Foovo Deep

CO₂を使用した脂肪開発の動向|米Savorのバター発売とGreen-Onの大手提携事例

 

二酸化炭素、水素、酸素、熱を使用して、動植物を介さず脂肪を合成する独自技術を確立した米Savorは、今春ついに代替バターの商用販売を発表した

4月にはサンフランシスコとニューヨークのレストランで「Savorバター」を使用した黒トリュフワッフルやステーキ、シュペッツレなど多彩な料理を提供したと発表。

同製品は乳糖フリーで発煙点が通常のバターより高く、試食会に出席したスタンフォード大学サステナブル・ソリューションズ・ラボの所長Steve Davis氏は「これまで食べた中で最もバターらしい味わい」と高く評価した

プレスリリースによると、年内にSingleThreadONE65などのレストランや、Jane the Bakeryなどのベーカリーに導入される予定となる。

旧油脂工場を再利用したパイロット工場「SavorWorks 1」

出典:Savor

商用展開を支える生産拠点が、Savorが「エネルギーの街」で知られるイリノイ州バタビアに昨年稼働したパイロット工場「SavorWorks1」だ。

25,000平方フィート(約2322㎡)の旧油脂工場を数か月で改装して完成させた同施設は、2025年半ばまでに生産能力は週100kgの脂肪生産能力に到達する予定で、すでにパートナー企業向けに特注の脂肪を製造している。2027年以降を目途に商用工場の立ち上げ計画も進めている

現在はパーム油、乳脂肪、ココアバター代替に注力する一方、ラードや牛脂、各種植物油脂などにも対応できる設備を備える。また、現在は100%合成脂肪酸を製造しているが、合成脂肪酸と植物由来脂肪酸から構成されるハイブリッド脂肪酸の開発にも取り組んでいる

化学合成という選択肢がもたらす環境インパクト

出典:Savor

同社の歩みは、化石燃料をエネルギー源にした牛肉、ジャガイモなどの食品を食べる代わりに、化石燃料を直接食品に変換すれば、環境負荷をより減らせるのではないか、という問いから始まった

Savorのプロセスは微生物を使わない点でソーラーフーズなどの二酸化炭素活用技術と一線を画す。

二酸化炭素、水素、酸素を使用した熱化学プロセスで脂肪を製造できるため、油糧作物の大規模栽培に比べ、土地・水使用量を削減可能であると同時に、理論的には地球上のどこでも製造できる。実際、ブラジルやインドネシア産パーム油の温室効果ガス排出量が二酸化炭素換算で1.5g/kcalを超えるのに対し、化学合成脂肪は二酸化炭素換算で0.8g/kcal未満との試算が論文「Food without agriculture」で示されている

プレスリリースによると、Savorは自社バターについてGRAS自己認証を取得済みであり、サンフランシスコ・ベイエリアのレストランやベーカリーと提携している。また、大手消費財メーカーと共同開発契約の交渉も進めている。

二酸化炭素から脂肪を作る北欧発のGreen-On

出典:Green-On

ここから先は有料会員限定となります。

読まれたい方はこちらのページから会員登録をお願いします。

すでに登録されている方はこちらのページからログインしてください。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Savor

 

関連記事

  1. 菌糸体肉の米Meati Foodsが約155億円を調達、6000…
  2. BlueNalu、培養マグロの米国先行上市を目指す|Nomad …
  3. Oishii Farmが進める植物工場のパッケージ化|年内に国内…
  4. GOOD Meatが培養肉生産に無血清培地を使用する認可をシンガ…
  5. イスラエル・イノベーション庁が精密発酵の施設設立へ
  6. Redefine Meatが70のレストランと新規パートナーシッ…
  7. チョコレート会社創業者が立ち上げたNukoko、そら豆由来のカカ…
  8. 再生医療学会・培養肉シンポジウムレポート|再生医療研究者が「培養…

おすすめ記事

イート・ジャストの代替卵JUST EggがEU当局の認可を取得

植物由来の代替卵を開発するアメリカのスタートアップ企業イート・ジャストは、主力製…

EUから出資を受けるドイツの微細藻類スタートアップQuazy Foodsが約1.3億円を調達

ドイツ、ベルリンを拠点とする微細藻類スタートアップのQuazy Foods(旧称…

オランダのEatch、1日最大5000食を調理できるロボットキッチンを開発

ロボットキッチンを開発するオランダ企業Eatchは、1日に最大5,000食を調理…

Doehlerが代替パーム油を生産する英Clean Food Groupと提携

酵母を活用して代替パーム油を開発するClean Food Groupは今月、ドイ…

オランダの研究チーム、バナナの2大病害に抵抗性を持つ新品種「Yelloway One」を開発

オランダ、ワーゲニンゲンを拠点とする作物育種企業KeyGeneが主導する研究チー…

JACA、培養肉など細胞性食品のリスク評価案を消費者庁に提出|行政審議が進む中、「共通の専門知見」形成を後押し

Vowの培養ウズラ(2024年4月 Foovo佐藤撮影)培養肉など細胞性食品の制度整備に向けた動…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(09/03 15:49時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/03 02:04時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(09/03 05:47時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(09/02 21:49時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(09/03 13:44時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(09/03 01:04時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP