出典:Mara Renewables
カナダの微細藻類スタートアップのMara Renewablesは先月、S2G Investmentsから910万ドル(約13億円)の出資を受けた。
プレスリリースによると、Maraは、微細藻類を培養するクローズドループ型の生産システムを構築しており、遺伝子組換え生物や溶剤を使用せずに「一貫性のある高品質なオメガ3脂肪酸」を製造している。
今回の発表は、Maraが2024年6月にマルハニチロと締結した、藻類由来DHAの日本市場向け独占供給契約に続くものとなる。
オメガ3脂肪酸は、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を含む必須脂肪酸であり、体内でほとんど合成できないため、日々の食事やサプリメントからの摂取が必要とされる。
しかし、適切な量のオメガ3を摂取しているのは世界人口のわずか約19%にすぎず、現在流通しているオメガ3の多くは魚油由来となる。魚に依存したオメガ供給は、海洋生態系への負荷が大きく、持続可能性の観点から課題となっている。
欧米で認められたMaraの微細藻類由来オメガ3

出典:Mara Renewables
プレスリリースによると、オメガ3脂肪酸の含有量は天然由来であるゆえにばらつきがあり、製品設計上の課題となっているという。魚由来の風味が消費者に敬遠される要因ともなり、オメガ3を日常的な食品へ組み込むうえでの障壁にもなっている。需要が高まるなか、風味や安定性に優れ、サプリメント、食品、飲料に違和感なく組み込めるスケーラブルな代替オメガ3の必要性が一層明確になってきている。
Maraの藻類油は乳幼児向け製品やサプリメント、機能性食品、動物・水産飼料用途に対して、オイル、濃縮物、ソフトジェル、粉末など多様な形態で提供されている。食品用途では、2020年にアメリカでFDAよりGRAS認証を取得しており、欧州では乳幼児調製粉乳への使用が認められている。
FDAの公開情報(FDA GRAS Notice No. GRN 000913)によると、Maraは非遺伝子組換えの微細藻類Schizochytrium limacinum G3(後にAurantiochytrium limacinum G3に分類)をデキストロースや大豆ペプトン、酵母エキスなどから構成される培地で培養している。その後、藻類の細胞壁を酵素的に破壊し、遠心分離を施して油脂を抽出している。
2024年だけで、オメガ3のサプライチェーンから推定約67億匹のアンチョビを相殺したとされる。S2GはMaraに投資した理由として「生物学的に複雑で資源集約的なサプライチェーンを、海洋生態系を保全しながら必須栄養素を届ける、藻類ベースのプラットフォームへと集約する能力」を挙げている。
海洋細菌や微細藻類など多様な代替オメガ3開発

出典:Mara Renewables
魚油に依存しないオメガ3の開発は、Mara以外にも複数の企業が取り組んでいる。
オーストラリアのBiomeMegaは、海洋細菌を用いた精密発酵により、オメガ3の開発に取り組んでおり、2027年の上市を目指している。
オランダのVeramarisは、魚やエビの飼料用としてASC-MSC認証を受けた藻類油を通じて、EPAとDHAの供給源を提供することを目指している。同社は2024年に初めてフル稼働を達成し、藻類油の生産量が61%増加した一方で、温室効果ガス排出量を2021年比で5.6%削減したと発表した。
オランダのスーパー大手Albert Heijnとも連携し、同スーパーで販売するエビの配合飼料にも採用されている。
アイスランドのVAXA Technologiesは、地熱エネルギーとCO₂を活用して微細藻類ナンノクロロプシスを生産しており、2022年11月にDICが同社の水産養殖用飼料の国内販売を開始した。
国内では先月、ナンノクロロプシス由来の油脂、オメガ3、タンパク質成分を生産するファイトリピッド・テクノロジーズが2億2,000万円のシード資金を調達し、自社培養施設の設置計画を進めている。
こうした動きから、魚油に依存せず、持続可能で高機能なオメガ3の供給を目指す取り組みは、今後ますます加速していくと考えられる。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Mara Renewables