牛と同じ乳タンパク質を製造するイスラエルのImagindairyは先月、シードラウンドで1300万ドル(約14億円)を調達した。
このラウンドはイスラエルのシードステージ企業に出資するMoreVCが主導、Strauss Group、Entrée Capital、S2G Ventures、Collaborative Fund、New Climate Ventures、Green Circle Foodtech Ventures、Emerald Technology Ventures、起業家のPierre Besnainou氏が参加した。
Imagindairyは調達した資金で、施設の拡大、専門家チームの拡充、研究開発能力の強化を図る。
Imagindairyは乳製品の生産プロセスから「牛を取り除く」ため、精密発酵という新しい技術を使用、「本物と見分けがつかない真の乳タンパク質」を開発している。牛乳の重要な乳成分、ホエイとカゼインの開発を手掛ける。
共同創業者兼CSOのテルアビブ大学教授Tamir Tuller氏による15年間の研究をベースにした独自技術により、「(乳業)メーカーは、牛乳に含まれるすべての栄養価を備えた、牛フリーで持続可能な牛乳と乳製品を提供することが可能となる」という。
精密発酵のプロセスはビールの醸造に似ている。異なるのは、微生物はアルコールの代わりに、乳タンパク質を作るよう「プログラム」されていることだ。指令を与えられた微生物が「ミニ工場」となり、牛に頼らずに生産施設で乳タンパク質を製造する。
つまり、牛ではなく微生物に餌を与えて乳タンパク質を製造するイメージとなる。
Imagindairyが厳選した微生物による乳タンパク質の生産は、牛が飼料を食品に変換するよりも最大20倍効率的で、「フードシステムを回復させ、完全な持続可能性を可能とするもので、乳牛から発生する温室効果ガスを除去する」。
同社は現在、社名は明かしていないが、大手乳業メーカー数社と協業している。
本ラウンドを主導したMoreVCの共同創業者GlenSchwaber氏は、「Imagindairyの革新的な技術により、乳業メーカーは動物を使うことなく、二酸化炭素排出量を大幅に削減して、新製品の開発や既存製品の再開発ができるようになります」と述べている。
発酵タンパク質は、植物ベース、細胞培養に次ぐ代替タンパク質の第3の柱として注目される。昨今、発酵タンパク質でも特に、精密発酵に集まる投資が加熱している。
今年、精密発酵により乳製品を開発するドイツのFormo、アメリカ・オーストラリアを拠点とするChange Foods、アメリカのNew Culture、パーフェクトデイなど、いずれも資金調達を実施した。
なかでも、精密発酵の代表格パーフェクトデイのシリーズDでの約390億円、FormoのシリーズAでの約55億円の調達は、この技術に対する需要と関心の高さを表している。
最近ではアメリカのスターバックスが一部店舗でパーフェクトデイの精密発酵ミルクを導入し、大手による導入も進む。南アフリカでも精密発酵プレーヤーが登場し、資金調達を実施した。
Imagindairyを含む多くの企業は開発フェーズにあるが、パーフェクトデイに続き、クララフーズから社名変更したThe Every Companyが精密発酵による卵白タンパク質粉末を市販化するなど、開発から市販化へ移行する事例も確認されている。
参考記事
Imagindairy Closes USD13M Seed Round to Advance Animal-Free Dairy
Israel’s Imagindairy closes $13m seed round to commercialize cow-free milk proteins
関連記事
アイキャッチ画像の出典:Imagindairy