イスラエルの培養肉企業Believer Meats((旧称Future Meat Technologies)がアブダビでの培養肉生産能力と規制ルートの促進に向けて、アブダビで今月発足した新規食品・水産業を推進するクラスター、AGWA(AgriFood Growth & Water Abundance)との提携を発表した。
Believer Meatsがアブダビの新クラスターAGWAと提携
AGWAは、アブダビ皇太子兼アブダビ執行評議会議長であるSheikh Khaled bin Mohamed bin Zayed Al Nahyan閣下が今月上旬、承認し発足したばかりの新クラスター。
食料不足や水不足に対処するための世界的な取り組みで主導的な役割を果たすことを目指している。
AGWAは2045年までに1,280億ディルハム(約5兆5070億円)の投資を誘致し、60,000以上の雇用を創出、アブダビ経済に900億ディルハム(約3兆8720億円)をもたらすと予測されている。
Believer Meatsはアブダビでの培養肉の商用化活動を支援する拠点を同エリアに設立するほか、人材育成に特化したBeliever Meats Innovation Academyの設立も目指す。両者はアブダビでの培養肉製品の規制ルート、ハラール認証基準の確立でも協力する。
Believer Meatsがアブダビを拠点に研究開発、製品開発を行うことは、食料安全保障と水不足への取り組みで世界をリードするというAGWAの目標に合致する。
Believer Meatsにとっては、自社の技術が他の地域でも拡張可能かつ再現可能であるか実証する機会を得られることになる。AGWAとの提携は、持続可能で強靭な食料システムを世界規模で構築するというBeliever Meatsのビジョンに合致するものとなる。
提携の背景にあるUAEの国家戦略
アラブ首長国連邦(UAE)は2018年、「食料安全保障国家戦略2051(National Food Security Strategy 2051)」を発表し、2051年までにUAEを「世界の食料安全保障指数」で世界一にするとの目標を設定した。
UAEは野菜、肉、家禽、トマトなどの基本的食料の国内自給率を2025年までに70%、2030年までに100%に引き上げることを目指している。
その一環として、米AeroFarmsは研究開発用途では65,000平方フィート(約6030㎡)という世界最大の屋内垂直農場を2023年2月、アブダビに設置。開所式にはUAE気候変動・環境大臣も参加した。同施設にはアブダビ投資庁 (ADIO)も支援している。
Believer MeatsとAGWAの提携の背景にも、UAEの食料自給率向上に向けた国家戦略が関係しているのは明白だ。
ADIOのBadr Al-Olama局長はBeliever Meatsとの提携は、「最も優れたイノベーターを誘致する」という目標が実現したものだとコメント。
「アブダビに拠点を置くことで、Believer Meatsは培養肉の最高のイノベーションと製品を迅速かつ安全に地域全体に提供できるようになり、この地域の輸入食品への依存を根本的に変えることができます」とAl-Olama局長は述べている。
Believer Meatsは現在、ノースカロライナ州に「世界最大の」培養肉工場を建設中であり、年末までに稼働を予定している。稼働すると年間2600万ポンド(約11800トン)の生産能力を有するものとなる。同社は今月、ノースカロライナ州に設立されたベゾス持続可能タンパク質センターとの提携も発表した。
2024年6月の時点で培養肉の販売が認められた地域はシンガポール、アメリカ、イスラエルに限定され、販売が実現したのはシンガポール、アメリカのみとなる。詳細な販売・認可の状況はこちらから。
参考記事
AGWA and Believer Meats to Develop Cultivated Meat Capabilities in Abu Dhabi
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アイキャッチ画像の出典:Believer Meats/AGWA