出典:The Rice Creamery/Kinish
日本発のフードテック企業Kinishが、米を原料とした植物性アイスクリームの販売を開始した。
「The Rice Creamery(ザ・ライスクリーマリー)」は、牛乳を使わずに米を主役としたライスアイスブランド。2025年8月6日より都内スーパーマーケット、東急ストア・都立大学店での店舗販売、および成城石井オンラインショップでの先行販売を開始した。
今後は順次取り扱い店舗を拡大し、コンビニ導入・全国展開も予定。年内には米ワシントンDCでの発売も計画している。
Kinishは2023年に橋詰寛也氏が創業。米を活用した植物性アイスクリームの開発に加え、牛乳タンパク質を生成する特殊なイネ品種の開発も進めている。
後者は「植物分子農業」と呼ばれるもので、カゼイン(牛乳タンパク質の一種)を生成する高さ20cmのイネ品種を開発し、これを植物工場で大量生産することで、畜産を必要とせず、環境負荷を大幅に軽減した持続可能な乳タンパク質の提供を目指している。

出典:The Rice Creamery/Kinish
今回発売されたのは、先行して開発を進めてきた植物性アイスクリーム。この発表は2月の1億2,000万円のシード資金調達に続くもので、創業から約2年半、正式販売が実現した。
「The Rice Creamery」は、「穂の華(ほのか)」、「匠・宇治抹茶」、「芳醇オランダチョコ」の3フレーバーで、国内産のコメを主原料に、カシューナッツペースト、砂糖などを使用。米蜜などで親しまれてきた米由来の自然な甘みをいかし、ライスシロップをベースに開発。砂糖使用量は60%削減されている。
プレスリリースによると、試食会や展示会では、「しっかり濃厚なのに後味が心地よい」、「満足感のある美味しさ」と高く評価された。牛乳使用アイスに比べ温室効果ガス排出量を62%削減できたという。

出典:The Rice Creamery/Kinish
植物分子農業で乳タンパク質のカゼインを開発する企業は世界でも複数確認されている。
たとえば、米Alpine Bio(旧Nobell Foods)は分子農業でカゼインを開発しており、2025年に試食会を予定している。
同じく米Mozza Foodsは、大豆からカゼインミセルを開発しており、昨年のFoovoによるインタビューでは、カゼイン生成大豆についてUSDA-APHISに対する規制ステータス評価(RSR)申請を完了していると述べた。
イスラエルのFinally Foodsはジャガイモからカゼイン開発に取り組んでおり、イスラエル南部でまもなく遺伝子組換えジャガイモの圃場試験(ほじょう試験)を開始する。
(植物分子農業でカゼインを開発するプレーヤー一覧図はこちらの記事から)
しかし、Foovoの調査では、植物性アイスで先に市場参入しつつ、長期的に分子農業による本物のカゼイン実用化を見据える事業モデルは、世界でもKinishが唯一とみられ、同社の大きな特徴といえる。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:The Rice Creamery/Kinish