代表的なマイコプロテインブランドのQuorn Foodsは先月、ハイブリッド製品市場への参入を発表した。
Quornといえば、1985年にイギリスで販売が認められ、今では世界20ヵ国で供給される世界的なマイコプロテインブランドだ(日本ではまだ販売されていない)。
同社はこれまで「肉を食べない選択肢を支援」してきたが、「肉摂取量を減らすことを支援」する方向へシフトする。
Quornがハイブリッド製品市場に参入
Quornはイギリスの公的医療サービスであるNHS病院を含むフードサービス業者に、ハイブリッド製品に使用するためにマイコプロテインを提供する。
製品の半分に動物肉、半分にマイコプロテインを使用した製品が年末までに発売される予定となる。Green queenの報道によると、提供される製品にはQuornのブランド表示はされず、マイコプロテインの使用が表示される。
Quornの親会社Marlow Foodsは昨年、マイコプロテインの原料部門としてMarlow Ingredientsを立ち上げた。ハイブリッド製品市場への参入は、マイコプロテインの供給量を増やすB2B戦略の一環であることは間違いないが、背景には売上低下もあるようだ。
Green queenの昨年の報道によると、Marlow Foodsはケンタッキー・フライドチキン(KFC)などでの販売により市場シェアを1.5%微増させた一方で、Quornの小売販売数は10.9%低下したという。
肉消費量を削減する新たな方法が早急に必要
オックスフォード大学の持続可能な食料システムに向けたプログラムLEAPの報告は、2008年から2019年の期間中のイギリスにおける肉摂取量は全体的に減少しているものの、「持続可能な食生活に沿った肉の消費目標を達成するには、この傾向を大幅に加速させる必要がある」と結論づけている。
Quornも発表の中で、サステナビリティと健康両方の側面から肉摂取量は減少しているが、「重要な影響をもたらす十分なスピード、規模で行われていないため、肉消費量を削減する新たな方法を早急に見つける必要がある」と言及。
同社のハイブリッド製品市場への参入は、速度と規模の面で、肉消費削減にもたらす影響力を最大化する狙いがある。
試行錯誤が続くハイブリッド製品
動物肉と非動物肉をブレンドするハイブリッド製品は代替肉業界で以前から販売されてきた。
タイソンフーズは2019年、ハイブリッド製品Raised & Rootedを発売。しかしハイブリッドバーガーへの消費者の反応はいまひとつだったため、2020年に生産を中止。2021年には100%植物由来の製品を発表し、現在も販売を続けている。
マイコプロテイン分野では、米Mush FoodsがQuornより先にハイブリッド戦略に着目した。
同社は菌糸体を使用して、動物肉の摂取量を半分にすることを想定した「50 Cut」を開発。同製品は今年1月にアメリカのレストラン向けに発売が発表され、先月にはニューヨークのレストランFIELDTRIPのメニューに使用されるなど導入が進んでいる。
中国の培養肉企業CellXも昨年、培養肉事業と並行して、培養肉を使用したハイブリッド製品向けに菌糸体由来タンパク質を製造する計画を発表した。
マイコプロテイン大手Quornの戦略シフトは、同じくマイコプロテイン企業と提携するカーギルにも影響を及ぼすかもしれない。カーギルは現在、乳製品で動物成分とエンドウ豆を使用するなどハイブリッド製品を展開している。カーギルは今年マイコプロテインのENOUGHと提携を拡大していることから、肉分野でもハイブリッド製品へ参入するかもしれない。
参考記事
Quorn’s Mycoprotein to Be Blended with Animal Pork and Served in NHS Hospitals
Quorn CEO on Blended Meat: ‘It Doesn’t Matter How People Join the Meat Reduction Journey’
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アイキャッチ画像の出典:Quorn