精密発酵により卵白タンパク質を開発するフィンランド企業Onego Bioはシードラウンドで1000万ユーロ(約12億円)を調達した。
イギリスのベンチャーキャピタルAgronomics、フィンランドのベンチャーキャピタルMaki.vcが参加した。これはOnego Bioにとって初の資金調達となる。
同社はトリコデルマ・リーセイという糸状菌を活用し、世界で最も使用される動物タンパク質である卵に関連する環境問題の解決を目指している。
鶏を使わずに同等な卵白タンパク質を開発するOnego Bio
Onego Bioはフィンランド技術研究センター(VTT)のスピンオフベンチャーとして2022年に設立された。創業間もないスタートアップだが、共同創業者のChristopher Landowski氏、Jussi Joensuu氏はVTTで長年にわたり、卵白タンパク質の開発に従事してきた。
Landowski氏はVTTが先日Naturefoodに発表した論文の共著者でもある。
残る1名の共同創業者兼CEOであるMaija Itkonen氏はOnego Bio発足にあたりメンバーに加わった。
オーツ麦由来の植物肉企業Gold&Greenの創業者であるItkonen氏は、6年前の植物肉と、現在の細胞農業には共通点があると考える。
現在、国内外とりわけ海外では、食料品店に植物肉製品が陳列されることは珍しくない。しかし、同氏がGold&Greenを立ち上げた6年前はそうではなかった。現在の細胞農業についても、「本物の商品が市場に出るのを待つだけ」の状態だと見る。
Gold&Greenのオーツ麦由来肉は15ヵ国で販売されている。植物肉が市民権を得た今、「新しいことを始める時期が来た」と考えた同氏は、Onego Bioの立ち上げに加わった。
精密発酵:ヒトインスリンから卵白タンパク質まで
ゲル化、発泡、結合、乳化などの独自の機能性を備える卵白は、代替成分で置き換えるのが非常に困難とされる。
そこで近年、急速に利用が拡大しているのが精密発酵だ。
精密発酵はビールの醸造に似ている。糖を取り込んだ微生物は発酵によりアルコールを生成する。精密発酵では、微生物には卵白タンパク質の「情報」がプログラムされている。「情報」を持った微生物に糖を与えると、アルコールではなく、卵白タンパク質が分泌される。
最終産物をろ過・精製することで、動物を使うことなく目的のタンパク質を入手できる。
このように微生物を「生産工場」として活用する手法を精密発酵という。精密発酵は1980年代にジェネンテック社がヒトインスリン全合成に成功したブレイクスルーから始まり、コスト削減とともに現在、食品の領域に浸透している。
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