精密発酵で卵白タンパク質を開発するフィンランドのOnego Bioが新たに1,400万ユーロ(約24億円)を調達した。
今回の資金調達の一部は、欧州イノベーション会議(EIC)が昨年発表したアクセラレータープログラムによるもの。
今年1回目の選考として、Onego Bioのほか、スウェーデンのMelt&Marble、オランダのNoPalm Ingredientsも選出された。
破壊的影響の技術革新を対象としたEUプログラムに採択
EICは昨年12月、精密発酵や藻類由来の食品生産を支援するため、スタートアップ企業などに5,000万ユーロの資金提供を行う「Work Programme 2024」を発表した。
同プログラムは今年1月から募集を開始。審査は1次選考、2次選考の2段階制で、2次選考の締切は3月、10月と年2回。3月に2次選考に進んだ企業からこのほど68社が選出された。
EICアクセラレーターは、精密発酵・藻類由来の食品のほか、生成AI、インダストリー5.0、再生可能エネルギーなど6分野を指定。精密発酵・藻類由来食品の募集要項には、「既存の市場に破壊的な影響を与える可能性のある急進的な技術革新の支援を視野にいれている」と明記。生物多様性の損失や汚染など、気候変動や環境に関連する課題に対処するには有効な代替手段が不可欠だと述べられている。
EICプログラムには969社から応募があり、資金提供を受けたのは68社。
土壌や環境条件から食料生産を切り離す精密発酵企業としてOnego Bioのほか、動物脂肪を開発するMelt&Marble、代替パーム油を開発するNoPalm Ingredientsが選出された。
共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のMaija Itkonen氏は、Onego Bioが選ばれた背景について、「EUが精密発酵を持続可能性の課題に対処し、欧州・世界中で食糧安全保障を強化するソリューションとして認識している表れ」だと述べている。
年内にFDAへGRAS通知の提出へ
Onego Bioが開発するのは、主要な卵白タンパク質であるオボアルブミン「Bioalbumen」。遺伝子組換えした微生物を生産工場として使用し、動物由来と生物学的に同等なオボアルブミンを開発している。「Bioalbumen」はタンパク質を90%以上含み、タンパク質の消化性や利用性を判断するPDCAAS(たんぱく質消化性補正アミノ酸スコア)は卵白と同等の1となる。
精密発酵による卵白タンパク質では、世界で唯一認可を取得しているのが米The EVERY Companyだ。先月、新商品として同社タンパク質を使用したプロテイン粉末製品「FERMY」がアメリカで発売された。
Onego Bioは今年、アメリカ食品医薬品局(FDA)にGRAS通知を提出し、来年にはFDAから「質問なし」のレターを受け取れると見込んでいる。これが実現すると、EVERYに続き、Onego Bioの「Bioalbumen」が上市されることになる。
Onego Bioは今年4月にシリーズAラウンドに進み、4000万ドル(当時約61億円)を調達した。今回の調達により、調達総額は6,500万ユーロ(約111億円)となった。
カリフォルニア州サンディエゴを商業拠点とする同社は、共同製造業者と「Bioalbumen」を製造しながら、自社の最初の製造ユニット計画を最終調整している。本格稼働すると、製造ユニット1基で200万Lの発酵規模となり、600万羽の鶏が生産するのに相当するタンパク質を供給できるという。
アメリカとは対照的に、欧州では精密発酵食品はまだ法整備が整っていない。Itkonen氏はプレスリリースで、「競争力を維持し、欧州の卓越した研究とイノベーションの可能性を十分に活用するためには、当局の承認プロセスを加速させる必要がありますが、EUはこの分野で他の地域に遅れをとっています」と指摘している。
今回EICから調達した資金で、EUでの市場参入計画も進めていきたいと考えている。
参考記事
Onego Bio Secures €14M / $15.2M New Funding to Advance Animal-Free Egg Protein Production
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アイキャッチ画像の出典:Onego Bio