellan氏が述べる通り、同社タンパク質はこれまでよりも負荷の少ない持続可能な方法で食糧を供給できる可能性を秘めている。

Jooulesが使用する具体的な微生物は不明だが、昨年11月の#NZENTREPRENEURの報道によると、誰も注力していない微生物株に基づき技術を開発しているという。また、極端な高温でも成長できる好熱性微生物を使用したタンパク質生産を目指していることをSCIONに語っている

二酸化炭素を原料にした食品開発

出典:Solar Foods

Foovoの認識では、Jooulesのように二酸化炭素を原料にタンパク質を開発する試みでは、ソーラーフーズが唯一、ヒト向けの食品用途で上市を実現している。ソーラーフーズは昨年6月、シンガポールで自社タンパク質・ソレインを使用したアイスクリームの限定販売を実現した

Jooulesの公式サイトによると、同社は用途としてヒト向けのタンパク質ペットフード水産飼料を想定している。B2Bで食品メーカーに向けたタンパク質供給を目指しているが、新規食品規制に該当するため、ペットフードや水産飼料から上市する可能性が高いだろう。

二酸化炭素を原料に食品を作る試みでは、脂肪を開発するGreen-OnCirceSavorなどさまざまな企業が登場している(微生物を使用しない例を含む)。食品に限定しなければ、双日、DIC、東レ、グリーンアース研究所などが、二酸化炭素と水素を原料とする水素細菌の開発とスケールアップによる実証試験でNEDOと契約を締結している

 

参考記事

Jooules Raises $1m To Produce Ingredients-Based Protein From Co2 Emission Streams

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Jooules

 

関連記事

  1. 韓国が培養肉の申請プロセスを明確に:培養肉企業の参入を促進
  2. 米Superbrewed Food、腸内細菌由来のタンパク質につ…
  3. 【現地レポ】シンガポールで培養ウズラ肉を実食|Vowの「Forg…
  4. イート・ジャストが中国上海に初の料理スタジオをオープン、中国市場…
  5. Fooditiveが精密発酵カゼインの工業生産の実現性を実証、欧…
  6. Motif FoodWorksが約249億円を調達、植物肉をアッ…
  7. 代替母乳のTurtleTree、カリフォルニアに研究施設開設を発…
  8. オーストリアのFermify、精密発酵カゼインで米国GRAS自己…

おすすめ記事

牛乳の全成分を含んだ培養ミルクを開発するカナダ企業Opalia

カナダ、モントリオールを拠点とするOpalia(オパリア)は、ウシ胎児血清(FB…

ひよこ豆タンパク質粉末を開発するChickPが約9億円を調達

ひよこ豆を原料にタンパク質粉末の開発に注力するイスラエル企業ChickPが、シリ…

オレオゲルで植物肉用の代替脂肪を開発するParagon Pureが約5.5億円を調達

アメリカ、ニュージャージー州を拠点とするParagon Pureは植物肉の味・風…

シンガポール企業Mycosortia、おからをアップサイクルした代替カカオを開発

食品残渣をアップサイクルするシンガポール企業Mycosortiaは今月、カカオ不…

代替シーフードのAqua Cultured Foods、スイスの小売大手ミグロとPoC契約を締結

代替シーフード企業Aqua Cultured Foodsは16日、スイスの小売大…

家庭生ゴミを鶏の飼料に変える米Millが開発したキッチンデバイス

アメリカのスタートアップ企業Millは、家庭で発生する食品廃棄物を鶏の飼料に変換…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

次回Foovoセミナーのご案内

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(04/02 14:55時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/02 00:41時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/02 04:36時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/01 20:52時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/02 13:01時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/01 23:55時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP