フランスの精密発酵企業Bon Vivantは今月、精密発酵で生成したβ-ラクトグロブリン(ホエイの1種)についてアメリカでGRAS自己認証を取得したことを発表した。
同社はアメリカでβ-ラクトグロブリンの商品化の準備を進めるとともに、安全性のお墨付きとなるGRAS認証に向けて、アメリカ医薬品食品局(FDA)にGRAS通知を提出したことも発表した。
Bon Vivant、精密発酵ホエイでGRAS自己認証を取得
精密発酵でホエイ、カゼインを開発するBon Vivantは、昨年、ライフサイクルアセスメント(LCA)に関する欧州初の査読済み論文を発表。
これによると、同社ホエイの生産では従来の乳タンパク質生産と比較して、温室効果ガス排出量を72%、水使用量を81%、土地利用を99%削減できることが示されている。
Bon Vivantは、「β-ラクトグロブリンを2つの異なる形態で提供する初の精密発酵企業」だと述べており、これにより栄養価を完全に保持しながら、多様な食品用途に向けて独自の機能特性を提供できるとしている。
アメリカでは2024年、イスラエルのImagindairyがGRAS認証、オランダのVivici、デンマークの21st.BIOが精密発酵ホエイでGRAS自己認証を取得した。
Foovoの調査では、GRAS自己認証に到達している企業が増える一方で、アメリカで乳タンパク質の上市を実現した精密発酵企業はパーフェクトデイ、Remilkの2社に限られている(自社で原料を開発している企業のみを対象)。
Bon Vivantの今回の発表は、この領域で奮闘するスタートアップ各社には明るい兆しとなるが、懸念材料もある。
海外メディアGreen queenは、間もなく発足するトランプ新政権で保健省長官に指名予定のロバート・F・ケネディ氏が就任した場合、FDA内の一部部署が解体される可能性があると報じており、これが精密発酵企業にとって逆風となる可能性に言及している。
GRAS自己認証により各社、販売はできるものの、多くの企業が信頼性を確保するために、次のステップであるGRAS認証の取得を目指している。この点で、トランプ新政権発足前にGRAS認証を取得できた企業と、これからGRAS認証を目指す企業とで、市場投入に開きが生じる可能性は否めない。
アメリカの認証状況を時系列に振り替える
しかし、この領域が引き続き注目を集めるのは間違いないだろう。下記のように、これまでのアメリカにおける精密発酵企業の認証の流れを振り返ると、2025年に入り、認証ラッシュ直前の様相を呈していることが見て取れる。
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アイキャッチ画像の出典:Bon Vivant