代替プロテイン

微生物発酵で脂肪を開発するNourish Ingredientsが初ラウンドで約12億円を調達

 

オーストラリアのスタートアップ企業Nourish Ingredients初のラウンドで1100万ドル(約12億円)の資金調達に成功した。

Nourish Ingredientsは動物を使わずに動物性脂肪の分子構造を再現する発酵技術と酵母を開発した。

これにより、動物と同じ脂肪を作ることができる。

出典:Nourish Ingredients

植物性原料から作られる代替肉は、キャノーラ油、ひまわり油、ココナッツオイル、パーム油などを使用しているが、植物油脂は風味の点で動物性脂肪に劣るだけでなく、植物油脂によっては、森林伐採や労働問題の側面から持続可能性が問題視されている。

Nourish Ingredientsは動物を使わずに脂肪を作るだけでなく、水産物、豚、牛、鶏など対象となる植物性タンパク質の種類ごとに、異なる風味、食感の模倣が可能だという。

同社ホームページには、作れるオプションは「無限」だと書かれている。

急成長分野の1つ、微生物発酵

出典:Nourish Ingredients

微生物発酵は代替タンパク質の第3の柱と言われ、植物性タンパク質、培養肉とともに近年注目されている。

GFIの報告によると、2020年に発酵タンパク質に集中した投資額は5億9000万ドルで、2019年の2倍以上になっている。

発酵タンパク質のスタートアップは過去2年で急速に増えており、微生物発酵による代替タンパク質開発に取り組む企業は2020年半ばまでに2018年の23社から44社に増えている

出典:GFI

すでにアニマルフリーのチーズパテハチミツアイスクリームに取り組む企業が登場している。

微生物発酵による代替タンパク質は、畜産と比べて使用する土地と水が少なく、排出される温室効果ガスも少ない。動物や熱帯雨林に害を与えることなく、脂肪を効率的に生産できる。

Nourish Ingredientsによると、同社の油脂は既存の食用油脂と同価格を実現しており、コストの問題はすでに解決されている。

植物性代替肉の「欠点」とされる風味、肉らしさを解決するために、Nourish Ingredientsのように油脂の開発に取り組む企業はほかにもいる。

イギリスのHoxton Farmsもその1つで、動物から脂肪細胞を採取し、培養して動物性脂肪を開発している。二酸化炭素と電気から油脂の開発に取り組むスウェーデンの研究者もいる。

2023年までに植物性タンパク質の味、食感、価格は畜産肉に匹敵

Boston Consulting Group(BCG)とBlue Horizo​​n Corporation(BHC)の最新のレポートによると、代替タンパク質市場は2035年までに2900億ドル規模に達すると予想される。

代替タンパク質は味、食感、価格の3点で動物性タンパク質と同等レベルに達する必要があることを報告書は指摘している。

さらに、植物性タンパク質、発酵タンパク質、培養タンパク質は、現在はまだ畜産由来のタンパク質と異なるフェーズにあると指摘。

そのうえで、植物性タンパク質は2023年まで、菌類、酵母、藻類などの微生物由来の代替タンパク質は2025年まで、培養タンパク質は2032年までに3つの要素で畜産肉に匹敵すると予想している。

出典:

独自の繊維構造を植物性原料で再現するアプローチAIを活用して研究開発を短縮するアプローチなど、フードテック領域では既存技術を融合してさまざまなイノベーションが図られている。

Nourish IngredientsHoxton Farmsなどの商品が商用化されれば、上記報告書の予想の実現に寄与するだろう。

今回の初ラウンドは香港の大富豪李嘉誠氏が率いる香港のベンチャーキャピタルHorizons Ventures、オーストラリアの国立科学機関が設立した投資会社Main Sequence Venturesが主導した。

 

参考記事

Nourish Ingredients Raises $11M for Fermented Plant-Based Fats

While other startups develop alt-proteins for meat replacement, Nourish Ingredients focuses on fat

 

 

関連記事

  1. オーストラリア政府がChange Foodsに約1.2億円の助成…
  2. プラスチック使用削減のために食用スプーンを開発したIncrEDI…
  3. Remilk、イスラエルで精密発酵タンパク質の認可取得が間近
  4. ネクストミーツが代替肉でアメリカ市場に本格進出、代替ミルクの国内…
  5. アレフ・ファームズがアジアへの培養肉導入加速に向けてタイ・ユニオ…
  6. 米イート・ジャスト、年内または2022年に30億ドルのIPOを目…
  7. 米New Cultureが精密発酵カゼインのスケールアップに成功…
  8. 歴史ある伊食肉メーカーGruppo Tonazzo、食肉事業から…

おすすめ記事

米Omeatがロサンゼルスで培養肉のパイロット工場を開設

ロサンゼルスを拠点とする培養肉企業Omeatは今月、パイロット工場の完成、開設を…

米Mozza Foods、大豆による植物分子農業で味・品質に妥協しない代替乳製品の開発へ【創業者インタビュー】

動物に依存しない乳タンパク質を開発する取り組みはすでに世界的に展開されている。…

Moolec Science、豚タンパク質を作る大豆「Piggy Sooy」で米国農務省の承認を取得

2024年10月18日追記これまでの動きから、YEEAプロジェクトは高い可能性で精密発酵に関…

フランス・パリにPazziによるピザロボットレストランがオープン!

フランスを拠点とする食品スタートアップのPazziが、フランス、パリにピザロボッ…

イート・ジャストが中国ファンドから約34億円を調達、代替卵JUST Eggで高級鶏卵と同等価格を実現

代替卵と培養肉を手掛ける米フードテック企業イート・ジャストが中国のプライベート・…

Farmless、二酸化炭素によるタンパク質生産に向けて約1.8億円を調達

オランダのフードテック企業Farmlessは今月、プレシードラウンドで120万ユ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoセミナー開催のお知らせ

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/17 14:27時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/18 00:10時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/18 03:58時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(01/17 20:26時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/18 12:39時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(01/17 23:23時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP