代替プロテイン

培養肉企業メンフィス・ミーツが社名をUPSIDE Foodsに変更、年内に培養鶏肉の販売を目指す

 

世界で最初に培養肉バーガーを発表し、話題を呼んだオランダ企業モサミートとあわせて報じられる培養肉企業といえばメンフィス・ミーツ(Memphis Meats)。

そのメンフィスミーツがUPSIDE Foodsに社名変更することを発表した。

心臓医のキャリアを手放して設立された培養肉企業

UPSIDE Foodsは2015年に設立されたアメリカ、サンフランシスコを拠点とするスタートアップ。

共同創業者のウマ・バレティ氏(Uma Valeti)は心臓医として華々しい実績を重ねる一方で、少年時代から感じていた肉の消費のありかたに対する危機感を拭い去れずにいた。

アメリカ心臓病学会など多くの全国組織のリーダーを務め、心臓医としての成功も目前にあったバレティは、自身のキャリアを捨て、起業家として食肉業界の悪影響に終止符を打つ重大な決定を下す。

共同創業者のウマ・バレティ氏 出典:UPSIDE Foods

こうして誕生したUPSIDE Foodsは、食肉加工大手タイソンフーズソフトバンクカーギルなど名だたる企業から出資を受けている培養肉の老舗企業である。

UPSIDE Foodsは他社同様、動物から採取した細胞を培養、成長させて培養肉を開発する。

これまで鶏肉、シーフード、鴨肉、ミートボールなどさまざまな製品開発に取り組んできたが、今回のプレスリリースで最初の商品として鶏肉をリリースすることを発表した。

さらに、承認がおりれば年内に培養鶏肉を販売することも明らかにした。

最初の販売する製品を鶏肉にした理由については、世界中の消費者に食べられていることと、さまざまな地域の料理に多様な形で使われていることをあげている。

出典:UPSIDE Foods

培養肉を大量生産するために、UPSIDE Foodsはサンフランシスコベイエリアのパイロット工場建設に着手している。

プレスリリースによると、培養肉用に設置されるこの工場では「培養肉の生産、包装、出荷を業界のどの会社よりも大規模に実施」する。

食肉の需要は今後30年で2倍に増えることから、従来の食肉生産で高まる需要にこたえるのは持続可能ではないと指摘している。

最初の製品・培養鶏肉を年内に販売へ

UPSIDE Foodsはモサミートより早くに生産コストを削減したことで知られる。

2016年に世界初の培養ビーフミートボール、2017年に世界初の培養鶏肉と培養鴨肉を発表、2020年1月にはシリーズBで1億6100万ドル(約176億円)という巨額の資金調達に成功と、数々のブレイクスルーを生み出してきた。

出典:UPSIDE Foods

しかし、UPSIDE Foodsはこれまで具体的なタイムラインについてコメントすることはなかった。

商用化のスケジュールについてコメントを控える理由として、おいしい培養肉を大量生産できると確信できるまで待ちたかったことと、当局の承認をあげていた。

現在はまだ「規制当局による審査待ち」ではあるが、リニューアルされた公式サイトには「2021年末までに最初の製品を供給すること」と明記している。

アメリカを最初のマーケット」にしているが、最終的には海外進出を狙っている。

培養肉の加速を4つの側面から分析

出典:UPSIDE Foods

培養肉が次のフェーズに突入しているのは、許認可資金調達パイロット工場コストダウンの4点からうかがうことができる。

許認可については、アメリカのイート・ジャストが昨年12月にシンガポールのレストランで培養鶏肉を販売した。

これにより、シンガポールが世界で最初に培養肉の販売を許可した国となった。この4月にはフードパンダと提携して、シンガポールで培養鶏肉を使った弁当のデリバリーも実施している。

資金調達については、今年になってからは培養肉企業への投資が集中しており、すでに18社以上が出資を受けている。そのなかにはイート・ジャストMeatableMissionBarnsNew Age MeatHoxton Farmsなどがいる。

パイロット工場については、UPSIDE Foods のほかにAvant MeatMeaTechBlueNaluなどのプレーヤーもパイロット工場建設を今年発表し、自社の培養肉製品の大量生産に向けて動き出している。

最後のコストダウンについては、イスラエルのFuture Meatが先日、110gあたりの培養鶏肉の生産コストを4ドルまで削減したことを発表した。同社は今後1年半以内にさらに2ドルまでコストダウンできるとコメントしている。

シンガポールで宅配されたイート・ジャストの培養鶏肉弁当 出典:イート・ジャスト

培養肉は従来の畜産肉と比較して、使用する土地、水ははるかに少なくすむほか、培養肉の生産では排出される温室効果ガスを92%減らせることが報告されている。

家畜のための農業用地を確保するための森林伐採も不要となる。集約畜産、飼育過程での抗生物質の乱用、感染症による大量の殺処分という現状を変える選択肢になりうる。

UPSIDE Foods創業者のバレティ氏が少年時代にインドで目撃したような集約畜産と屠殺は、培養肉の普及によって減らす、あるいはなくすことができる。

UPSIDE Foodsはタイソンフーズ、ソフトバンク、カーギル、ビル・ゲイツ氏、テマセクなどから出資を受けているが、今回新たにホール・フーズのCEOJohn Mackey氏が加わった

これまでの調達総額は1億8110万ドルとなる。  

 

参考記事・本

▼UPSIDE Foods(前メンフィス・ミーツ)の創業ストーリーがわかる本

クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
Amazonの情報を掲載しています

Food Innovation Leader Memphis Meats is Now UPSIDE Foods and Officially Announces Chicken as its First Consumer Product

Memphis Meats Re-Brands as UPSIDE Foods, Announces Cultured Chicken as its First Product

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:UPSIDE Foods

 

関連記事

  1. シンガポールが「30 by 30」目標を変更──2035年までに…
  2. 米Oobliが精密発酵による甘味タンパク質ブラゼインでGRAS認…
  3. 精密発酵でカゼインを開発するタイのMuu、来年の商用生産を目指す…
  4. スイスのCosaic、クリーミーさと安定性を実現する酵母由来エマ…
  5. 小売で流通する細胞性食品―シンガポール・フードテック実食レポート…
  6. 代替マグロ開発中の米フードテックKuleana、年内に全米へ代替…
  7. 精密発酵のコスト低下は段階的に起こる—GFI Adam Lema…
  8. イート・ジャストの代替卵JUST EggがEU当局の認可を取得

おすすめ記事

Meatable、初の試食会開催に続き、培養肉の生産期間短縮を発表

オランダの培養肉企業Meatableは、低コストでスケール可能な独自の分化プロセ…

テックマジック、炒め調理ロボット「I-Robo2」を駅構内に初導入|一風堂 神田店に設置

2024年のフードテックweekで展示されたI-Robo2 Foovo佐藤撮影…

イスラエルのImagindairy、アニマルフリーな精密発酵乳タンパク質に対し米国FDAのGRAS認証を取得

イスラエルの精密発酵企業Imagindairyが、精密発酵による乳タンパク質につ…

漁業者と消費者をダイレクトにつなげるE-Fish、48時間以内に新鮮魚を宅配

アメリカで漁師と消費者をダイレクトにつなげる新しいサービスがある。獲れた…

Umami Bioworks、韓国に培養シーフード工場設置へ―2社との戦略的提携を発表

シンガポールの培養シーフード企業Umami Bioworksは今月、韓国に培養シ…

パーフェクトデイが約390億円を調達、今秋にアニマルフリーなクリームチーズを発売

アニマルフリーな乳製品を開発する米パーフェクトデイがシリーズDラウンドで3億50…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

細胞性食品(細胞培養食品)レポート・予約注文開始

最新記事

精密発酵・定期動向レポート発売のお知らせ

代替カカオレポート・好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

会員サービスFoovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP