2021年になってから、イスラエル発の培養肉企業・植物肉企業のニュースが続ている。
特に培養肉については、この2ヵ月で培養肉各社に対する資金調達が加熱しており、すでに11社を超えている。
そこで、代替肉業界のなかで近年特に技術の発展が目覚ましいイスラエルを拠点とする代替肉企業6社の概要をまとめてみた。
最新の情報は下記記事を参照▼
アレフファームズ(培養肉/3Dプリンター)
2017年設立。
3Dプリンターで培養肉を開発するスタートアップ企業。
最初に培養ステーキ肉を開発したのは2018年。2019年にはロシア企業と協業して宇宙でステーキ肉の製造に成功している。
カーギル、イスラエル最大の食品会社ストロースから出資を受けている。
2021年になってからニュースが続いており、先月にはバイオ3Dプリンティング技術による世界初のリブロース(リブアイ)ステーキ肉の開発を発表して話題を呼んだ
日本の三菱商事、ブラジルのBRFと提携を発表。2022年にアジアで培養肉を販売予定。
2020年にはイスラエルのネタニヤフ首相がアレフファームズの培養肉を試食した。
既存産業と手を組むことで、既存の食肉システムに培養肉を溶け込ませようとしているほか、宇宙で培養肉を生産する計画「Alepha Zero」を発表している。
「サハラ砂漠や南極大陸などの僻地でも、誰もが、いつでも、どこでも条件なしで高品質な栄養を手に入れられる」ことを理念としている。
予想される今後の展開
2022年に日本を含むアジアのいずれかの国で培養肉を販売する予定。
総調達額
1440万ドル
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MeaTech(培養肉/3Dプリンター)
3Dプリンターで培養肉を開発するスタートアップ企業。
2019年にはテルアビブ証券取引所に上場し、世界で最初に上場した培養肉企業となった。
2020年12月に3Dプリンターによる厚さ10mmの脂肪作製に成功している。
同月にはベルギーの培養脂肪スタートアップPeace of Meatを買収した。買収時に植物肉と培養脂肪のハイブリット肉を早くて2022年に市場へ出すと公表していた。
長期的にはレストランやスーパー向けの商品ではなく、B2Bのビジネスモデル戦略を主眼としている。
3Dプリンティングを組み合わせた培養肉製造プロセスで他社とライセンス契約を結び、他社が培養肉を作れるようサポートする。
CEOを務めるSharon Fima氏は3Dプリンター用の微小工学インクを開発するナノ・ディメンションの共同創業者であり、CTOを務めていた人物。
2021年2月には米国証券取引委員会(SEC)にIPOを申請。調達額は2900万ドルになる見通し。
予想される今後の展開
米国上場(⇒2021/3/12にNasdaq上場)
総調達額
900万ドル
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Future Meat(培養肉)
2018年設立。
培養肉産業の川上を狙うスタートアップ企業。
タイソンフーズから出資を受けており、培養肉とハイブリッド培養肉を開発している。
多くの培養肉企業と違い、幹細胞ではなく線維芽細胞を使用。
2021年2月に、培養ハイブリッド鶏肉の生産コストを1/4ポンド(約113g)あたり7.5ドル(約780円)まで削減したことを発表した。
今年前半にパイロット工場の稼働を開始し、1年半以内に商品を市場投入する予定であることも公表している。
長期的には、自分たちで作って販売するのではなく、培養肉を作るための設備、技術、原料を食肉業者に販売したいと考えている。
つまり、培養肉生産に必要なすべてをサービスの形で提供する、まさに「Cultured meat as a Service」ともいえる戦略を構想している。
予想される今後の展開
2022年に製品を市場へ投入
2023年に培養肉生産プラットフォームを企業へリリース
総調達額
4300万ドル
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スーパーミート(培養肉)
2015年設立。
テルアビブに世界初となる培養肉の試食に特化したレストラン「The Chiken」をオープンした。
このレストランでは、招待された顧客は培養肉の試作品を無料で食べられるほか、店内から培養肉が作られるまでの製造プロセスを見学できる。
The Chikenに招待された顧客に工場見学・食事を同時に体験する機会を提供することで、自社の培養肉がクリーンで透明性であることをアピールする狙いもある。
予想される今後の展開
2022年頃にレストランで正式販売
総調達額
420万ドル
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SavorEat(植物肉/3Dプリンター)
2018年設立。
植物性代替肉を開発している。
植物性代替肉企業として初めてテルアビブ証券取引所に上場した企業。
3Dプリンターを活用し、6分で調理済みの代替肉パテを開発している。
製造プロセスは、1層プリントしたら、1層を焼き上げる。次いで1層をプリントし、1層を調理する。このくり返しで、調理済みの代替肉ができあがる。
大衆に一律に提供される「マス」をターゲットとしたものではなく、食事制限、ライフスタイル、疾患による食事条件など、ひとりひとりの事情に合わせて個別化された料理を可能とする。
代替パテのほかに、チキンブレスト、ステーキ、シャワルマ(中東の包んだ肉料理)、ケバブ、ひき肉、水産物も開発予定でいる。
予想される今後の展開
今年夏までにイスラエルのハンバーガーチェーンBurgus Burger Barで試験運用を開始予定。
3Dプリンターと材料両方をレストランへ販売予定。
総調達額
1790万ドル
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Redefine Meat(植物肉/3Dプリンター)
3Dプリンターで植物性代替肉を開発するスタートアップ。
Redefine Meatの3Dプリンターは3つのノズルを有し、Alt-Muscle、Alt-Fat、Alt-Bloodという3つの「フードインク」を複数のノズルが同時に出力することで、味だけでなく、食感もそっくりな代替ステーキを作り出している。
Redefine Meat の3Dプリンターは1時間に50個のステーキ肉を生産できる。
今年中に次世代型3Dプリンターをリリースし、1時間あたりの生産能力を44ポンド(約20kg)まで高めたいとしていている。
2021年1月にイスラエルの食肉販売会社Best Meisterとの戦略的パートナーシップを発表。
今年前半に、イスラエルのレストランや高級肉専門店などで販売される。1月に実施した試食会は5時間で売り切れとなった。
今年中に3Dプリンターとカートリッジを世界中の食肉販売業者に販売予定であり、肉の生産プラットフォームを動物肉の販売業者への提供を考えている点では、Future MeatやMeat-Techと戦略がにている。
予想される今後の展開
今年前半にイスラエルのレストランなどで植物性代替肉を販売予定。
3Dプリンターとカートリッジを世界中の食肉販売業者に販売予定。
総調達額
3500万ドル
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アイキャッチ画像の出典:Redefine Meat